FUKUSHIMAいのちの最前線
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第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線249福島医大,福島医大整形外科の活動と福島県の現状 震災発生当時,医学部5年生はbed side learn­ing(BSL)を,4年生は基礎上級(基礎系の講座に配属され,それぞれのテーマについて研究する)の授業中であった.地震発生後,食事と宿泊場所を提供するのでボランティアとして学生の力を借りたいという申し出が大学病院のほうからあり,有志の学生がボランティアとして参加してくれた.12日からは,学生ボランティアは災害対策本部直属となり,筆者が担当することになった.ボランティアの作業内容は,検体搬送や薬剤受け取り,患者やDMATなどの案内など,学生の言葉を借りれば,“すきまをうめる仕事”,“持ち場のあるスタッフが対応できない仕事を行う”であった. 彼らのパワーが最大限に生かされたのは,3月14日から15日未明にかけて,福島第一原発20㎞圏内から自衛隊のヘリ,あるいは警察バスで一度に大量の患者が搬送されてきたときである.かなりの患者が一度に搬送されてくるとの事前連絡はあったが,いつ来るのか,本当に来るのかが全くわからないところに,突然搬送されてきた.救急科医師の指導のもと,学生たちは患者の病院内への搬送と院内の移送の主力として活躍してくれた. 学内だけでなく,学外でボランティア活動をしていた学生も多い.表2は,福島医大学生に対するボランティア活動の参加がどのくらいであったかの調査結果である.かなりの学生が,それぞれの立場でボランティア活動に参加していたことがわかる.福島医大学生の様々なボランティア活動について.すでに滋賀大学,香川大学,公立大学協会,国際医学部生連盟(IFMSA)九州地区などで報告を行い,全国の学生とわれわれの経験を共有できるよう努力している.福島医大学生のボランティア活動とボランティア活動を通じて何を感じたかについては,参考資料を参考にされたい(参考文献・資料1,2,3,10). 福島医大救急科が中心となり,福島市に直下型地震が生じたという前提で,2010年9月25日に,災害時の医療対応を学ぶ訓練を消防,自衛隊,DMATなどと行っていた.多数の患者が大学病院に搬送されてきたというシナリオのもとに,トリアージをどこでするか,DMATの本部をどこに設置するか,自衛隊や消防との連携をどのようにして患者を移送するかなどのシミュレーションを行っていたので,今回の震災において,当院の初動は比較的速やかに大きなトラブルなくできた.平時より,災害発生可能性に備えて訓練するという重要性を痛感させられた. 今回は,患者の移送において,学生ボランティアが大活躍してくれたのは先に述べたとおりである.実際に学生ボランティアが患者を移送するときに問題となったのは,患者を車いすからベッド,床から学生ボランティア災害教育の重要性表2 福島医大医学部生ボランティア参加者数震災発生時、学生であった2年生から6年生は、何らかの形でボランティアに参加している学生が多かった(2011年5月調査)。図2 手術を要する放射線被ばく患者への対応a:被ばく者対応用の手術室:すべての機器が放射線物質に汚染されないように、ビニール袋でコーティングされている。b:手術室での訓練(整形外科):実際の手術をシミュレーションすることで、二次被ばくを避けるにはどうしたらよいか、1つひとつの手順を検証している。1年2年3年4年5年6年アンケート回答者数917260447519ボランティア活動者数(%)9(9.8)23(32)26(43)17(39)40(53)18(98)平均活動回数4.1(1~30)3.1(1~15)4.4(1~14)5.1(1~14)4.5(1~15)4.6(1~20)

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