福島県立医科大学

        大学医師会会報

  2014.11.20. No.115

*巻頭言

甲状腺健診の現状(現況)について

 
福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座
放射線医学県民健康管理センター甲状腺検査部門
鈴木 眞一
 
 2011311日、東日本大震災によって東京電力福島第1原発で事故が発生し、大量の

放射性物質が大気中に放出されました。放射線被ばくによる健康影響が懸念されたことから、

子どもたちの健康を長期に見守るために、福島県では県民健康管理調査(当時。現在は県民

健康調査)の4つの詳細調査の一つとして超音波による甲状腺健診を行うこととなりました。
 事故当時に概ね18才以下だった福島県民約37万人に対して長期にわたり検査を行うとの

制度設計のもと、1巡目の検査である先行検査を2011109日より開始し、震災後3年を

経過した2014331日に終了しました。
現在は2巡目となる本格検査を実施中で、すでに約9万人に検査を施行しています。本格

検査は20歳までは2年ごとに、それ以上の年齢では5年ごとに行う予定になっています。
先行検査、本格検査のいずれも、検査は一次検査、二次検査の2つの段階に分かれてい

ます。一次検査は甲状腺結節のスクリーニングが目的であり、その判定基準は、A判定が

2年ないし5年後に実施される次回の本格検査まで経過観察とするもので、B判定(5.1mm

以上の結節ないし20.1mm以上の嚢胞を認めるもの)およびC判定(直ちに二次検査が必要

と思われるもの)が二次検査を勧める判定となります。A判定はさらにA1(嚢胞、結節の

所見を認めない)、A25mm以下の結節ないし20mm以下の嚢胞を認める)に分けられます。


結果

 先行検査のうち、2014630日までの結果集計分を報告します。一次検査は296,026人

(80.5%)がすでに受診し、結果が確定した285,689人中、A1152,389人(51.5%)、

A2 141,063人(47.7%)、B2,236(0.8)C 1人でした。先行検査の一次検査

の超音波所見では、コロイド嚢胞の多発、甲状腺内胸腺が特徴的に認められます。
二次検査はBC判定の2,237(0.8)が対象で、すでに1,848人(94.7%)が診断確定

しています。このうち623人はA1ないしA2に再判定されました。また1,225人は二次検査後、

保険診療での経過観察や精査を施行されています。うち485人に細胞診が施行され、悪性

ないし悪性疑いが104人で、58人がすでに手術を施行され、1人が良性結節、57人が甲状

腺癌 (乳頭癌55例、低分化癌2)と病理診断が確定しています。細胞診結果が悪性ないし

悪性疑いであった104例の平均年齢は17.1歳、性別は男36:女68、平均腫瘍径14.2oです。
 県外へ避難している方のために県外拠点の契約を行い、現在、全国46都道府県において

96医療機関と協定を締結し検査を実施しています。県内では12医療機関との契約も進んで

おり、さらに、県内での実施可能な医師技師を増やすために、医師会と共に超音波講習会

を実施しております。
二次検査は当初は本学附属病院でのみ施行しておりましたが、その後県内では郡山市、

いわき市、会津若松市の医療機関においても施行しております。また、福島県からの避難

者が多い山形県、新潟県、神奈川県など、県外検査医療機関での実施が進まない場合には、

私共が検診バス等で土日に現地にて出張健診を実施しております。さらに、18歳以上の

被検者の受診率の低下を防ぐために、土日での検査の試験的実施や県内の大学等での検査

実施など、様々な対応を試みております。
 
考察
 現時点で発見されている甲状腺癌症例は、福島県内での被ばく線量がチェルノブイリ

よりも低いとされること、また腫瘍径、地域差がないこと、年齢分布、発症までの期間、

病理組織型などを考慮すると、超音波検査によるスクリーニング効果および今まで施行

されていなかった健診を急に施行したハーベスト効果によるものと考えられ、現時点で

は放射線の影響と考えにくいと判断しております。今後はこの結果を基に本調査を続け、

甲状腺に対する放射線の影響があるのかないのかについて知ることによって、不安の

解消と健康増進を図りながら、長きにわたって県民の皆様を見守っていきます。



















*学内・教授会情報






















(平成26919日福島民報より)

 

〜教授就任の抱負〜

腫瘍内科学講座

教授 佐治 重衡

      歴:

1992 岐阜大学医学部卒業
1992 東京都立駒込病院
      外科研修医、外科専門 臨床研修医
1997 岐阜大学医学部 
      生化学教室、第
2外科教室博士課程研究員
1998年 (埼玉県立がんセンター研究所 研修生)
1999年 カロリンスカ医科大学(スウェーデン)博士研究員
2001 東京都立駒込病院 乳腺外科 医員
2003年 M.D.アンダーソンがんセンター (米国)集学的治療研修
                  プログラム(短期留学)
                 2004
年 東京都立駒込病院 乳腺外科・臨床試験科 医長
             2009年 埼玉医科大学 国際医療センター 腫瘍内科准教授
             2011年 京都大学大学院 医学研究科 標的治療腫瘍学講座
                    特定准教授
                2014年 福島県立医科大学 腫瘍内科学講座 主任教授

  本学医師会の諸先生におかれましては、時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 この度、平成26年9月1日付けで医学部腫瘍内科学講座の主任教授の任を拝命いたしました。
 また、これまでセンターの運営に多大なご尽力をされてこられました、石田卓先生の後任とし
て附属病院臨床腫瘍センターのセンター長を10月1日付けで拝命いたしました。ここに、本紙
面をお借りしまして御挨拶申し上げます。


 わたくしは平成4年に大学を卒業するまでの24年間を、出身地の岐阜県岐阜市で過ごしました。
清流・長良川が街の中を流れるおだやかな故郷のあまりの居心地の良さに危機感を持ち、卒後は
上京して東京都立駒込病院で研修医・外科専門研修医生活を過ごしました。岐阜大学生化学・
第2外科、埼玉県立がんセンター、カロリンスカ医科大学(スウェーデン)、東京都立駒込
病院乳腺外科などを経て、2003年に当時はまだ数少なかった腫瘍内科医への転向を決意いた
しました。埼玉医大腫瘍内科で多くの固形癌患者さんの診療・臨床試験にあたり、京都大学
大学院標的治療腫瘍学講座では日本を代表するアカデミアでの研究の進みかたを学びました。 

 このたび、ご縁をいただき福島での診療・研究と新設講座立ち上げの機会に恵まれました。
腫瘍内科は日本ではまだ馴染みの薄い臨床部門です。各臓器がんの治療戦略全体を理解しつつ、
がんの薬物療法を専門として診療や研究をおこない、臨床試験やコホート研究などを通じて
あらたな治療薬・治療戦略の開発にあたります。しかし、がん薬物療法専門医は福島県内に
わずか6名(うち4名は大学内)という状況です。これからの専門医育成と、福島県内各地域
とのネットワーク作りが重要と考えております。全国的にも指導的立場の医師が少ない状況で、
ゼロからの講座立ち上げを開始したところですが、少し長い目とお時間をいただきつつ、ご指導
ご鞭撻をいただけますと幸いです。

今後ともどうぞよろしく御願い申し上げます。

 

*病院内の動き

1011月部長会報告(要点)〜

26年度の医師臨床研修マッチングの結果について

平成26年度の医師臨床研修マッチング結果が、このほど公表されました。

それによると、当院の内定者は昨年度より4人減少して8人となりました。
内訳は本学出身者が4人、他大学出身者が4人です。また、当院も含めた県内
病院全体では昨年度より4人減少して88人で、昨年度に次いで、過去2番目に
多いマッチング数となりました。内訳は本学出身者が48人、他大学出身者が
40
人です。当院には上記8人に、自治医科大学等の2人を合わせた10人が採用
予定者となります。

なお、本学6年生のマッチングについてみると、47人が当院も含めた県内
病院にマッチングしており、うち3名が当院のマッチング数です。

 

       −病院経営課−

 

 

*日医FAXニュースより

文部科学省       平成261020

平成27年度医学部入学定員の各大学の

増員計画について

各大学から提出された平成27年度医学部入学定員の増員計画をとり
まとめましたので公表します。

【概要】
〇 平成26年度定員総数:9,069人→平成27年度定員総数計画):9,134
〇 前年度比増員数信十画):18大学65
(内訳)
     :5大学19人、公立:2大学5人、私:11大学41
〇 増員開始前の平成19年度比増員数計画):1,509
〇 詳細は別頁(P6)のとおりです。

※本資料は、各大学から提出された増員計画に記載された人数を集計した
ものであり、今後の予算編成や設置審査によって変更が生じる可能性があります。

お問合せ先

文部科学省高等教育局医学教育課医師養成係
    :03-5253-4111(代表)(内線2509)
       03-6734-2509(直通)

 

 

*学内人事異動       

異動事由 発令日 所属 職名 氏名 備考

(医学部等)                           

・退職  26.9.30 臨床腫瘍センター
        准教授 石田 卓             
・退職 26.9.30 (会)臨床医学部門
    科長  織壁 里名 
・採用  26.10.1 放射線医学県民健康管理センター
    
特命教授 田中 成省

        国際連携・コミュニケーション部門広報推
    進室長、広報コミュニケーション室員
・採用 26.10.1  医療−産業トランスレーショナルリサーチセンター
        准教授 星 裕孝
       ケミカルバイオロジー分野
・採用 26.10.1  医療−産業トランスレーショナルリサーチセンター
        講師   比嘉 亜里砂
        ケミカルバイオロジー分野         
・昇任  26.10.1 免疫学講座
        准教授 高橋 実       講師→ 
・昇任  26.10.1 器官制御外科学講座
        講師   八島 玲       助教→ 
・昇任  26.10.1 放射線災害医療学講座
        教授   長谷川 有史  助教→、
       放射線災害医療センター副部長兼務、 救急科兼務、救命救急センター兼務、
    放射線災害医療センター副部長兼務     

・昇任  26.10.1 手術部
        准教授 小原 伸樹     講師→ 
・兼務解除26.10.1救急医療学講座
        講師   島田 二郎
        医療安全管理部副部長兼務解除   
・兼務  26.10.1 腫瘍内科学講座
        教授   佐治 重衡
        臨床腫瘍センター長兼務 
・学内異動26.10.1臨床腫瘍センター
        講師   金沢 賢也 呼吸器内科学講座→

(看護学部)                            

・退職  26.9.30 総合科学部門
       
教授   志賀 令明

(医学部等)

・採用  26.11.1 多能性幹細胞研究講座
        教授   横内 裕二           
・採用  26.11.1 先端がん免疫治療学講座
        教授   河野 浩二
器官制御外科学講座兼務
・昇任  26.11.1 耳鼻咽喉科学講座
        准教授 松塚 崇
        講師→、耳鼻咽喉科・頭頸部外科副部長
・兼務解除26.11.1臓器再生外科学講座
        教授   後藤 満一
        小児外科部長兼務解除
・兼務  26.11.1 臓器再生外科学講座
        教授   鈴木 弘行
        先端がん免疫治療学講座兼務
・兼務  26.11.1 臓器再生外科学講座
        講師   伊勢 一哉
        小児外科部長兼務
・兼務  26.11.1 人工透析センター
    特命准教授 寺脇 博之
    人工透析センター副部長兼務

 

*大学医師会共催の学術講演会案内

〜福島県生涯教育講座学術講演会〜                    

頭頚部癌治療 Up to date 2014
日時:平成26124日(木)1830分〜
場所:郡山市 ホテルハマツ
特別講演:「頭蓋底悪性腫瘍に対する手術と長期成績」
座長:福島県立医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座
教授  大森 孝一 先生
講師:福島県立医科大学医学部 脳神経外科学講座
     教授  齋藤  清 先生
 

〜第10回福島県性差医療セミナー〜

日時:平成26127日(日)1030分〜
場所:福島市 福島県立医科大学内 8号館
301会議室
詳細は、右頁「光が丘協議会だより」をご覧下さい。

 The 5th Swiss-Japanese Spine Research Symposium

日時:平成26128日(月)1800
場所:福島市 コラッセふくしま
特別講演
座 長:福島県立医科大学附属病院
院長兼副学長 紺野 愼一 先生
Green tea EGCS: A new therapeutic approach to
intervertebral disk disease?
ETH Zurich Institute for Biomechanics
 Dr. Karin Wuertz
Hanging by a thread: Textiles and Nano-Fibers for Disc Repair
ETH Zurich Institute for Biomechanics
Prof. Stephen Ferguson

 

〜福島県生涯教育講座学術講演会〜

めまいセミナー

日時:平成261218日(木)1815分〜
場所:福島市 ウェディングエルティ 2F「ハートンルーム」
特別演題T:「めまいの新しい検査〜CTP蛋白とvHIT(ビデオヘッドインパルステスト)〜」
座長:福島県立医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座 講師  松井 隆道 先生
演者:埼玉医科大学 耳鼻咽喉科  
     教授  池園 哲郎 先生
特別演題U:「めまいの診断と治療」
座長:福島県立医科大学医学部 耳鼻咽喉科学講座 教授  大森 孝一 先生
演者:岐阜大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科学分野  
     教授  伊藤 八次 先生

 

*事務局保管資料

・平成25年度 血液事業の概要(図書)
・平成26年度 予防接種必携(図書)
・平成25年度版 日本医師会年次報告書(図書)
・平成24年度 郡山医師会地域保健医療活動(図書)
・強力な医師会による当事者自治のドイツ医療(図書)

 

*光が丘協議会だより

  〜第10回福島県性差医療セミナー開催〜

本年も、当協議会の後援で、「第10回福島県性差医療セミナー」を以下
のとおり開催することとなりましたので、多くの皆様のご参加をお待ちし
ております。

     開催日時  平成2612月7日(日)
       1025分〜16
     開催場所  福島県立医科大学
「看護学部棟N301講義室」
     参加費   無料
【第1部】 1025分〜12
     講演
「もっと知ろう!漢方のこと〜よりよく生きる
ための漢方の基礎知識と実際〜」
    鈴木 朋子(福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座 准教授)
【第2部】 13時〜16
     福島県立医科大学附属病院
         性差医療センター報告
     講演
「科学と地域を橋渡しするツール:福島における育児支援」
     後藤 あや(福島県立医科大学
            公衆衛生学講座 准教授)
  「福島における支援者のストレス
〜ジェンダーの違いも含めて考える〜」
   前田 正治(福島県立医科大学 
災害こころの医学講座 教授)
  「女性ホルモンをもっと知ろう」
   天野 惠子(財団法人野中東皓会静風荘病院
             特別顧問)
 

[問い合わせ先]
    福島県立医科大学附属病院 病院経営課病院企画係
            TEL  024-547-1821
            FAX  024-547-1988
           E-MAIL seisa@fmu.ac.jp

             −光が丘協議会―

 

 

*編集後記

本年も12月にはいり、残り少なくなってまいりました。日増しに寒さが
厳しくなってきている今日この頃です。

今回の巻頭言は本学甲状腺内分泌学講座教授 鈴木眞一先生にお願いいた
しました。鈴木教授には現在、福島県で行われている甲状腺健診の現状に
ついて詳細に述べていただきました。長期にわたる甲状腺健診において
スタッフの皆様のご苦労は大きなものとお察し申し上げます。
 本健診は、福島県民、特にお子さんやお子さんをもつお父さん、お母さ
んたちが安心して福島で生活できることを示し続ける重要な健診だと思い
ます。今後とも、甲状腺健診が順調に進んでいくことを心からお祈りいた
します。

 本年91日 腫瘍内科学講座に佐治重衡先生が、101日 放射線災害
医療学講座に長谷川有史先生が教授として着任されました。佐治教授、長
谷川教授には、本学におきましてますますご活躍されることを祈念いたし
ます。

 そろそろ福島市内にも初雪が舞うころです。どうぞ体調をくずされませ
んように、健康管理を十分にしてよいお年をお迎えください。

 

大学医師会広報委員  小宮ひろみ

 

 

福島県立医科大学医師会
     大平弘正
     広報委員 大谷晃司・小宮ひろみ
      飯高千代治

9601295 福島市光が丘1番地
      TEL0245471111 内線4200
      TEL/FAX 0245481650

アドレス  ishikai@fmu.ac.jp
     HP:www.fmu.ac.jp/home/somu/
        ishikai/ishikai-index.htm

福島県立医科大学光が丘協議会

www.hikarigaoka-k.jp/