FUKUSHIMAいのちの最前線
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第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線257Emergency Care 2012 vol.25 no.1福島原発事故における福島医大病院緊急被ばく医療班の対応福島県立医科大学附属病院救急科助教 長谷川 有史はじめに 福島県唯一の二次被ばく医療機関である福島県立医科大学附属病院の職員にとって,東日本大震災に引き続いて発生した原子力災害に対する緊急被ばく医療は,図らずも真のチーム医療とは何かを考える機会となった。顔見知りのスタッフと無意識のうちにあうんの呼吸で行う日常診療と異なり,災害医療では初対面かつ多職種・多業種のメンバーと意識的に協力し合い,確実に結果を出す医療が必要とされる。今回の原発事故における緊急被ばく医療体制構築のキーワードは「コミュニケーション(communi­cation)」と「エデュケーション(education)」であった。震災前の被ばく医療体制コミュニケーションの欠如 震災前は,良い意味でも悪い意味でも原子力事業所との交流は一切なかった。先見の明を有した諸先輩の中には,原子力災害の可能性や原発の安全管理体制に危惧の念を抱き,そのことを事業所に提言する方もいらっしゃったが,「安全神話」に裏打ちされた事業所の説明により一蹴されていたとうかがった。一方で,緊急被ばく医療ネットワークを構成する病院間,統括する自治体(県市町村)間での被ばく医療に関する交流は皆無だった。エデュケーションの欠如 福島県は,福島第一・第二原発合わせて10基の原子炉を海岸線沿いに有する,全国屈指の原発立地県図1 当院における緊急被ばく医療班の活動

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