FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線379者は約1,300名あり、搬送中継トリアージ対象者は175名、うち本院への入院は125名でした。 原発からの放射性物質飛散により、約500名の放射線サーベイを行いました。本院は原子力災害第二次緊急医療専門施設であり、除染施設や体内被ばく線量等の検査設備を有しています。REMAT(Radi-ation Emergency Medical Assistance Team)など多数の放射線専門家が応援に来られました。患者搬送には行政、自衛隊、消防、警察などとの連携が大切です。 避難民医療支援として、エコノミークラス症候群、小児・感染制御・耳鼻咽喉科・眼科、心のケア、避難所保健指導、在宅患者の訪問診療など、各チームに分かれて小型バスやバンを借り、県内の避難所を巡回しました。全国からはJMAT(Japan Medical Association Team)が避難所に来ていました。5月にはヨルダン・ハシミテ王国やタイ王国から海外医療支援団を受け入れました。耳鼻咽喉科医としては、咽喉頭炎、アレルギー性鼻炎、鼻出血、耳垢などの疾患が多く、乾燥している施設では加湿器が喜ばれました。カルテをどうするか、災害救助法に基づく医療とするか、処方の手続きはどうするか、などの事務的な問題が突然出てきますし、医師会や薬剤師会との調整が必要です。 放射線被ばく対応として、原発やその局辺で働く人や住民の万が一の被ばくに備えて、救急医療のシミュレーションを行っています。福島県では放射線の影響による不安の解消や将来にわたる県民の健康管理を目的とした「県民健康管理調査」を実施しています。本学に放射線医学県民健康管理センターを設置し、平成23年3月11日から7月1日までの間、福島県内に居住した人を対象に基本調査を行い、問診票に3月11日以降の行動記録を書いてもらい、被ばく線量を推計し結果を知らせるものです。また、18歳までの県民36万人を対象に甲状腺超音波検査を開始しています。耳鼻咽喉科・頭頸部外科から超音波検査に派遣していますし、全国の関連学会から医師や技師が来られています。 地震の瞬間から今日までを体験し、生きていくこと、ライフラインや基盤インフラの大切さ、普段当たり前にあるものが当たり前でないこと、初動の重要性、前線基地で戦う教室員や職員の士気の高さ、でも気持ちの維持の難しさ、友人の温かい支援、マスコミ情報の氾濫と風評被害、原発情報の公開と隠蔽、科学の強さと弱さ、被災地の悲惨さと非被災地の別世界を体感しました。現場に即応した活動をすることで、復興が一歩一歩近づいてくるものと考えています。 福島市は第1原発から60㎞離れており、空間放射線量は低下しており原発事故は収束の方向のようです。福島県の避難地域以外では通常の生活をしており、数日でも住むと事情がおわかりになると思います。本年の1月には日耳鼻の関連学会である第22回日本頭頸部外科学会を、通常通り福島市で開催することができました。全国の皆様からの数多くの温かいご支援に感謝いたします。5.避難住民への医療支援7.おわりに6.放射線災害医療と 健康リスク管理福島県立医科大学震災特設ページ http://www.fmu.ac.jp/福島医大のアメリカ人医師からの発信 http://cbbstoday.org/nollet_fukushima.php

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