≡福島お達者くらぶだより≡
2022年
4月 1日発行 通算 第103号
春も本番になりました。これから次々に花が咲いていきます。サクラに続いてモモ、リンゴ、ナシと果樹園は花盛りになります。スミレ、カタクリといった地表の地味な花も群生するととても素敵です。心も少し明るくなるでしょう。
しかし、ウクライナでの戦争は遠い世界のこととしても、身近なところでコロナウイルスの感染の第6波が治まりきらないうちにまた増加に転じています。
第5波までは食事や飲み会で拡がるのが多かったのですが、第6波はそれとは違って、ワクチン接種を受けていない保育園や小学校の子供たちに拡がり、そこから家族へと広がったものでした。しかし、第6波のまん延防止措置がようやく明けたとたんに、感染制御の中心たるべき福島県立医大の教員・職員・学生たちが数十人のパーティーをやってクラスターが発生してしまったように、また飲食でも広がろうとしてきています。歓送迎会や花見の季節で、気の緩みが起こってしまっているのだと思わざるを得ません。サッカーやプロ野球の試合などに観客数の制限がなくなったことも、これからさらに感染を拡大させないか、心配です。
どうぞそれぞれが自衛のために、三密を避け、マスク・手洗いなど、十分な感染予防を行って過ごしてください。
今回の会報では、摂食障害にも関係するダイエットのことをお伝えします。
ここに書くのは、拒食症、過食症などに苦しむ人たちではない、一般の人たちに向けての講演で話したことの一部です。摂食障害の人たちの食べる・食べない・太る・痩せることは、ここに書くことでは論じきれない深い心の問題がありますが、ふつうの人たちの抱えがちな問題を理解しておくのも意味があるかと思います。
食べ過ぎとダイエット
人間は調理・味付けという文化を持つことになって食べ物がおいしくなり、さらに現代では砂糖をふんだんに使うことが可能になったため、食べることが快楽になりました。それゆえ、食べるには困らない状況では、人は放っておくとつい食べ過ぎてしまいます。さらに、ストレスが強い現代社会では、そのストレスの解消に食べることの快楽が無意識のうちに利用されがちです。あるいは、「やけ食い」などと称して、意識的にも利用されます。食後のデザートは「別腹」なんて言い訳も考えます。
そして、食べすぎると「死の四重奏」とも言われる肥満・高血圧・動脈硬化・糖尿病など生活習慣病を引き起こして、心筋梗塞や脳血管障害(出血・梗塞)などで寿命が短くなったり、一回のアタックで死なないまでも生活の質(Quality of Life)が大きく低下するため、私達にはどのようにどの程度に食べればよいという学習が必要です。人間にとって食べるという行動は、もはや本能行動ではなく、学習行動です。生活習慣病については、若い人たちにはあまり問題にならないでしょうが、その人たちも中高年になったときに、若いときからの食習慣の影響が出てきます。
(家で飼われている犬や猫には、異常に太っておなかを床や地面にすりつけてしか歩けないのを見たりしますが、あれはストレスによる食べ過ぎなのでしょうか。犬などは歩かせる、走らせる、その方が彼らも喜ぶと思うのに、外では抱いたり乳母車で移動しているのを見ると、何が幸せか考えてしまいます。)
肥満は美容上の問題だけでなく、生活習慣病の危険が迫るようになった場合は、ダイエットで体重を落とす必要があります。その場合、○○ダイエットと名付けられているような方法はほとんど失敗に終わります。空腹で血糖値が下がって、摂食中枢が強く刺激され、それに負けて食べてしまうことが多いからです(それに負けない非常に強い意志の持ち主は、拒食症に陥って、身体がもっと危険な状態になりそうです)。そこで食べると、リバウンドで体重が元に戻ったとしても、体重が減少していくときには脂肪と筋肉が減少していくのに、戻る体重の95 %は脂肪で、脂肪は酸素や栄養の消費が少ないから、よけいに太りやすくなります。
運動はどうでしょうか。運動で消費するカロリーは、体重60 kgの人が時速10 km(ふつうの人にはかなりきついスピードです)で走った時に消費するのは1分間に10 kcal、30分走って300
kcalで、せいぜいケーキ1個分です。よほど強い運動を時間をかけてしないと、カロリー消費の目的は達せられません。
しかし、運動で筋肉が増えると、筋肉は常にエネルギーを消費しているので、基礎的なカロリー消費量が上がる効果があります。筋肉については、座ってしている仕事を1日2時間くらい立って行うことにすると、長期的には肥満抑制効果があるという報告もあります。
それではどのようにダイエットしていくのがよいでしょうか。推奨されるのは夕食後(風呂に入るとき)と朝起きてトイレに行った後に体重を量る方法です。夕食で増えた体重は、寝ている間に尿と呼気から水を失っていって朝に最も低くなります。それをグラフにプロットしていくと、少しだけ食事量を減らした効果が2〜3週間ではっきり目で見えるようになって、ダイエットに励みがつきます。(ただし、この目的には50 g単位で測れる少し精巧な体重計が必要で、それは少し高価ですが、自分の未来への投資になるでしょう。)
その方法で順調に体重を落とした人の例を下の図に示してみます(ここから先はもっとゆっくりしか落ちなかったのですが)。
ただ、毎日いつも同じ条件で測っても、特に過食してなくても1kgくらいの体重の増加が起こることがあって、それはほとんど体内の水の量の変化です。たとえば塩分の多い食事を取ると浸透圧の影響で水が体内にとどめられて、体重が増加します。それは尿量を増やして元に戻るのですが、その調節はホルモンを介するので時間がかかるのです。特に食事量が変わらないのに体重が変化したときには、一喜一憂しないようにしてください。