FUKUSHIMAいのちの最前線
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第2章福島医大関係者行動記録〈手記とメッセージ〉FUKUSHIMA いのちの最前線119 そのような中、REMAT(緊急被ばく医療支援チーム)、長崎大学、広島大学をはじめとする専門医療チームが当院の緊急被ばく医療を支援してくださることが正式に決まり、緊急被ばく医療班と協働で活動が行われました。手探りではありますが、救命救急センター看護師や、外来放射線部門の看護師が物品を集めてなんとか除染、全身状態の観察と処置などの初期対応を行い、患者さんを危険な状況にせず看護を行うことができました。②緊急被ばく医療班の専従として看護管理業務を担当 震災から1か月が経過した頃、福島第一原発は窮地を脱しました。しかし、いつ汚染傷病者が出現するかわからない現状には変わりがなく、今後も長期化する見通しから、人が変わっても動くシステムづくりを考えなければならない時期が来ていました。この状況を受けて、4月18日から、緊急被ばく訓練経験のある看護師が緊急被ばく医療班の専従となり、看護業務の管理を担当することになりました。これにあたっては長崎大学院生(放射線専門看護師養成コース修士課程)ら3人の支援看護師が協力してくださいました。原子力安全協議会のポケットマニュアルを参考に処置室の配置を検討し、被ばく医療に必要な診療材料などを医師と協議しながら当院のシステムを踏まえて揃えていくなど、次第に基本的な地固めができ、緊急被ばく医療の環境も整ってきました。 しかし、緊急被ばく医療では、常に最悪の事態を想定した準備が必要であり、少人数ではどうすることもできません。最終的には院内の多くの看護師の協力が不可欠です。夜間・休日に発災した場合にも対応できる人員が必要となるため、当院の看護師は待機当番制をとることになりました。最初、この待機当番には、放射線業務にほとんど従事したことのない看護師も含まれていました。しかし、放射線防護をしながら、院内汚染拡大を防ぎ救命処置にあたるという高度な技術を必要とする業務であるため、待機当番には看護師長や中堅看護師が指名されることになりました。けれども、「汚染を意識しながら救命処置ができるのか」「処置・除染の準備が1人でできるのか」などの不安があり、目に見えぬ放射線に対して「よくわからない」「心配」という声が多く聞かれ、問題が山積みでした。私たちは、どうしたら緊急被ばく医療処置を皆が自信をもって行うことができるのか考えました。待機看護師は日常看護業務についてはベテラン揃いなので、手技を繰り返し行うことによって除染処置の流れに慣れてゆき、とまどわずにケアができるはずです。多くの看護師が被ばく医療訓練を重ねることに意義があると思いました。 そこで、5月中旬から、処置シミュレーションを多職種で行うことになりました(写真1)。1週おきに開催し、毎回ビデオカメラで記録に残し、翌週はそれを視聴し「振り返り」を行っていきました。シミュレーションは、多職種が協働しながら処置を行ううえでも非常に有益なものであり、回を重ねることによって1処置・1手袋などの手技がスムーズになり、「振り返り」でさらにそれぞれの改善点を見出すなど、考えていた以上に成果が得られました。③前例のない低線量長期被ばくにどう対応していくか 震災から3か月が経過する現在、福島原発事故は、低線量長期被ばくという世界で前例のない原発災害として少しずつ様相を変えてきました。問題は、住民や救援にあたる方の放射線影響に対する不安へとシフトしています。そのような不安に苦しむ人々のために看護の視点からできることは、放射線に対する正しい知識の提供と、精神的・肉体的苦痛に寄り添っていくことだと思います。小さな子どもをもつ被災者の不安や、家族が一緒に暮らせないつらさ、被災していながら救援活動を続けなければならない職務の方の心情に介入し、1つひとつ話を聴き対応写真1:放射線被ばく処置シミュレーションの様子福島県立医科大学附属病院の活動記録

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