FUKUSHIMAいのちの最前線
221/608

第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線215め,これらのニーズに対応可能な専門チームを編成した「エコノミークラス症候群医療チーム」は深部静脈血栓症と引き続く肺血栓・塞栓症などへの対応を行った。小型超音波装置を持参し,各避難所を巡回し早期発見・早期治療を行うとともに,予防のための啓蒙活動を行った。5月11日の活動終了までに2,200名の検査を実施し,約10%に血栓を発見した。このチームには4月25日よりヨルダン王国医療チーム(医師2名,看護師兼技師2名)が合流した。「小児・感染症チーム」は,6月2日の活動終了までに延べ31ヵ所の避難所を巡回し,乳幼児の健康管理のアドバイスと,避難所での感染症蔓延予防のための啓蒙活動を行った。このチームには5月9日よりタイ王国医療チーム(医師2名,看護師2名)が合流した。「心のケアチーム」は日本全国からの応援も得て,全県の避難所を中心に「心のケア」のための活動を行った。また,「看護学部チーム」は,この震災でその重要性が明らかになった保健師活動の支援を主体とした活動を行った。2 原発から20~30㎞圈の医療支援 福島県ではほかの地域と異なり原発事故が加わったため,DMATを中心とする医療支援に大きな空白地域が残っていた。それは,緊急時避難準備区域に指定された福島第一原発から半径20~30㎞圏内である。放射線被曝の問題もあり,緊急医療支援はまったく届かない状況であった。このため,本学地域・家庭医療学講座,長崎大学,長崎県医師会,自衛隊衛生班,南相馬市立病院などにより3つのチームを編成,残存患者の把握とその支援にあたった。広域搬送終了後にもかかわらず,この地域には自力避難不能の在宅患者が150名も残っていることが判明し,これら患者の巡回医療支援活動を行った。この活動から,広域災害時には,医療はもとより,介護支援が非常に重要になるという教訓を得た。3 専門医療コンサルテーション 各避難所では,専門的医療や入院などの措置が必要となる患者が日々発生する。しかし,避難所は医療体制を考慮して設置されてはおらず,このような専門医療提供には大きな問題が残っていた。このため,本学では県内唯一の大学病院という特性を生かし「高度医療コンサルテーションチーム」を編成した。このチームは,脳血管障害・心疾患・呼吸器疾患・糖尿病・腎疾患などの専門医からなり,24時間体制で各避難所や地域中核病院からの電話相談を受け付けた。各専門領域の医療相談に加え,入院が必要な患者に関しては,近隣入院先病院の紹介と連絡,重症患者については大学付属病院での受け入れなどを行った。 福島県立医科大学には,1999年9月のJCO臨界事故発生を契機に,2001年3月,2次緊急被曝医療施設として「検査除染施設」が病院棟東側に,「無菌病室」4床がICUおよび病棟にそれぞれ整備されている。測定・分析機器としては,ホールボディーカウンター,高指向性モニター,体表面モニター,αγ線核種分析装置,β線核種分析装置,中性子モニター,ポータブルモニター,各線種用サーベイメータなどが整備されている。また,被曝患者の除染と救急医療のためには,熱傷浴装置,移動式簡易浴槽,震災発生1週間~2週間~退避患者対応急性期避難民対応慢性期いわき相双地区5病院患者搬送対象者 約1,300名搬送中継トリアージ対象者 175名(重症患者125名は入院加療)広域医療緊急支援①高度医療緊急支援チーム②地域・家庭医療チーム③専門医療コンサルテーション外来,定期手術休止全面救急重症対応震災患者受入 約1,000名災害医療対応超急性期高度被曝者12名除染、3名入院被災者放射線サーベイ約500名原発事故対応図4 福島県立医大・活動まとめ福島原発事故対応の医療(図5)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です