FUKUSHIMAいのちの最前線
323/608

第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線317平成23年3月28日〜4月28日は身体化しやすいので身体的な問題を聞きながら、精神的ストレスを聞いていく対応を常とした。また、避難所に入っていくときには、血圧計などを持って行くこととした。身体的な状況等を尋ねながら、精神医療というよりむしろ医療全般の相談として聞いていくことに心がけた。4)被災住民の状態は時間の経過に伴って刻々と変わるので、時期や住民の状態に応じて支援のあり方を変えながら行うことが勧められている。災害直後の感情麻痺あるいは高揚期間が終わりつつあり、次第に身体的不調、不安、疲労や避難所生活、家屋の喪失等からくる抑うつなどが問題となってきている。この状態の変化を予測し、把握しながら対応していく必要があると思われる。PTSDは現段階ではまだ中心的なこころの問題ではないが、精神的不調の悪化を防ぐことや急性ストレス障害の人に対応することで予防的に対応できると考えられる。今後、いわき市においては、移動相談室のような心理面を中心とした時間をかけた心のケアを、臨床心理士を中心に行っていきたい。�(文責 心のケアチーム 矢部博興)現 状 この地域における心のケアチームの活動は、3月29日(火)に始まった。 この地区の当初の要請は二つであった。1.相馬市長より要請を受けた公立相馬総合病院における精神科外来診療の開始 相双地区では、避難指示あるいは屋内退避指示が出された地域にある双葉厚生病院精神科、雲雀ヶ丘病院、小高赤坂病院などが閉鎖されたため、そこに入院していた患者さんは県内外の病院に移送されたが、外来の患者さんは通院する病院がなくなってしまった。相馬地区における精神科外来患者さんの数は400名前後と、相馬市保健センター所長が試算している。これらに対応すべく、公立相馬病院に、臨時のクリニックを開設し、地元の保健師、福島県立医大看護学部の看護チームがローテートしながら常駐し、福島県立医大心身医療科医師に加えて、大阪府立医科大学精神科、獨協医科大学精神科、理化学研究所、熊本県桜ヶ丘病院精神科、東京伊藤メンタルクリニック、立川パークサイドクリニック、茨城心の医療センター、神奈川県の福井記念病院、奈良県立医科大学精神科、都立松沢病院、群馬大学精神科、郡山女子大学心理学科、山口県の扶老会病院精神科、県立友部病院精神科、名古屋工業大学、愛知県森クリニックなどの応援により、外来患者の診療を行っている。公立相馬総合病院における日々の外来患者数は15~20人程度である。不眠、抑うつ、ストレス反応、統合失調症増悪の他、避難所生活での被虐待児の問題の顕在化、アルコールの問題などが認められる。2.各避難所における巡回診療・相談 避難所は、相馬市に8か所、新地町に5か所、南相馬市に5か所が存在する。巡回は3~6箇所/日の避難所を巡っている。相馬市においては、全戸訪問の保健師さんからの要請があって、問題の患者さん(例えば幻覚妄想の患者さんの興奮)などに訪問して、緊急入院などに対応している。これまでに数例の患者さんを福島市内、郡山市内の精神病院に紹介入院させている。次第に、緊急入院の要請は確かに増えてきているが、現時点では適切に対応できている。1.緊急時避難準備区域を含む相双地区における医療ニーズ 閉鎖された双葉厚生病院精神科、双葉病院、雲雀ヶ丘病院、小高赤坂病院などの病院への通院患者を中心とする患者さんへの医療の提供は不可欠である。 しかし、国が安全宣言を出さない限り、これらの病院が再開される可能性は低い。 当面の医療支援の窓口は、福島医大が担当しているが、いずれ地域が主体となってNPO法人などによる医療施設及びシステムを立ち上げることが望まれる。2.相双地区における医療の構築 これを機会に、国が現在導入を推進している「精神障害者アウトリーチ推進事業」を相双地区の診相双(相馬・双葉)地区の現状と対策2011年4月27日今後の問題とその対応

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です