FUKUSHIMAいのちの最前線
195/608

第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線189それぞれ多様な医療活動が必要になっている。 鈴木教授は「100ミリシーベルトの被ばくはがんを有意に増やす最低値」という定説を支持した。政府は、避難を指示する目安として年間20ミリシーベルトを設定し、収束時に設定される年間累積線量の1ミリシーベルトに徐々に下げるようにしている。この1ミリシーベルトが長期的な目標になる。鈴木教授は「平時の放射線防護が無理な状況で、バランスでリスクを考えたい」と強調した。原発事故では常に、実際の健康被害よりも、不安が増幅する風評被害が大きい。福島県は30年にわたって200万人の全県民の健康調査を実施する。その中で、子どもに対する甲状腺がん検診も組み入れる予定という。 鈴木教授は「超音波による標準的な甲状腺検診を普及させ、過剰な診療にならないよう注意する」と語った。座長を務めた学会長の清水一雄・日本医科大学教授(外科)も「検査をすれば、見つかる甲状腺がんが増えるだろう」と指摘し、鈴木教授も「現在の被ばく状況なら、放射線による甲状腺がんは増えないだろう。しかし、検査を徹底すれば、潜在していた甲状腺がんが見つかってくる」と応じた。講演の最後に鈴木教授は「福島県立医科大学には新たな歴史的な使命がある。安心して住める福島県を取り戻すことだ」と復興への揺るがぬ決意を示した。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です