FUKUSHIMAいのちの最前線
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210日本医事新報 №4578 2012.1.21「連載第3回 福島リポート」掲載福島県立医大被ばく医療班 宮崎 真*食品と体内の放射能測定とは?─「正しい計測」とその先にあるもの─ 政府は2011年12月16日に福島第一原発事故の「収束宣言」を出したが、現地では住民の不安を消し去るほど十分なコントロールがされていないように見える。それでも新たな一歩を踏み出そうとしている我々の前に立ちはだかるのは、「ベクレル:Bq」と「シーベルト:Sv」という、これまで一般の方が耳にしたことのない「単位の壁」だ。 福島県では今もニュースで「本日の空間線量率(単位はμSv/h)」が伝えられる。 一方、土壌や食品に含まれる放射性物質は、「1㎏(もしくは1L)当たりの放射能量(単位はBq/㎏もしくはBq/L)」で表される。一体どちらの単位をどのように参考にすればいいのか、一般の方には非常にわかりにくい。 答えは、自分の健康リスクを知る単位「Svを参考にする」である。 「Sv」は、外部被ばく、内部被ばくともに摂取経路や核種の種類を問わず、内部被ばくの場合は正しくBqからSvに換算されていれば、リスクを一括して考えることができる。一方「Bq」は、放射性物質の量を示す単位に過ぎない。しかし、多くの報道は「Bq」を単独で扱い、専門家の多くも、それを内部被ばくのリスク指標である「Sv」に換算して説明しようとしない。 例えば、食品中に放射性セシウムが含まれている場合、それを食べた人がどのくらいのリスクを負うのか?それを予測できるのが「換算係数」(核種1Bqごとの「預託実効線量」)だ。これは放射性物質の核種と摂取量で計算する。 例題:セシウム137が2万Bq/㎏合まれるキノコを500g食べた時の預託実効線量は何Sv?(全量が吸収されたとする) →解答は最後に。 なお、預託実効線量については「日本の環境放射能と放射線」HPの「預託実効線量とは(http://search.kankyo-hoshano.go.jp/food2/servlet/food2_jn)に詳しい。 換算係数のことはわかった。しかしそれだけでは足りない。食品に、どのくらいの放射性物質が含まれているのかがわからなければ預託実効線量に換算することができない。 現在、測定の多くを行政が行っており、その結果は日々厚労省HPや、まとめサイト(「食品の放射能検査データ」http://yasaikensa.cloudapp.net/)で公開されている。こうした情報を参考にすることで、食品への放射性物質移行の大まかな傾向については理解が進む。 しかし、米の例のように、少ないサンプリングには漏れが生じうる(米の場合は、適切な抽出法[=汚染に応じたサンプル抽出]がなされなかったことも大きな要因と考える)。逆に、牛肉のように全頭検査を行った場合には、その処理のために少ない計測機器リソースを大きく割くことにもなる。さらに現地では、流通に乗らず自家消費用の農産物をより多く摂取する可能性がある。 サンプリング数は多い方がいいが、測定機器の配*みやざき まこと 1994年福島県立医大卒。同大放射線健康管理学講座助手。 今回は福島に暮らす放射線科医で福島県立医大被ばく医療班の宮崎氏が今気になるテーマを掘り下げます。「単位」にどう向き合えばいいのか「リスク」を知るために食品を測る

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