福島お達者くらぶだより

 2017 1 1日発行 通算 82

 

あけましておめでとうございます。

 新しい年を皆様はどのように迎えておられるでしょうか。今年は世界の状況が少しでも落ちついてほしいと願いますが、皆様も毎日を穏やかに暮らせる年となるようにと祈ります。福島お達者くらぶは少しでもそれに役立つように、25年目の活動を変わることなく続けていきます。

 

<重要なお知らせ>

今月のミーティングについて

今月のミーティング(1月14日)は、(この会報の前号でもお知らせしましたが)大学入試センター試験のため県立医大の全体が閉鎖され、いつもの部屋が使えません。それでこの日だけは次のように大学外で行います。時間はいつもどおりです。

家族ミーティング会場: レストラン風の谷 電話024-548-0786

本人ミーティング会場: 蓬莱学習センター(集合は風の谷)

 

 これまで医大が使えない時には家族・本人合同ミーティングとして風の谷で行ってきました。しかし、本人の参加者から合同ミーティング、まして(たとえ聞かれないとしても)一般の人たちもいるところでのミーティングでは十分に話せない、との声が強くなってきました。それで、本人ミーティングは蓬莱学習センターで行うことにします。この場所の説明がなかなかに難しいので、本人の人たちも2時までに風の谷に来てください。そろったところでスタッフの車で移動します。本人でも遅れて風の谷に来られた人は、そのまま家族とのミーティングに参加していただくことになるかと思います。

 

 風の谷の場所は国道4号線の伏拝(ふしおがみ)交差点(旧4号との交差点・郡山方面から来る場合は医大を通り越して最初の信号)を旧4号の蓬莱団地の方に進み、すぐの信号の直後の右側への道を入ったところです。バスなら医大行き(あるいは医大経由二本松行き)で北谷地(桜台経由ならあさひ台)停留所のすぐ近くです。(コーヒーがおいしい、なかなかしゃれたレストランです。)

 2時までに医大(いつもの部屋のある看護学部棟の玄関)に来てもらえれば、車で案内します。

 このミーティングでは、少し離れた場所にはお達者くらぶではない方たちもお茶をしているかと思いますが、今までにも2回、入試のためにここで行ったときには、最初は少し周りが騒がしかったですが、話を聞かれてしまう可能性については、全く気にする必要はありませんでした。飲み物代は自分持ちですが、200円の参加費は無料とします。

 

 

摂食障害をめぐる専門職者が関わる組織

 摂食障害という難しい状態を病気と考えるかどうかは、病気だから治療すればよいのだと考える方が楽なら病気としておけばよいし、癖みたいなものでこれで日々をやり過ごして生きられているから良しとしておこうと思うならそうしておけばよいとも言えます。それでも食べ吐きは苦しいから少しでも楽になるなら医療に頼りたいし、医師としては何とかしてあげたいし、となると保険診療のためには病気としておく必要があります。

 そこで医師をはじめとする専門職者たちが関わることになるのですが、この数年、その組織を整備する動きが急速に進んでいます。どのような組織があるか、その現状などを紹介しておきます。ここで紹介するのは「日本摂食障害協会」と「摂食障害全国基幹センター+各地区の治療支援センター」およびその2つの設立を働きかけてきた「日本摂食障害学会」の3つです。

 

日本摂食障害学会

  この学会は心療内科医が中心になった厚生省(当時)の研究班から始まったものですが、学会に発展して昨年で20年、参加者は心療内科医に加えて精神科医はもちろん、心理士や看護師、養護教諭、管理栄養士などに広がっています。そこに自助グループの代表者などの当事者たちも参加したいと希望する人たちが出てきました。

 私(香山)は10年くらい前から参加しているのですが、その当時は学会の参加資格が専門職者に限るとされていました。それは、1970年頃に精神科関係の学会に患者さんたちの団体がなだれ込んで学術集会としての学会が成立しなくなったことがあった、そんなことが頭に残っているのでしょう。本人の人たちを信用していなかったのです。それで、2010年頃に自助グループの代表者の人たちが勉強のために参加を希望するようになった時、所属をどうしたものか、非常に悩んだ人たちが多い状況でした。そこで私は、講演会などで知り合った自助グループの人たちに、当時に在職していた福島県立医大の私の研究室の研究員としておけばよい、と伝えていました。今は自助グループの代表者の人が頑張ってNPO法人化して活動を広げているところもあって、そのような人たちは自分の団体名で参加されています。

 そのように摂食障害に苦しむ当事者の人たちの参加も見られるようになってきたのですが、しかし、信じられないことに、中心となってきた心療内科医の中には(アルコール問題についてはAAや断酒会という自助グループの役割を評価するのに)摂食障害については自助グループを全く意味のないものと考える人たちが今でもいます。私はそのような人たちに突っかかってきました(そのことを論文にしたこともあります)。

 それでも(精神科医だけでなく)心療内科医や心理士の中にも自助活動を理解して積極的に支援してくれる人もいて、私も勇気をもらっています。自助活動についての演題が(私以外にも)自助グループの代表者からも発表されるようになっていますし、自助グループについてのシンポジウムも行われました。昨年の学会では次に述べる日本摂食障害協会の紹介のプログラムに自助グループの人たちが招待されたりもするようになりました。

 

日本摂食障害協会

 学会は研究活動のための組織なので、摂食障害を巡る社会的な活動の主体となるべき組織として、日本摂食障害協会が設立されました。学会の中心的な立場にいる女性医師たちの主導で運動を展開してきたその設立の経緯や、まだまだ多い問題点については、お達者くらぶだよりの第80号(昨年7月発行)に書きましたので、詳しい状況はそのバックナンバーを読んでください。

 いずれにしても昨年に発足したばかり、具体的な活動はこれからの状態であり、そこに自助グループや家族会がどのように扱われ、本人たちがどのように関わることになるのか、見守っていかなければならないと思っています。

 

摂食障害全国基幹センターと各地区の治療支援センター

 国(厚生労働省)はいろいろな病気の先進的な治療や研究を、大学に任せるだけでなく、直轄のセンター(病院+研究所)を作って推進してきました。例えば、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センター、そして国立精神・神経医療研究センターです。それに加えて、治療が困難だったり社会的な問題となる個々の病気については、難病に指定するなどして特別に扱うことも行われ、その医療機関が指定されたりしているのですが、それには患者さんと家族がそれぞれの病気を専門とする医師たちと一緒になって国に働きかけてその指定を獲得してきています。

 摂食障害についても、中心となる医療機関が全くなくて、患者として受診してきた人たちを受け入れる医師たちもどのように治療するべきなのか戸惑うことも多いし、重症な人たちを紹介することのできるところもないために、日本摂食障害学会の中心的な医師たちが国に中心となるべきセンターの設置を働きかけてきました(残念ながら摂食障害では当事者・家族の力は弱くて十分な力になり得てなくて、医師主導ですが、かなり多くの署名を集めるなどの活動が行われてきました)。2年前にそれがようやくみとめられて、摂食障害全国基幹センターが国立精神・神経医療研究センターの中に置かれました。そして、各地区のセンターとなる施設が募集されたのですが、応じたのは3施設だけで、東北地方では東北大学病院の心療内科が宮城県摂食障害治療支援センターとなりました。それ以外は静岡県摂食障害治療支援センター(浜松医科大学精神科)と福岡県摂食障害治療支援センター(九州大学心療内科)です。

 しかし、残念ながら、この体制は非常に不十分と感じてしまいます。全国基幹センターを国立のセンターに置くのはそうすべきだとしても、その中心となる医師はもともと摂食障害を専門に扱ってきた人ではないし、テレビの番組で話しているのを聴いたところでは「拒食や過食を止めることからしか治療は始められない」と考えているようでした。

 しかし、人は強い生きづらさを抱えたときに何かをして生き延びる必要がある、それが人と話すことやふつうの飲み会や、カラオケとか旅行とかドライブ(時には暴走)とかでは得られないものだったときに、弱い人に対していじめたり暴力を振るうことで自分の存在(プライド)を守ろうとする人もいます。しかしそんなふうに他の人に向けられない心やさしい人は自分に向けて、拒食や食べ吐きになったりリストカットになったりする。それは間違いなく生き延びる手段であると私は考えます。その痛みを考えずに、ただ食べ吐きなどを止めたら、人はどうやって生きたらいいのでしょうか。「食べ吐きなんていいよ、食べ吐きでも腕を傷つけても、生き延びようよ」と言ってあげることが必要なときもあります。

 東北大学病院の心療内科についても、そこにかかっていた人たちから聞いてきたところでは、上に書いた私の考え方とだいぶん違っているようだと感じられます。摂食障害については、思春期前半のただただやせようとして生命の危険が生じている人たちと、お達者くらぶのミーティングに来る言葉にしようとするようになっている人たちとでは、必要な治療は全く違っています。だから、私の考え方が絶対に正しいと主張するつもりはありません。しかし、摂食障害のセンターを置いての治療に後者のことがあまり考慮されていないと感じられることが残念です。

 

おわりに

 本年(2017年)の2月末〜3月はじめ(227日〜35日)を世界摂食障害ウィークとして、いろいろな国でイベントが企画されているそうです。それに合わせて日本でも何かしようと日本摂食障害協会が企画するらしいという情報があります。自助グループや家族会も集まって何かしようということになるかもしれません。もしその具体的な計画が伝わってきたら、このお達者くらぶだよりの号外を出すか、ホームページに載せたいと思います。