福島お達者くらぶだより

 2025 1 1日発行 通算 114

明けましておめでとうございます。世界中が紛争の混乱のまま年を越しましたが、今年こそ世界が少しでも落ち着き、そして皆様にとって良い年になるようにと願います。

 

 福島お達者くらぶのホームページのURL(アドレス)が次のように変わりました。

https://www.fmu.ac.jp/home/gim-fm/fotassya3/

 これは、今までこのホームページが掲載されていた福島県立医大の地域・家庭医両学講座が組織の改変で総合内科・総合診療学講座と名称が変わって、そのURLが変更されたためです。「福島お達者くらぶ」で検索すると、今までどおり問題なく開けます。

 

 

摂食障害は甘えている?

 摂食障害はやめたくてもやめることは困難な依存症です。依存症だと言っても、アルコール・薬物などのハードな依存症に比べれば甘い世界です。実際、アルコールや薬物依存はやめる他ないのと違って、食べることは止めることはできず、何とか食べなければなりません。

 そして、摂食障害なんて甘えだと考える人は知識人にもたくさんいます。しかし、甘えなんかでは決してありません。苦しいことには何も変わるところはありません。本当に苦しいのです。しかも、その苦しさをアルコールや薬で逃れたり、あるいは暴力やいじめなどで外に向けて放出して生きのびる、そうやって他の人たちに迷惑をかけることを良しとできずに、すべてを自分に向けて、リストカットと同じように自分の身体を傷つけることで生きのびようとしているのです。甘えられないからこのような方法にならざるを得ないのです。甘えられる人は摂食障害にはならず、甘えられないから摂食障害などになります。

楽に生きられるようになる = 依存症からの回復

 そのように甘えられない人たちに、生き延びるためには過食やリストカットなんかしてもよい、それで生き延びよう、生きてさえいれば「生きててよかったと言えるときが来る」と私は言います。そんなことは証明のしようがないけれど、「生きててよかった」と言ってくれた人たちがたくさんいるのです。

 そうは言っても、苦しい今を早く抜け出し、少しでも楽に生きられるようになりたい、なってほしい。では、生き延びる、そして少しずつでも楽に生きられるようになっていくためにはどうしましょうか。現実に摂食障害や様々な依存症、嗜癖行動に苦しんでいる人たちが楽に生きられるようになって行くには、どうすればいいのでしょうか。

 依存症は完全に治ることはなく、苦しい状況に陥ると容易に再発することになってしまいますから、依存症の症状から離れて楽に生きられるようになることを「治癒」とは言わず、「回復」と呼びますが、どうすれば回復へと踏み出していけるのでしょうか。

 アルコールや薬物などのハードな依存症では、まず最初に大切なのは、自分が陥って生活を困難にしている状態が依存症であることを理解し、それを認めることです。しかしアルコール依存の人たちは自分は依存症だということを認めようとしないことが多く、それは否認の病といわれるくらいです。そのように「自分は依存症なんかじゃない」と否認している限り、どんどん深みにはまるばかりで、決して回復することはありません。

 摂食障害でも、過食症では食べたいという欲求の誘惑は強く、何とか頑張ってしばらく止めていても、少しでも不安やつらさがあるとすぐに食べることに引き戻されるのです。拒食も、食べることはほっそりとした体という自分のプライドを捨てることになるから、認められません。

 そして、これは自分の努力が足りないからだと考えていたり、自分の力で止められる、止めなければならないと考えている人たちが多い。しかしこれも依存症という病気の状態だから止められないのだと、まずは認めるところから回復が始まります。

 それを依存症と認めたところで必要になるのは、よくなりたいと心から願うことです。回復への強い思いがない限り、誰も助けてあげることはできません。「自分はよくなりたい、よくなるんだ」と強く意識して、いろいろなところから差し出されている手に自分からつかまらない限り、水に溺れてもがいているような状態から岸に這い上がることはできないのです。

 その手として、この福島お達者くらぶもありますし、他にも自助グループなど、いろいろと手が差し出されています。それにつかまってみてください。