リュージュ(龍樹)の伝言

第32回:英国派遣

2013/10/03

 今日から英国家庭医学会(RCGP: Royal College of General Practitioners)の年次学術大会(Annual Primary Care Conference)が開催される。今年の開催地はイングランド、北ヨークシャーのHarrogateである。この『伝言』の第2回として、昨年スコットランドのグラスゴーで開催されたRCGP年次学術大会のことを書いてからもう1年近くが過ぎたことになる。

 

 残念ながら今回私は参加できないが、RCGPと日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA: Japan Primary Care Association)との正式な交流事業「日英プライマリ・ケア交換留学プログラム」が今年度から始まり、そのパイロット事業の一環として、公募して選抜された3名の若手家庭医をJPCAとして正式に英国に派遣している。

 

 嬉しいことに、そのうち2名は、当講座の家庭医療後期研修を修了してJPCA認定家庭医療専門医資格を取得した高栁宏史君(当講座助手)と増山由紀子さん(大井協同診療所)である。それにJPCA若手医師部会代表の吉田伸君(飯塚・頴田家庭医療プログラム)を加えたトリオが「日本代表」なので、送り出す側は安心だ。

 

 このパイロット事業では、本年5月にJPCAがRCGPの若手家庭医5名を日本へ招待し、仙台で開催されたJPCAの第4回学術大会に参加してポスター発表してもらったり、全国各地(北海道家庭医療学センター、福島県立医科大学、地域医療振興協会、三重大学)の家庭医療後期研修プログラムがそれぞれホスト役となって彼らに研修の現場を見学してもらった。

 

 今回は、RCGPの若手国際委員会(JIC: Junior International Committee)で前回5月に来日したメンバーが中心となって受け入れ準備をしてくれた。JPCA国際キャリア支援委員会メンバーで英国Leeds在住の澤憲明先生も現地での受け入れに大活躍してもらっている。さらにありがたいことに、RCGPのブロック支部に相当するWest Scotland Facultyが、日本人家庭医3名のために学術大会参加費を寄付してくれた。RCGPのJIC委員長は、今年5月に来日して福島県内各地に滞在した Robin Ramsay先生である。きっとスコットランド出身の熱血漢Robinが、日本で楽しい経験ができたことに恩返しをしようと奔走してくれたのだと思う。

 

 世界では若手家庭医の交流が盛んで、ヨーロッパでは「 The Vasco da Gama Movement (VdGM)」というプロジェクトで交流が振興されており、本年6月にプラハで開催されたWONCA世界学術総会でも、VdGM が主催した発表やワークショップが多数行われていた。WONCAで日本が所属するアジア太平洋地域にもかつて同様なプロジェクト 「The Rajakumar Movement 」があり、これからはその再活性化と世界の他地域ともネットワークを広げることが望まれる。

 

 今回英国に派遣された3人が、将来こうした活動でもリーダーシップを取ってもらえることを私は期待している。素晴らしい体験をしつつ英国と世界の家庭医たちとの交流を広め(深め)、無事元気に帰国してほしい。彼らの報告は、JPCAの学会誌と来年5月岡山で開催される第5回学術大会で正式に発表される予定だ。



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