FUKUSHIMAいのちの最前線
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124来県された福井大学医療班と連携をはかり、被ばく医療に対する情報や協力を得て対応しました。その後、放射線医学総合研究所と広島大学からの応援があり、速やかに被ばく医療体制が整い始めました。③母子・乳児医療の調整 被ばく医療と並行して、母乳育児の推進を柱とした母子・乳児医療の調整を行いました。震災によりライフラインが途絶し、衛生状態が悪い中で哺乳ビンを使用すると、乳児の消化機能が低下し、さらに下痢が蔓延すれば感染症の増加が問題となります。小児科医師から、その情報を発信したいが、関係する部署へ連絡がとれないと、災害対策本部に情報が入りました。情報を確認し、災害対策本部を通して保健福祉事務所へ情報提供を行いました。小児科医師から、母乳育児について、被災されたお母さんに対するストレス対処法や、紙コップを使用した哺乳方法などをまとめた資料などが提供されました。母子保健の対象となる人たちに情報を伝達するために、どのような手段が有効か、利用可能なツールはないか確認したところ、保健福祉事務所で母子保健、乳児医療体制の整備を進めていることがわかり、保健福祉事務所と活動を共有して小児科医療機関と連携をはかり、被災されたお母さん方に情報提供ができる活動につなげることができました。 その他、避難後に十分なケアを受けられなくなった精神科疾患患者への対応や、被災しこころのケアを必要とする方への対応を、当院からの協力を得て進めていきました。④災害対策本部での活動を振り返って 私は災害対策本部での活動を、当初は「自分は初対面の方でも気兼ねなく対応することができるし、心は折れないだろう。自分は大丈夫」と思っていました。しかし、平時と異なった災害時に2週間職場を離れ、救命や医療を必要とする人に直接かかわらず、慣れない業務に携わることで、自分に何が必要とされているのかと不安が募りました。さらに、自分が行った行動が評価できず、看護師として無力感を感じ、落ち込み、笑顔で対応することが難しいこともありました。 そのようなとき、所属師長や病院スタッフから励ましのメールが届き、その都度、心情を打ち明けることで気持ちを整理し、業務にあたることができました。業務の合間に、当院のリエゾン看護師との面談も設けていただき、出来事インパクト尺度を用いたストレス判定テストを行いました。そして、自分がストレス状態にさらされている現状を自覚し、そこから何ができるのかを考えることで、不安を軽減することができました。* 当院では、昨年秋に「東北DMAT参集・実働訓練」を主催しました。主催施設として、数多くの医療機関、消防・自衛隊の協力を得て、訓練を準備・開催しました。訓練を通して本部機能での情報伝達や、情報を集約し処理するロジスティックス(業務調整)業務が重要な任務であることを認識しました。今回、実際に災害対策本部に入ってロジスティックス業務を行い、刻々と変化する状況の中で膨大に入ってくる情報を集約し、正確に伝達することの重要性を改めて再認識することができました。また、ロジスティックス業務と同様に、看護師としての医療知識や多職種との連携を災害対策本部の活動に活かすことができました。これらの情報処理の経験を、これからのDMAT活動に活かすため、さらに知識・技術を積み重ねていこうと思います。地震・津波・原発事故への対応

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