FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線359第18回救急整形外傷シンポジウム* 抄録集掲載福島県立医科大学 整形外科小平 俊介 Shunsuke Kodaira、川上 亮一、江尻 荘一、紺野 愼一Compartment syndrome in the forearm and leg in child on The Great East Japan Earthquake.Case Report東日本大震災にて受傷した小児の上下肢のコンパートメント症候群−1例報告−【症例】7歳の男児である。主訴は左前腕部と左下腿部の激痛であった。東日本大震災時に、崩壊したブロック塀に挟まれて受傷した。受傷後2日で、近医にて、左前腕と左足の筋膜切開と皮下の減張切開が行われた。しかし、疼痛と腫脹は軽減せず、追加治療目的に受傷後4日目、当院紹介受診となった。当院初診時、左前腕と左下腿は著しく腫脹しており、激痛を伴っていた。単純X線写真上、橈骨遠位骨折を認めたが、下腿には骨傷なかった。コンパートメント内圧は前腕屈筋群で23mmHg、伸筋群で44mmHg、下腿前方区画で66mmHgであった。搬送当日、全身麻酔下に左前腕の筋膜の追加切開と左下腿4区画の筋膜切開を行った。手術後、疼痛は軽減した。受傷後17日目で、左下腿の筋膜切開部を一時閉鎖することができた。しかし、前腕部は、腫脹が残存し、閉鎖不能であったため、受傷後17日目、遊離鼠径皮弁で、前腕部の開放創を被覆した。皮弁移植後1日で、動脈血栓を生じ、血栓除去を行った。受傷後1カ月で、前腕に分層植皮を行った。受傷後35日目で、すべての創傷は治癒した。受傷後6カ月の時点では、手指の可動域制限が残存しているため、腱剥離の追加手術を検討している。【考察】コンパートメント症候群は、発症後8時間で筋肉組織の阻血性拘縮を生じるため、早期の治療介入が必要といわれている。我々は、前腕の腫脹が顕著な症例を経験した。これは、治療介入の遅れと不十分な筋膜切開が原因であると考えられた。遊離皮弁で、血栓形成が生じたのは、前腕屈筋群の腫脹が残存している部位での血管縫合が原因と考えられる。血栓形成を避けるためには、筋の腫脹部位より近位で血管を縫合する必要がある。*2012年3月2日(金)・3月3日(土)ホテル・ニッコー・グアム主催『救急整形外傷シンポジウム』世話人会

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