リュージュ(龍樹)の伝言

第47回:99歳

2015/07/06

 誕生日を祝ってもらった。何と満99歳!

 

 実は、2人合わせて、である。北海道家庭医療学センター理事長の草場鉄周先生と私。彼が7月1日、私が七夕前日の7月6日生まれ。それを7月4日夜に祝ってもらった。十勝更別村のさらべつカントリーパークがその舞台だった。今年から始まった、北海道家庭医療学センターと福島県立医科大学 地域・家庭医療学講座とで毎年交互に北海道と福島に招待し合って開催する専攻医向け勉強会Family Medicine Resident Forum(通称FaMReF「ファムレフ」)特番の歴史的な第1回が開催されたのだ。

 

 その初日の夕食会で久しぶりのジンギスカンと十勝ワインを堪能していたら、期せずして会場が暗転し、材料の質の高さと美味しさで有名な更別のお菓子屋さんのバースデー・ケーキがハッピバースデーの合唱とともに運ばれてきた。そしてそのケーキの到着点は?と眺めていたら、たまたま並んで座っていた(もしかしたらそのように仕組まれていたのかもしれない)草場君と僕のもとだった。山田康介君の笑顔がある、松井善典君の笑顔もある。彼ら北海道家庭医療学センターの第2世代目をしっかり支えてくれた仲間たち。とても嬉しかった。

 

 おそらく彼らは、日本の家庭医療の歴史の中で、若くして最も苦労した家庭医のリーダーたちだ。でも、その苦労が報われることをも体験できた幸福な人たちなのだ。たゆまず、諦めず、志を持って困難な旅を続けてきてくれた彼らに賞賛と尊敬のエールを送りたい。そして彼らのもとで家庭医・総合診療専門医を目指している第3世代、さらに福島の第2世代の若者たちが屈託無い笑顔で祝ってくれた。彼らの顔は、(みんながかなりアルコールを飲んで顔を紅らめていたからだけではなく)日本のプライマリ・ケアの夜明けから登り続けて十勝の大地に恵みを与える午前の太陽のように輝いて見えた。

 

 来年2016年で、北海道家庭医療学センターは設立20年を迎える(ということは、福島医大 地域・家庭医療学講座は開講10周年だ)。2人分なので倍の40年を来年101歳になる2人の年齢の合計から引くと、61歳だ。こんなふうに考えると、いまさらながらに驚くのは、かたや30歳代で地域を基盤とする家庭医養成の最初のセンターを作ってしまい、かたや20歳代でまだ日本の家庭医療の将来もおぼつかない時代にその道に飛び込んできてくれたことだ。山田康介君も含めて私たちは、3人とも向こう見ずだったのかもしれないが、勇気はあったのだろう。

 

 このFaMReFでは、「家庭医は地域に住むべきか否か」のディベート、北海道と福島の専攻医によるケースをもとにした家庭医療学的振り返り、そして私が北海道時代にも行っていた「正調」シネメデュケーション(映画の一部をみんなで観ながら自由に意見を出し合って人間について洞察を深める教育モジュール)を行った。不思議なことに、初対面の専攻医と指導医が少なくないにもかかわらず、ディスカッションは深まった。その理由は、家庭医療学の原理・価値観についての基本的な(しかも深い)理解を共有しているからにちがいない。北海道と福島の指導医たちもそのことに驚き、そして満足したことだろう。

 

 FaMReFの2日目は、澄み切ったピュアな大気と晴天(私は「十勝晴れ」と呼んでいる)に恵まれて、みんなでパークゴルフを楽しんだ。ともに学ぶだけでなく、このように交流の機会も随所に用意された素晴らしいフォーラムの準備・運営をしてくれた企画責任者中島徹君はじめ北海道家庭医療学センターのみなさんに心から感謝したい。どうもありがとう!来年は、福島県の喜多方で彼らを迎える予定である。北海道と福島の両方の専攻医にとって、これからの1年間の学びに楽しみな目標ができたことを指導医たちとともに喜びたい。



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