FUKUSHIMAいのちの最前線
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第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線211置と人員には限りがある。流通による拡散の防止には大きい単位での計画的な計測、自家消費品による内部被ばく低減には地域に密接した測定機会の多さが鍵になるだろう。 ただ残念ながら食品のサンプリングにも限界がある。放射能は微量の検出限界を目指すほど、大量の検査時間と試料を必要とする。より実効性のある指標を作らないと、結局汚染の強い食品を拡散してしまうことにもなりかねない。自家消費品については、汚染の実態がわからずに摂取を続ける可能性もある。 福島県では現在、内部被ばくを調べる装置「ホールボディカウンター」(WBC)の数が着々と揃いつつある。事故から10ヵ月余経過した今、WBCが生かされるのは「食品から追加の内部被ばくをしていないこと」の確認に他ならない。 とにかく一度、まずは測定する。有意な放射能量が検出されても、放射性セシウムの実効半減期に応じて二回目の測定で値が下がれば、「追加で放射性物質を摂取していない」ことの証明となる。今後、無秩序に内部被ばくを増加させないための、唯一無二のツールとなるだろう。 今後、内部被ばくをこれ以上増加させないこと。これこそが、食品と体内放射能を計測することの意義である。 これまでの話は、すべて「正しい計測」が前提である。核種の同定やベクレル量が正しくなければ、換算後のSv値もめちゃくちゃになる。WBCの場合は放射性物質の摂取モデルの正当性が重要となる。 「それほどデタラメな計測結果は出ないでしょう」とお思いの方。今でも、多くのトンデモ計測結果が出されていることをご存じですか?例えば、・食品からヨウ素131が誤検出される(自然界の放射能を誤検出:自力回避法は半減期を考慮し1週間後に同じ検体を測ること)・一部のWBCで、検出限界ぎりぎりのレンジで、放射能を「ある」、もしくはその逆の誤った結果を出す(過剰な体格補正、高いバックグラウンド、貧弱な解析ソフトのため)…など。 食品の誤検出は風評被害につながる。WBCの誤検出は、結果を知らされた個人に絶望を与えうる。地震から10ヵ月余が経った今こそ、放射能計測の誤りが、多くの人生を変えてしまうほどのインパクトを有していることを計測者は心せねばならない。 しかし、放射能は微量なほど測定が難しい。誤検出例は、「検出が難しいレンジの測定結果から、無理矢理ターゲット核種を数えているため」に起こるエラーが多い。汚染の全容が1桁高ければ、こうしたエラーは起こりにくい。 チェルノブイリは、25年経った現在も、こうした要因を無視できるほど高い放射能が食品、体内から検出される大きな事故だった。 福島の事故は、まだ1年も経過していない。「これから」が大事である。WBCの役割「内部被ばくを増加させないこと」「正しい計測」とは何か※例題の解答 セシウム137の預託実効線量への換算係数を0.013μSv/Bqとして、単純に掛け算をします。20000×500×0.013=130μSvが正解です。1000

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