02放射線が身近なものって本当?健康に影響を与える量は?
放射線は目に見えませんが、じつは私たちの身の回りにもともと存在しています。
原発事故があって初めて放射線を浴びているわけではないのです。
私たちは日常的にどこで放射線を浴びているのか、身近な例を教えてもらいました。
[ 自然放射線 ]
宇宙から
宇宙には多くの放射線が飛び交っていて、宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線は放射線の一種です。飛行機で上空に行くと遮るものがなくなるため放射線が強くなり、乗っている人が受ける放射線の量も増えます。しかし、我々が普通に飛行機に乗ることによって健康が損なわれた報告はありません。
動植物から
私たち人間や動植物、そして食べ物の中にも放射性物質は含まれています。たとえば人間の生命維持に欠かせない栄養素であるカリウムのうち約0.012%は「カリウム40」という放射性物質で、海藻類やバナナ、野菜などを通して体内に取り込まれています。
地面から
土の中には放射性物質が含まれています。土の種類によってその量は異なるため、地域によっても自然放射線の量は変わります。日本国内で見ると、火山灰層の多い東日本よりも、ウランなどを含む花崗岩が多い西日本の方が、自然放射線量は高い傾向にあります。
空気から
空気中にもラドンなどの放射性物質が漂っています。ですから、健康に良いといわれるラドン温泉などに行けば、空気中に含まれる放射性物質のラドンも増えることになります。
「このように、日常生活を通して私たちは放射性物質を体内に取り込んでいますが、代謝によって便や尿と共に体外に排出されますから、健康に影響はありません。ちなみに、日本で生活して受ける年間の自然放射線量は2.1ミリシーベルト程度ですが、世界平均は約2.4ミリシーベルトです。中国の陽江(ヤンジャン)、インドのケララ、イランのラムサールなど、放射性物質が土壌中に多く含まれている地域では、日本の2倍?10倍程度もあります」
[ 人工放射線 ]
放射線はがん治療やレントゲン検査、CTスキャンといった医療をはじめ、お米や野菜などの品種改良や食品の保存、日用品の製造などにも幅広く利用されています。
「人工放射線も人への影響は自然の放射線と変わりません。セシウムから出る放射線も、カリウム40という人間の体内に存在する放射性物質から出る放射線も同じものなのです。つまり、放射線の影響は、何からではなく、どれだけ浴びたか、その量が問題になります」
健康に影響を与える放射線の量は?
国際的には、浴びることによって健康に影響を与える放射線の量は、100ミリシーベルトが目安とされています。被ばく線量が500ミリシーベルトを超えると白血球の減少が見られ、1,000ミリシーベルト以上になると自覚症状や放射線障害が現れます。
また、大量の放射線を一気に浴びた場合と、ゆっくりと時間をかけて浴びた場合では、身体への影響が異なるとされています。時間をかけて浴びた場合の方が影響は小さいのですが、その理由は私たちの身体の細胞が、放射線によってダメージを受けたとしても、その傷を治したり、傷ついた細胞を取り除いて新しく入れ替えたりといったことを行うためなのです。