FUKUSHIMAいのちの最前線
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177す。さらにチェルノブイリは内陸に位置し、いわゆるヨード欠乏地域であり、地方病性甲状腺腫の後発地域でした。本邦では周囲を海に囲まれ、日本国内ではどこでも海産物の摂取は可能となり、世界的にも高ヨード摂取地域とされています。甲状腺の検査で131Ⅰを投与して画像診断や治療を行うことがあります。日本人では投与前1−2週間の厳格にヨード制限を施行しないと、131Ⅰを投与しても甲状腺に取り込まないという事実があります。従って、通常、わかめのみそ汁や昆布ダシ、ひじきさらに魚等ヨード含有量の多い日本食を食している場合、放射性ヨードの甲状腺への取り込みはチェルノブイリに比して少なくなることが容易に予想されます。現在の注意事項 現在の空間線量では急性放射線障害は考えられません。また、殆どの県民には現在の微量慢性的な被ばくによって甲状腺がんが発症することは考えられません。しかし、県民の皆様の不安を解消するために、県と医大では県民健康管理の一環として、震災後3年目から震災時県内全域に居住していた小児(震災時0歳から15歳)に対し、甲状腺超音波検査を施行する予定です。 甲状腺がんは被ばく後すぐには発症しません。また、お家の方が頚部にしこりを気づいた時点でも治療は可能です。むしろ小児甲状腺がんを過度に心配し、無用な医療用放射線被ばく(CT・PET)を繰り返すことにより甲状腺がんの発症を誘発する可能性も少なくありません。甲状腺がんのスクリーニングには超音波検査が有用で第一選択となります。 小児に検診目的としてのCTやPET検査を先行することは勧められません。かえって医療用被ばくを助長してしまうこともあります。超音波検査で甲状腺内のしこりが発見された人の大半は良性腫瘍が予想されます。確定診断には穿刺吸引細胞診を行います。採血の注射をするのと同じ程度の侵襲で出来ます。まとめ 今回の原発事故による放射線の健康影響の問題として、甲状腺がんが話題にされていますが、上記のような実態を良く理解して冷静に対応してください。今後3年後の本格的甲状腺超音波検査実施にむけて、私ども甲状腺専門医と小児専門医が連携し、全国の学会にも発信し連携する予定で、オールジャパンで県民の皆様に対応する予定です。ご不明な点は、甲状腺専門家へのご相談を宜しくお願い申し上げます。①経緯◦東北地方太平洋沖地震及び福島第一原子力発電所の事故に伴い、住民が多数避難若しくは室内退避◦同様に双葉厚生病院、大野病院等の地域医療機関が閉鎖され、周辺医療機関の負担も急増◦周辺医療機関の負担軽減及び長期間の困難な生活を強いられている方々の安全と安心を確保するため、3月28日(月)から4月1日(金)までいわき市の避難所を中心に高度医療緊急支援チームが巡回診療を、福島第一原子力発電所から半径20〜30㎞の自主避難促進地域の在宅患者の状況調査を地域・家庭医療部がそれぞれ実施◦4月4日(月)から、これらの活動実績・現地ニーズを踏まえ、支援区域・チーム編成を全県に拡大②概要 第1章・54ページを参照。福島県立医科大学による災害後広域医療支援について企画財務課【参考資料】高度医療緊急支援に係る実績について(平成23年3月28日〜平成23年6月17日)支援実績(小児・感染、エコノミー対策、循環器疾患、こころのケアチーム)地 区県 北県 中県 南会 津南会津相 双いわき計カルテ数7667956826506931,3763,963

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