リュージュ(龍樹)の伝言

第19回:僕らは ふくしまが好き

2013/03/18

  あれが阿多多羅山(あたたらやま)、
  あの光るのが阿武隈川。

  ここはあなたの生れたふるさと、
  あの小さな白壁の点点があなたのうちの酒庫(さかぐら)。
  それでは足をのびのびと投げ出して、
  このがらんと晴れ渡つた北国の木の香に満ちた空気を吸はう。
  あなたそのもののやうなこのひいやりと快い、
  すんなりと弾力ある雰囲気に肌を洗はう。

              ~『樹下の二人』から抜粋. 大正12年3月. 高村光太郎. 『智恵子抄』~

 

 3月16日土曜日の福島県は、久しぶりに明るい春の光があふれていた。郡山から三春へ向かう道すがら、雪を頂いた安達太良山の峰々が青空に映えて美しく眺められた。『智恵子抄』のこの詩がうたっている季節は冬のはじめであるが、この日の空気も、早春の暖かい日差しの中に遠く雪山から運ばれてきた「ひいやりと快い」空気が適度にブレンドされていて「すんなりと弾力ある雰囲気」をかもしだしていた。

 

 この日は、当講座の後期研修医向けの月例勉強会であるFamily Medicine Resident Forum(FaMReF「ファムレフ」と呼んでいる)が、「滝桜」で有名な田村郡三春町にある町立三春病院を会場に開かれた。そして、FaMReF終了後には郡山市内のホテルへ移動して、当講座の後期研修プログラム「家庭医療学専門医コース」の第4回目になる後期研修修了祝賀会が開催された。

 

 毎年この後期研修修了祝賀会は心温まるイベントになるが、今年も特別に素晴らしい日となった。今年は若山隆君、佐藤寿和君、早坂啓伸君の3名の修了を祝った。特筆すべきは、この3人の出身地、卒業した大学、初期研修をした研修病院、そのどれもが福島県外であるということだ。家庭医療の後期研修を受けるために福島県に来てくれたのだ。そして、4年間の後期研修期間のちょうど真ん中で東日本大震災とそれに続く原発事故に遭遇し、その後はそれぞれの研修場所で献身的な働きをしてくれたのである。まずそのことに深く感謝したい。

 

 こうした節目の機会にいつも実感することだが、北海道でも福島でも、とても素敵な人たちが家庭医療を学びに私のところへ来てくれている。本当にありがたいし、そのきっかけを作れた自分のことを幸せに思う。

 

 素敵な人たちが集まるその結果として、それぞれ個性豊かな優れた指導医へと成長し、それぞれに強みを生かして、地域の人たちや医療機関と連携しつつ、また診療・教育の拠点が増えていく。各地で地域の実情に合わせた特色ある家庭医療とその教育を展開しつつ、講座全体としてハーモニーが生まれる。そして新しい後期研修医は、各自の事情と学習目標に応じて、セッティングが異なる複数の拠点と指導医を組み合わせて選択して学ぶことができる。これが、当講座の家庭医療学専門医コースの特長だ。

 

 祝賀会は、家庭医療学専門医コース第二期修了生で現在喜多方市 地域・家庭医療センターのセンター長 高栁宏史君のギター伴奏に合わせてみんなでこの歌を合唱してお開きとなった―。

 

  明日から何かがはじまるよ ステキな事だよ

  明日から何かがはじまるよ 君のことだよ

 

  I love you baby ふくしま I need you baby ふくしま

  I want you baby 僕らは ふくしまが好き

          ~『I love you & I need you ふくしま』から抜粋. (2011年)作詞:山口隆~

 

 



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