FUKUSHIMAいのちの最前線
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398麻酔科とチーム医療上記マニュアル(図2)に従って地震直後,手術部内へ“ただちに無影灯を術野の上から移動してください”という一斉放送が行われ,各手術室内では地震直後より手術を中断し,無影灯が術野から外されていた。また,天井から多くの塵やほこりが落下してきたが,術野や器械台にドレープをかけるなどの措置が行われていた。 著者は手術部に移動後,上記幹部,麻酔科医,そのほかの医師,看護師,臨床工学技士(clinical engineer:CE)の役割分担について協議した。著者は手術部から全権を委任され,麻酔科医は,患者の管理に集中させ,そのほかの医師にはそのサポートを,看護師には移動の際の薬物とストレッチャー,バッグバルブマスクの準備を,CEには医療ガスの供給状態,電気系統,麻酔器をはじめそのほかの器械の状態などをチェックさせた。2名のCEたちには,病院のチーフCEからも同様の指示が出されていた。その結果,電気系統に問題はなく,また医療Ⅰ.火災対策1.発生予防が重要であり,次に火災が発生した場合は初期消火に全力をあげる。2.時間は充分あるので,必要な場合は落ち着いて避難を行う。3.避難経路を確認し,定期的に避難訓練を行い,避難経路には移動の妨げとなるものを置かないようにしなければならない。《中略》Ⅱ.停電対策1.開始していない手術は全て中止し,手術中の場合は最短で閉創できるよう手術を中止または終了する。2.重要な手術補助機器は常に瞬時特別非常電源(無停電電源)に接続しなければならない。3.停電時は人工呼吸器を手動に変更することが望ましい。4.空調が停止し空気清浄度が低下するためドアを開放しない。《中略》Ⅲ.断水対策1.緊急性の低い手術は中止するのが望ましい。2.使用後の手術器械は酵素洗剤に漬け置きする。3.やむを得ず手術を行う場合,手洗いはアルコール製剤の擦り込みを遵守する。4.自家発電装置が使用できなくなる場合があるので注意が必要である。《以下,略》Ⅳ.手術室における地震対策1.落下物,倒壊物による外傷を回避し,また職員や患者の転倒,転落によるリスクを軽減して,人の安全を守る。2.手術操作は中断しなければならないが,緊急の避難はしないことが望ましい。3.開始されていない手術は全て中止する。(解説)地震については広域災害の項を参考にされたい。しかし,当該病院職員や患者にも大きな被害が出るため,その防災について記載する。ちなみに阪神淡路大震災,新潟県中越地震,新潟県中越沖地震の発生曜日,時間はそれぞれ火曜日午前5時46分,土曜日午後5時56分,祝日月曜日午前10時13分であり,それぞれのマグニチュード,震度はM7.3,震度7,M6.8,震度7,M6.8,震度6強であった。いずれもほとんど手術は行われておらず,近代では日本で手術中に大規模な地震が発生した経験は無いことになる。《中略》大きな余震が来ることが多いため,手術操作は中断する。手術棟の多くは耐震構造であり,手術室では火災も起きにくいので,あわてて閉創し手術を中止する必要はない。直後の余震がおさまった後,落ち着いて閉創可能な状態まで手術を行い、速やかに終了する。当然であるが開始されていない手術は中止すべきである。図1 当院の手術部災害対策マニュアル図2 手術室における地震対策図3 福島県の震度

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