研究経歴 - 島袋 充生
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心臓脂肪・異所性脂肪・サルコペニアの病的意義の解明と新しい診療コンセプトの構築
2016年4月 - 現在
生活習慣病
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2011年1月 - 2013
(1)腹部脂肪、肝臓、骨格筋、心臓周囲脂肪および筋量を非侵襲的に測定し、異所性脂肪分布様式を検証した。玄米食介入で減量および血管内皮機能改善効果を確認した。 (2)飽和脂肪酸処理されたヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)でプロテオーム ・トランスクリプトーム解析をおこない、発現変動の顕著な産物Xを同定した。分子X siRNAを過剰発現したHUVECでは、飽和脂肪酸による細胞死が、カスパーゼ3,7切断を阻害することで抑制された。 (3)心臓手術症例で、心臓脂肪発現シグナルと全身および心臓脂肪分布との関係を検証した。心臓バイパス手術症例は、心臓周囲脂肪量が増加して炎症性シグナルが増加していた。
遊離脂肪酸 / 内臓肥満症 / 異所性脂肪 / 糖尿病 / インスリン抵抗性
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内臓脂肪由来活性酸素種による血管障害の分子メカニズム研究課題
2008年1月 - 2010
内臓肥満症を基盤にもつメタボリックシンドローム症例では、血管機能が障害され、心臓血管病の発症につながる。筆者らは、内臓脂肪に由来した活性酸素種が、メタボリックシンドロームの病態に重要な役割を担っていることを解明してきた。本研究では、血管内皮における内臓脂肪由来活性酸素種の発生様式を検討し、以下の結果を得た。第一、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)では、パルミチン酸添加で、細胞内活性酸素種シグナル(ROS)が増加した。ROS産生は抗酸化物質N-アセチルシステインで抑制されるが、NAD(P)Hオキシダーゼ阻害薬やRho-kinase阻害薬で抑制されなかった。第二、パルミチン酸で複数の酸化ストレス関連蛋白の発現が増強した。第三、肥満マウス血管のアセチルコリンおよびニトロプルシッドに対する拡張反応は、通常食で明らかな変化しなかった。以上、食事中の主要な飽和脂肪酸が直接酸化ストレスを産生し、関連する蛋白群を活性化することで、血管機能に影響していることが明らかになった。
内臓肥満症 / 血管内皮機能 / 心筋梗塞 / 活性酸素種 / メタボリックシンドローム / 内蔵肥満症
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脂肪毒性の分子機構-adenovirus obrbおよびPPARαによる機能解析
2002年1月 - 2004
1.膵β細胞株INS-1細胞を用いて、遊離脂肪酸過剰負荷による中性脂肪あるいはFACoAが蓄積するmodel(OBRb mutant ZDF rat、high fat fed rat)の構築をおこなった.また、遊離脂肪酸による膵β細胞傷害機序の明らかにした。すなわちINS-1に対して飽和脂肪酸(パルミチン酸:C16:0)は、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸:C18:1)より強い細胞傷害活性を示した。パルミチン酸によりリン酸化AktおよびNFkbシグナルが変化したこと、またAktシグナルを遺伝子改変により抑制した系(dominant negative Akt)では、細胞傷害活性が抑制されることより、飽和脂肪酸による細胞障害活性にAkt-PI3シグナルが関与することが示された.
2.脂肪毒性モデルを構築するために、正常ラットに急性脂肪酸負荷静注を行い、脂肪毒性モデルである肥満ラット(Zucker Diabetic Fatty : fa/fa)とインスリン感受性、血管内皮機能の比較をおこなった。急性脂肪酸負荷静注により、正常ラット下肢血流のアセチルコリン負荷に対する血流増加反応が低下した。脂肪毒性モデルとして今後メカニズムをレプチン受容体、PRARαシグナルの点から明らかにしていく予定である。糖尿病 / インスリン / レプチン
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膵β細胞lipotoxicityの糖尿病発症における役割とその分子機構研究課題
1999年1月 - 2000
肥満糖尿病モデルOLETFおよびZDFラットで,経口血糖負荷試験、SSPG+SSPI(steady state p1asma glucose+insulin)を行ない,著明なインスリン抵抗性が存在することを確認した.同時にangiotensin受容体阻害薬およびPDE(phosphodiesterase)阻害薬がこれを改善することを確認した.マイクロスフェア法による局所血流測定の結果より,PDE阻害薬によるインスリン抵抗性改善の機序として,脂肪,骨格筋での血流増加の関与が示唆された.今後はこれらの系を用いて,インスリン分泌障害と脂肪との関係を検討中である.また,脂肪毒性の機序を探るため,Ins-1およびprimary cultureの系を用いて,NFkBの発現レベルを検討中である.
臨床的には,糖尿病発症に関わる地域住民調査で,250名のボランティアで,経口血糖負荷試験,インスリン,レプチンの測定をおこなった.肥満と高中性脂肪血症,高インスリン血症,レプチンの関係を明らかにした.糖尿病 / 肥満 / 膵β細胞 / lipotoxicity(脂肪毒性)
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高インスリン血症と耐糖能障害の冠動脈血管内皮細胞機能におよぼす影響
1995年1月 - 1995
インスリン抵抗性症候群または高インスリン血症は,動脈硬化発現の病態として注目され,冠動脈の機能的異常に密接に関係する.インスリン抵抗性症候群または高インスリン血症は,冠動脈血管の機能的異常であるSyndrome Xあるいは冠動脈攣縮性狭心症の病態に関与する.一方糖尿病では血管内皮依存性平滑筋弛緩反応が障害される.本研究は高インスリン血症,高血糖が冠動脈血管内皮細胞機能におよぼす作用について検討した.9週齢または14週齢のSTZ誘発糖尿病または対照SDラットの摘出潅流心で、冠灌流圧-流量関係を求め,冠静脈洞流出液より%oxygen extraction(%OE)を求めた.9週齢では糖尿病群と対照群で冠灌流圧-流量関係に差はなかった.インスリンは糖尿病群で圧-流量関係を上方に変移し,L-NAMEにより部分的に抑制された.また高グルコースは対照群で圧-流量関係を下方に変移した.14週齢では糖尿病群,対照群とも9週齢に比べ圧-流量関係は下方に変移し,高グルコースは両群でさらに下方に変移させた.糖尿病群では対照群に比べて冠灌流量-%OE関係が左下方に変移したがインスリンで回復した.以上より慢性の高血糖状態にある糖尿病ラットでは,好気的代謝障害にともなう血管内皮依存性血流調節が存在しインスリンで回復することが示唆された.正常血糖の対照群では,高グルコースによる血管内皮依存性血流調節が加齢による血中インスリン増加で増強することが示唆された.
高インスリン血症 / Syndrome X / 冠動脈攣縮性狭心症 / 冠動脈血管内皮細胞機能 / 糖尿病