FUKUSHIMAいのちの最前線
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特別インタビューFUKUSHIMA いのちの最前線281悲劇から奇跡へに災害医療の教育・研究に関する人材を長期的に確保する教育システムの構築があります。ここで甲状腺内分泌学や災害時のこころの医学などの講座を新設します。また、医療関連産業を活性化させ雇用の創出を図ることも考えています。雇用の確保は福島の人口維持、人材の集積にもつながります。震災が露呈した超高齢化社会への課題──今日お話を伺い福島医大の先生方への見方が完全に変わりました。また、個人としての意識、将来への意識も変わりました。菊地 これからの福島県は、超高齢化へ向けたビジョンを持たなければなりません。これまでの社会の仕組みの中で医療サービスを受けるには、患者からのアクセスありきでした。しかし、これからは行政・介護サービス側から高齢者に対してアプローチしていく、サービスを提供していく流れになるでしょう。この度の震災が今の社会構造にほころびが出てきていることを露呈したのです。ベクトルが完全に変わっています。多くの震災の被災者は生活自体を失ってしまいました。このため被災者に対しては高齢者のケースと同じように行政側からアプローチし、サービスを提供する流れが必要になるでしょう。このような“福島モデル”を作るべきです。5年後、10年後の東京、日本のモデルに繋がっていくという、福島県にとって歴史的に大きな、挑戦的な仕事になりますが、やり切らないといけません。今、まさに世界から“FUKUSHIMA”が注視されています。どのような困難にぶつかろうとも震災・原発事故との闘いに勝つことを信じて前に進んで行きましょう。インタビューを終えて 高田 優美 福島に未来を感じました。菊地理事長をはじめとする医大チームが一丸となり前進していることが分かり、頼もしくも思えました。健康調査などの対応の遅れを感じていましたが、それは福島の原発事故は国にとっては想定外だったために、医療や健康管理体制の機関や人材が整っていない現実があること、現在行っている子供の健康調査では、少ない専門医の中、丹念に診察しており、医大職員は昼夜を問わずフル稼働している状況であるなど、全力で取り組んでいることが分かり、自分の中にあった疑問が払拭されました。 そればかりでなく、医大が放射線や医療体制の世界の先端となる新しい「福島モデル」を世界に発信していく使命を持ち、実際に動き始めていることに、福島で生きる誇りを感じ、県民の一人として、理事長の言葉どおり「福島の悲劇を奇跡に」変えるよう、一緒に立ち上がりたいと思いました。

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