FUKUSHIMAいのちの最前線
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第2章福島医大関係者行動記録〈手記とメッセージ〉FUKUSHIMA いのちの最前線147 本県での原発事故の発生で、放射能汚染、ライフラインの崩壊、燃料不足などで街は閑散としています。真に秋しゅう風ふう索さく寞ばくです。農作物の出荷、摂取自粛は、農家にとっては農業の否定を意味します。ついに農家の方が絶望のあまり自殺してしまいました。子供の頃、友人の家の殆どが農家だったので、心中が痛い程分かります。 鶯うぐいすの声が度々聞かれるようになってきました。時は確実に動いています。古庭に鶯啼なきぬ日もすがら(蕪村) 早い日の出、今朝(3月24日)、月は南の空高く、寝ね待まち月づきの姿を見せてくれています。筋すじ状の雲が何本も南西から北東にあり、朝陽を受けて茜色に輝いていました。 3月11日以来、書き込むスペースがない程埋まっていた手帳は、その日から、真っ白です。その空白は、不気味で、虚無的にさえみえます。一方、空白を切っ掛けに、仕事の合間の抹茶、何も考えずに喫していましたが、今は、何かを考えながら嗜たしなんでいます。恐らく、その先に無心があるのかと思い至ります。 原発事故に我が身を捨てて使命を果たしている人々、我が身を顧みず津波の襲来を無線放送で呼び掛け続けていた人々、“無私”をここにみます。1945年8月20日(8月15日の終戦後)、樺から太ふとの真岡郵便局で起こった9人(異説あり)の電話交換手の乙女の悲劇と、同じ流れにある人間の崇高な精神です。 このような話に接する度に、この箴言を想い出します。 「逆境の美徳は忍耐」(フランシス・ベーコン) 先日の会議でも度々遅刻するスタッフにイライラしていると、同僚にシャクルトン(世界的探検家で、世界初の求人広告を出した人物)が言ったという「忍耐」というポスターを眼の前に出されてしまいました。大学執行部の余裕とユーモアに感謝です。Sweet are the uses of adversity(逆境が人に与える教訓ほどうるわしいものはない)シェークスピア 3月27日(1689年)は芭蕉が奥の細道へ旅立った日です。月つき日ひは百はく代たいの過か客かくにして、行ゆきかふ年も又旅人也 この言葉は、今までとは違う何かを教えてくれます。 今週から再開した花だより、大学に集う人々が、頑張っていることの読者への意思表示です。執務室はクリスタル、秘書室は白磁で清冽さを演出して、それに鋭敏ぎみになっている心を優しく癒してくれる暖色系の花の組み合わせです。今週の花vol.119 逆 境2011年4月1日 本県に応援に駆けつけてくれている多くの組織や人々に、本学を代表して心から感謝の意を表します。今、福島県民のみならず、日本という国家、民族の真価が試されているのだと思っています。 こんな時でも、庭の木ボ瓜ケが今年も花を咲かせています。少し救われた気持ちになります。■カンパニュラ キキョウ科/原産:ヨーロッパ/別名「フウリンソウ・釣鐘草」/《名前の由来》ラテン語で「小さな鐘」を意味する語から/風鈴のような形の花を一枝にいくつも咲かせる。世界で約300種あり、日本にも4種自生する。■スプレーストック アブラナ科/一年草/原産:地中海沿岸/甘い香りを放つ春の花。茎の上部で3〜5本に分岐して開花するスプレー咲きのストック。ボリュームのある八重咲きと清楚な一重咲きがある。■コデマリ バラ科/落葉低木/原産:中国/白い小花が半円球状に密集し、ひとつの花のように咲く。枝いっぱいに連なって開花し、大株に育ったものは見応えがある。花の重みで枝垂れる姿が優雅で、庭木としても人気。花期は4〜5月。

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