FUKUSHIMAいのちの最前線
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第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線259珍しくなかった。 緊急被ばく医療体制の基礎づくりは,学外専門家による指導の下に行われた。熊谷敦史先生(長崎大学),神裕先生(日本原燃株式会社),谷川攻一先生(広島大学)からは短期間に多くをご指導いただいた。和歌山県立医科大学救命救急センターの皆さまには苦しい時期を支えていただいた。除染機能拡充のため,陸上自衛隊中央即応集団中央特殊武器防護隊(第103特殊武器防護隊)とは家族のように生活を共にし,独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)からも除染および放射線防護と汚染拡大防止(図3)に際して格別のご指導ご支援をいただいた。4月までの当院緊急被ばく医療班の診療記録は図1下に示す。多職種ミーティング 毎朝10時から学内外各部署間の意見交換・意志共有を行った。そこで提供される最新情報とその解析結果は,情報災害とまで評された混乱の中にあっても,スタッフの不安を軽減し,結束を固めた。現在の福島の放射線環境情報については他書2)を参照されたい。Web会議 原子力災害医療拠点を多施設同時通話システムを用いて結ぶweb会議に積極的に参加した。会議は当初,広島大学が所有するネットワークシステムの提供を受けて開始されたが,その後は東京電力が契約した回線を用いて開催されている。当院では会議の司会を担当する中で,災害現場への安心感の提供,迅速な問題点の抽出・解決とともに,文字通り顔の見える関係づくりを図った。Web会議は最新情報源であるとともに,全体の中での当院の役割認識に大きく寄与した。2011年11月現在も毎日15時から開催されており,事故発災時は臨時で招集・開催される。今後の災害医療における必須ツールであると考えられる。被ばく患者診療手順の作成(図4) 発災後1週間で作成した。日常診療とのすり合わせを図るために,JATECTM診療手順に被ばく医療特有の「汚染検査」「除染」「被ばく線量の評価]項目を加え,院内設備と医療者の放射線防護策と汚染拡大防止策を図った。緊急被ばく医療シミュレーションと勉強会 おのおの異なる重症度・緊急度の被ばく・汚染傷病者を想定したシミュレーションを,10月までに計6回行った。また,当日ビデオ撮影した内容を基に,シミュレーションの翌週にはビデオ反省会を行っている。運営や反省会では主に学内外の看護師が司会を務め,医師,看護師,放射線技師,病院事務や医療事務,自衛隊,原発サイト内の医療機関も参加する。 多業種向け勉強会は,多職種ミーティングの際に,および月~水曜日の夕方(2011年7月まで)に行わ図3 緊急被ばく医療の実際緊急被ばく医療棟周辺の除染設備と実際の被ばく患者診療を示す。院外除染設備は9月以降は撤収し,有事再設営となった。矢印は赤>黄>緑の順に患者重症度・緊急度と対応する。自衛隊の患者洗浄用テントとJAEAの身体洗浄車が除染時に活躍した。

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