FUKUSHIMAいのちの最前線
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308東日本大震災を考える会議を通じて「支援する側(本人,家族)の安全確保が活動の前提である」,「情報の共有化が組織としての決定や行動に死活的に重要である」というトップの意志を全職員の行動に反映することができた。 2)本学の患者受け入れと搬送業務 避難地域の医療機関からの患者の受け入れと医療対応は,3月12日から始まった(図3)。その内容は原発事故対応と超急性期での災害医療対策,そして急性期の退避患者対応に大別された。附属病院の2つの病棟を空床にして,あらゆる共有スペースに収容できる病床を確保した。トリアージ後,当院の入院患者として173名を受け入れた(図4)。 受け入れ先の見つからない患者を,一旦拠点となる医療機関に受け入れて,トリアージ後に他の医療機関や介護施設に転送するという“配電盤”システムは,今後の災害対策として有効であると断言できる。 3)風評対策 原発事故発生後直ちに,大学,県,そして県民に対するリスクコミュニケーションを目的として,長崎大学(二次被曝医療機関)と広島大学(三次被曝医療機関)の各学長に依頼して専門家の派遣を要請した。“正しく怖がれ”をキーワードに大学教職員,県幹部,拠点病院,そして住民へ積極的な啓発活動を行った。この活動が安心を与え,動揺を鎮めるのに役に立った。 学務関係の風評被害として,入学辞退者の問題が発生した。辞退者が多数いたため,緊急記者会見を行って福島の現状を説明した。 事故発生後6ヵ月の時点で,日本財団の主催で国際専門家会議(『放射線と健康リスク―世界の英知を結集して福島を考える』)を本学で開催した。この会議は,世界14カ国・2国際医療機関の放射線医学や放射線防護学の専門家が初めて一堂に会した国際会議であった。会議後の声明発表と長時間(質問がなくなるまで)の記者会見により,マスメディアの理解度は増したと判断している。 4)関係機関との連携 a)県と本学の連携 自衛隊とは異なり,大学は自己完結組織となっていない。そのため,まず行政の中核である県との連携は欠かせない。そこで,本学と県が表裏一体となる組織を震災発生後,直ちに構築した(図5)。県内諸団体との連携体制も構築されていなかったので,文科省の提言により福島県医療支援体制を創設した(図6)。 さらに,急性期はもとより中・長期的な対応策の充実が必要と考え,広島,長崎両大学と大学連携協定を結んだ。これに加えて,全国に存在する放射線影響研究機関6施設(放射線医学総合研究所,広島大,長崎大,京都大,放射線影響研究所,環境科学技術研究所)に本学を加えて,県知事の主催で福島原子力災害医療対策キックオフ・ミーティング協議会を開催した。これらの大学や施設には,次に述べ震災発生1週間~2週間~退避患者対応急性期避難民対応慢性期いわき相双地区5病院患者搬送対象者 約2,000名搬送中継トリアージ対象者 175名(重症患者 125名は入院加療)広域医療緊急支援1.高度医療緊急支援チーム2.地域・家庭医療チーム外来,定期手術休止全面救急重症対応震災患者受入 約1,000名災害医療対応超急性期高度被曝者11名除染、3名入院被災者放射線サーベイ約500名原発事故対応図3 本学の活動図2 全学全職員による緊急集会

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