FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線311福島県の医科系大学のトップとして 本県における今回の地震,津波,そして原発事故の発生は,わが国には壊滅的な災害に対する体制の整備が不十分であるということを明らかにした。第2に,原発を国のエネルギー政策の根幹にしているにしては,“放射線”に対する医療人を含めた国民の教育が不十分である。第3に,原子力に携わる技術者や科学者が少なく,高齢化しているのではないかという印象を持った。第4に,有事での指揮命令系統に混乱がみられたことである。第5に「安心」と「安全」の峻別が混乱していて,討論の妨げになった。第6に,窓口の一本化と情報の共有化の重要性である。第7に,情報発信の重要性である。第8に,避難者に対する環境整備の不備である。最後に,有事では組織内で外からの情報が時に消えてしまうことがあるという事実である。表4 大震災に伴う原発事故からの教訓Ⅴ.大震災と原発事故からの 教訓(表4)●わが国には有事(破滅的な出来事)に対する体制整備が不備縦割り行政,目先のリスク回避⇨福島モデルを作成して提言●原発を国のエネルギー政策の根幹にしているにしては“放射線”に対する国民・医療人の教育不足⇨教育カリキュラムの見直し(義務教育,高等教育)⇨サイエンスライター/トランスレーター⇨リスクコミュニケーター の養成の必要性●原子力に携わる技術者,科学者の高齢化⇨若手技術者,研究者の養成が必要●指揮命令系統の混乱⇨リーダーシップの発揮を リーダーシップを担保するのはトップの“責任”◦衆議独裁の徹底が必要 “俺は聞いていない”の排除 「地獄への道は善意の石畳で舗装されている(カール マルクス)」は真実!◦優先順位の決定 限られた人,時間で,一時にできることは限られている◦「拙速」が大切◦様々な処理・判断すべき案件が殺到 ⇨細かいことに拘泥するな! 「大事争うべし,些事構うべからず」●「安心」と「安全」の峻別が混乱「安心」は心の問題,「安全」はコストの問題100%安全が保証されている安心な世界は存在しない●「窓口の一本化」と「情報の共有化」情報は玉石混淆⇨評価する人・場が必要 ⇩これを確立しないと現場は混乱・崩壊●「情報の発信」の重要性スタッフや国民・住民の安心を獲得●避難者の環境整備―心身の健康維持への配慮が現状では不十分 “身体を動かすこと”が最も重要●組織内で外からの情報が消えてしまう担当者がどうして良いかわからず,処理せずに放置していることがある

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