福島お達者くらぶだより

 2017 7 1日発行 通算 84

 

 7月になりました。思春期〜青年期の人たちの起こす大事件は、例えば秋葉原事件など、6月に多いことに気が付いておられるでしょうか。若い人たちは4月に新しい環境に入ることが多い、最初はそれに必死になじもうとするけれど、5月の連休明けくらいには疲れが出てきて(5月病という言葉があります)、それをうまくコントロールできないと6月に一気に爆発するのでしょう。その6月が過ぎて、これからはみんな落ち着いて夏の日々を過ごしましょう。熱中症には気を配って、十分な水分を心がけるなどしてください。

 

10月のミーティングの日に

 10月のミーティングの日には県立医大で学園祭(「光翔祭」といいます)が行われます。

少しうるさいし、来る途中にも少し迷惑をかけるかもしれませんが、ご了解ください。

 

【予告】来年1月のミーティング会場

 今年の1月のミーティングの日は大学入試センター試験と重なったためにいつもの医大の部屋が使えず、外の会場で行いました。来年1月のミーティングもまたセンター試験と重なるために外の会場となります。今年の本人ミーティングは蓬莱学習センターで行ったのですが、そこが十分に使えることがわかりましたので、来年1月のミーティングは本人・家族とも蓬莱学習センターで行うことにします。

 

蓬莱学習センターの場所

福島市の方から来る場合:伏拝の交差点で(4号線バイパスからなら左折、旧4号からなら直進して)蓬莱団地の方向に進み、蓬莱団地の坂道を登り切った信号で左折するとすぐに右側です。

南(郡山)の方から来る場合:いつものように医大を目指して来て、医大病院に入るところの信号を左折せずに直進して医大大橋を渡り、坂道を登り切ったら左手にショッピングセンター(いちいなど)が見える次の信号を右折するとすぐ右側です。

迷ったら:遠慮せずにお達者くらぶの電話(070-6622-8026)に連絡してください。

 

 

日本摂食障害学会ニュースレターから

 前々号の摂食障害の専門職者が関わる組織で紹介しました日本摂食障害学会は会員向けにニュースレターを発行しているのですが、その新しい号の中にあった瀧井正人先生の寄稿された文章に、お達者くらぶメンバーの皆様にも読んでもらえたらと思う記事があったので、紹介したいと思います。瀧井先生は古くから摂食障害の治療に取り組んできた九州大学心療内科で中心的に活動されてきた方です(今は摂食障害に併発した万引きの依存になってしまった人たちが多い医療刑務所に勤められています)。

 瀧井先生はいろいろな治療を工夫してきた中で、まずまず納得できる結果が見られるようになったのは「行動制限を用いた認知行動療法」だったとのことです。ただし、この治療は「しっかり食べて体重を増やさなければ何も始まらない」という行動療法的な枠組みをベースにはしているけれど、「患者さんの治療動機、内面の気付き、心の成長を重視し、集団療法や家族への対応を含む、統合的治療です」と書かれています。

 私(香山)は行動を制限して「体重がどこまで増えたら何を許してあげる、何キロになったら退院」といった行動療法はきらいです(あまりに体重の低い状態では脳がまともに働いてくれなくて、認知の歪みの修整はほとんど不可能なので、必要な場合があることは認めているのですが)。けれど、それが瀧井先生の書かれている「統合的治療」の中で行われれば大いに有効性が発揮されるのでしょうね。私がきらいなのは、その治療法が単に技術として行われてしまう場合です。

 この下に瀧井先生の書かれている文章の後半部分を引用します(前半部分はご自分のことの紹介なので省略します)。

 

瀧井正人先生のお考え

 摂食障害は身体面、行動面、心理面など多面的な疾患であり、どの側面を重要と考え治療するかが、治療者によって異なっています。私は、摂食障害は本質的には「心の病気」であり、生きていく上で避けがたく生じる心の負担や不調を心で受け止めることができず、身体面や行動面に回避しているものであると考えています。そして、そのような回避と摂食障害や心の成長不全は悪循環をなし、患者はそこから抜け出せなくなっているのです。まず身体面や行動面への回避をブロックして、本来の心の問題で受け止めざるをえないようにすることが、病気の改善にとって不可欠な心の成長の足掛かりになります。

 昨今、患者さんの自己治癒力とか、自助(グループ)とかが何よりも大切であり、専門的治療はなるべくせずに良くなることが一番いいというような考えを、しばしば耳にします。しかし、余程の軽傷例はいざ知らず、摂食障害は自分だけの力で治ったり、同じ病気の人が集まって話していれば良くなるといったものではありません。積極的な治療の弊害を書き立てたような読み物もあります。しかし、それらはその筆者自身の病気や人間についての浅い見方や、粗雑な治療経験に基づいて書かれていたりするのです。

 重症度や治療困難性の異なった摂食障害があり、治療者側も持っている施設環境や治療経験・臨床力の程度も様々です。そういう中で、それぞれがその条件の元でできることをすればいいのかもしれません。ただ、そこで重要なのは、自分の行う治療が、どういう摂食障害に対して、どの程度有効なのかという検証ではないでしょうか。

 

(香山による補遺)最近の、特にネット上に出回っている意見などは、書いている人が自分だけの経験で書いているものが多くて、それを信じられたら困ると思ってしまうものも多いと感じます。専門的治療はなるべくせずに良くなることが一番いい、とも思いません。ただ、ふつうに精神科にかかっても、本当に専門的な治療が受けられるかが確かでないだけでなく、逆に傷つく場合もあると言わざるを得ません。そのような場合、自助グループは傷つくことなく、傷を癒やしてくれる場にもなるだろうと思います。

 

 

世界摂食障害アクションデイの報告

 去る6月4日は世界摂食障害アクションデイで、日本摂食障害協会が東京でそれに合わせたイベントを行いました。福島お達者くらぶはスタッフが参加して、ポスターを貼るなどして創設25周年の宣伝をしてきました。

 日本摂食障害協会は昨年のこの日に立ち上げられたのですが、設立にかかわった日本摂食障害学会の中心的な医師の古手の人たちには自助グループに強い拒否的感情を持つ人たちも多いので、どのようなイベントになるのだろうかと少し危ぶむ気持ちがありました。しかし、今回のアクションデイのイベントの中心となっていた女医さんたちが自助グループ活動をすごく大切に扱ってくれて、大きなプログラムの半分は完全に自助グループに企画も実行も任されていました。それは画期的なことだったと感じました。

 たぶんNABAが中心となったのだろう自助グループの企画のプログラムでは、最初の部分での中心的な発表者は各地のグループの代表者が多かったのですが、そこではそれまで異なった考え方もあって独自の活動を行ってきていたグループの代表者の人たちも呼ばれていて、多少の考え方の違いを超えて自助活動をまとまった力にしていこうとする考え方が出てきているのかと感じました。イベントの中心の女医さんも仲間の一人として紹介されて話していました。

 その後には誰でも発言できるように配慮された時間が一人1分ずつ持たれました。そこで発言に立った人は数人だけで多くはなかったので、香山も手を上げて話しました。グループの紹介の時間もあって、それも1分だったのですが、そこでまた福島お達者くらぶも地方都市のグループとしては最も古くから活動して25年になったことを話しました。

 そのようなプログラムが事前に具体的にわかっていたら、(以前に大阪で毎年行われていたフェスティバルのように)地方都市のグループももっと出てこれたのではないかと、その点は少し残念な気がしたのですが、それは今後に期待でしょう。

 さらに最後の1時間は分科会が4つくらい並行に持たれて、そこでは誰でもその一つに参加して一人ずつが発言できるようになっていたようなのですが、来年は福島お達者くらぶとしても何か他の人たちが提案するのと少し違った企画を提案するのはどうだろうか、と思いながら帰ってきました。(例えば、「福島お達者くらぶスタッフと一緒に考える家族への言葉のかけ方研究」なんていうのはどうかなと思います。)

 今回はスタッフ2人の参加でしたが、来年からも開催されたら、みんなも参加してみませんか。