FUKUSHIMAいのちの最前線
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160 3月11日、ほぼ満月でした。一年前はどうだったのでしょうか。 春の日差しが、嶺々の残雪を銀しろがねに輝かせています。白と黒の対照、雨に打たれて、より鋭角的になっています。庭の溶け残った雪も急ぎ足で退却しています。早朝の川面には鴨が羽を休め、周りに静寂が漂っています。 車窓から入ってくる日差しは強いのですが、大気の揺らめきはまだ感じられません。本格的な春は足踏みです。 夕暮れ、遠目に雲の陰にある気弱げな夕陽が、薄い鈍にび色いろに雲を染めています。近目に、鳥達が、膨らみ始めた木蓮の木の芽に寄ってきています。 “春の雪”が例年にない程降っています。春の雪は、一時、静けさと余韻をもたらしてくれます。駒とめて袖うち拂うかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮れ(藤原定家) この一年、原発事故の対応にあたった本学の職員や関係者の頑張りに脱帽です。天命として自分の置かれている立場を受け入れて、各自の役割を見事に果たしてくれました。不眠、不休という表現は大袈裟ではありません。評価は“時”ですが、この職員達とこの時間を共にした事、生涯誇りに思って歩むことができます。人間の優しさ、勁つよさを教えられました。と同時に、仕事にあたっては酷薄さや偽善に振り廻されもしました。被災者が同じ被災者である支援側の人間を責め立てるというのは、惨むご過ぎます。“所詮、人間は曖昧な偽善の上に立って生きている”のでは…。 昔の文化として確かに共有していた、里山の入会地や路地にみられる“思いやり”、“察し”、あるいは“公”の精神、これらを現代に合った形で取り戻さないと、奇怪な日本になってしまわないかと心配になります。東こ風ち吹かば にほいおこせよ梅の花 主なしとて 春を忘るな(春な忘れそ)(菅原道真) 人じん口こうに膾かいしゃ炙しているこの歌は、時代背景、彼の出自などを考えて読み解かなければならないようです。持統天皇の歌(vol.128)も、夏の風情を漂わせた名歌というのではなく、天下奪とりを表明していると言われています。(vol.128 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=161) 東日本大震災復興チャリティーイベントとして開催された名家の逸品「真まそほ朱の夜明け」展に行ってきました。入口のデザインが、入場者を一気に雰囲気に浸らせてしまいます。「まそほ」とは、自然の赤々とした色の輝きをいうのだそうです。この色は、古来、誕生、祈り、出発を象徴しており、魔除けの役割もあったとのことです。伊達政宗着用の陣羽織は何時みても粋です。我が国の古代の色は、海外のそれと比べると“和らかい”、“優しい”というのが印象的です。狩猟や砂漠の文化と対極にあるからでしょうか。 今週の花材は、執務室の春の謳歌、秘書室は姿形や色に高貴さを感じさせてくれます。今週の花vol.165 天 命2012年3月16日■ユリ〔クリスタルブランカ〕ユリ科/球根植物/オリエンタルハイブリッド種のユリ。大きく優雅な花姿と芳香が特徴。「カサブランカ」に似た純白の大輪で、上向きに開花する。■シンビジュウム〔デイライト〕ラン科/原産:東南アジア/寒さに強く、冬の代表的な蘭花。非常に花持ちが良く、開花後1〜2ヵ月楽しめる。「デイライト」は鮮やかな黄色の大輪種。■モルセラ シソ科/一年草/原産:シリア/ミントのような芳香がある。主に花を包むような大きなみどりのガクを観賞するグリーンとして流通。花期は春で白っぽい花が咲く。爽やかなライトグリーンと独特な茎のラインが特徴。理事長室からの花だより

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