リュージュ(龍樹)の伝言

第35回:冬季オリンピック

2014/02/05

 ソチ・オリンピック開幕が目前だ。詳細は伏せるが、今回の冬季オリンピックに家族が若干関係しているため、日本代表選手団公式スポーツウェアのレプリカモデルのトレーニングジャケットをお正月から親子で着ている。

 

 名字の漢字が同じなのでよく尋ねられるが、日本代表選手団主将の葛西紀明選手とは家族・親戚のつながりはない。彼は「かさい」、こちらは「かっさい」で家が異なる。ただ、あまり多い名前ではないので、どこかで家族のルーツが共通になっているかもしれない。それはともかく、葛西選手のことは応援している。ぜひ頑張って活躍してほしい。

 

 ところでこのジャケット、まだあまり見かけないが、ソチ・オリンピックが始まると、日本代表選手がインタビューを受ける時に着用することになっているそうだ。ネイビーブルーの地に背中にはゴールドで大きく「JAPAN」、そしてその下に「OLYMPIC TEAM 2014」と書かれている。屋外でも室内でもダウンジャケットとして着れるように3ウェイになっており、気に入っている。

 

 オリンピックと言えば、2012年夏のロンドン・オリンピックの開会式が思い出される。英国の誇るものが紹介された中でひときわ素晴らしかったのがNHS(英国医療サービス)だった。NHSに実際に関わる人たちが一生懸命ちょっとユーモラスなダンスを披露した。昨年日本プライマリ・ケア連合学会で招待した若手英国家庭医の中にもそのダンスチームのメンバーがいた。一生懸命練習したそうだ。

 

 翻って、自分は日本の医療制度を世界に誇れるかを考えてみる。『医療大転換』を書いた私なので、答えはやはり「ノー」である。『医療大転換』のあとがきにも書いたが、日本には長い歴史に育まれた優れた文化と伝統がある。人の気持ちを察し、手当てし、癒す。繊細な心遣いと感謝。食と自然の調和。生活に根ざした身体の鍛練。お年寄りを尊敬し、子どもを愛する。そして忍耐強い。こうした素晴らしい国民の資質がプライマリ・ケアの整備に生かされて、優れた二次ケア、三次ケアと連携して成果を発揮する時に、日本の医療は初めて世界に冠たるものとなるだろう。元英国家庭医学会会長のRoger Neighbour先生が言うように、「理想的な医療制度を持っている国は地球に存在しない」のである。NHSにも課題がある。ただ、現状の評価をしっかりと行ってその課題の解決へ向けて具体的に改革を続けて結果を出していく姿勢は見習うべきだ。

 

 オリンピックのような国際的な交流の意義とは何か。改めて考えてみたい。ちょうどそれを考えるには絶好のタイミングで、世界中の家庭医学会が加盟するWONCA(世界家庭医機構)会長のMichael Kidd教授が来週来日する。彼はオーストラリア、アデレードにあるフリンダース大学の医学、看護学、助産学を抱える健康科学部のExecutive Deanでもある。 http://www.globalfamilydoctor.com/AboutWonca/TheWONCAPresident.aspx

http://www.flinders.edu.au/people/michael.kidd

 

 福島県地域医療支援センター(保健福祉部)の助成を受けたこの招聘によって、「世界の家庭医」「家庭医のキャリア」「アカデミック家庭医」「地域での多職種連携」などをテーマにフォーラムを多数開催する。オープンなフォーラムなので、当講座のホームページにある案内をご覧の上、ぜひ多くの人に参加してもらいたい。

 

 冬季オリンピックといえば、映画『13 jours en France(フランスの13日間)』(クロード・ルルーシュ監督、1968年、フランス映画、邦題『白い恋人たち』)をこの前、久しぶりに観た。同年に開催されたグルノーブル冬季オリンピックの記録映画だ。この映画を最初に観たのはたぶん大学生の時だったと思う。その時は競技の映像に目を奪われていたが、今回は、フランシス・レイ作曲の流麗でいてメランコリックな旋律に載せて描かれる、オリンピックを準備するグルノーブル地方の学生や子どもたちを含めた地元の人たちの姿が特に印象的だった。まだ機械力やハイテク機器もなく、ゲレンデの整備も人力で行っていた。聖火も松明とあまり変わりない。あれから46年も経ったのだ。

 そうやって世界との交流が「手作り」で行われた時代を私たちは忘れてしまうのだろうか。

 その温もりと純真さを。



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