「福島の医療の未来を信じて ― 9年間の感謝を込めて」

 2017年4月の就任以来、9年という長きにわたり、理事長兼学長として福島県立医科大学の運営に携わってまいりました。本日、任期満了を迎えるにあたり、退任のご挨拶を申し上げます。

 振り返れば、この9年間は東日本大震災と原発事故、さらに新型コロナウイルス感染症によるパンデミックなど、世界史に刻まれる出来事が続いた激動の9年間でした。東日本大震災からの復興に向け、本学は県民の皆様の健康を守る「最後の砦」となり、健康と医療の面から復興を支えることを使命として教育・研究・診療の各分野で弛まぬ努力を続けてまいりました。そしてそのさなか、2020年からは新型コロナウイルス感染症にも向き合わなければなりませんでした。全教職員・学生が一丸となり、総力を上げて前例のない復興への挑戦と、未知の脅威への対応に試行錯誤した日々は、私の生涯忘れることのできない記憶です。

 福島の医療の最前線、そして最先端に立つ砦として、私たちは決して問題を先送りしない『不屈の精神』を持ち続けてきました。しかし、復興と発展のためにはただ耐えるだけではなく、積極的に前へ進むことも不可欠です。そこで私たちには、困難に立ち向かう強さと、環境の変化に適応するしなやかさ(レジリエンス)、国内外の有識者や組織との強固な連携(アライアンス)、そして機敏さ(アジリティ)が必要であること。そして、ピンチをチャンスへと前向きに捉える精神、悲劇を奇跡に、そして変化を進化に変えようとする気力、国内はもとより世界との連携により視野を広げようとする意志こそが、福島の忘れ難い経験を未来構築のための価値ある教訓へと高める道であると、常に学内で意識を共有してきました。

 その信念のもと、9年間のうちに高度医療の提供、次世代を担う医療人の育成、そして国際的な研究拠点の形成など、多くの実績を上げることができたと思っております。そしてこれらはひとえに、本学を支えてくださった福島県民の皆様、関係機関の方々、そして何より、日々現場で尽力してくれた教職員と学生諸君の献身的な支えがあったからこそと、深く感謝しております。

 福島には、まだまだ解決すべき課題が山積しています。しかし、本学がこれまで培ってきた「英知」と「志」があれば、必ずやこれからの新しい時代の医療を切り拓いていけると確信しています。

 私は本日をもって退任し、福島県顧問(医療保健対策監)および本学の顧問として、そして何よりも「一人の福島県民として」、本県の復興と医療の発展を、静かに、しかし力強く応援してまいりたいと考えております。

 加えて、福島県立医科大学がこれからも県民に寄り添い、世界に誇れる「選ばれる病院・大学」として、さらなる飛躍を遂げることを心より願っております。

 本日に至るまで長きにわたる数えきれないほど多くの皆様による、計りえない多大なご支援に重ねて厚く御礼申し上げます。

 ありがとうございました。

2026年3月31日

                                           公立大学法人 福島県立医科大学
                                           理事長兼学長             





これまでの竹之下理事長の式辞一覧は、4月1日よりこちらからご覧いただけます。

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