計画研究 – 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 https://sips-jp.com/demo/acs 文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究:「行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構」(略称:適応回路シフト)に関するサイトです Tue, 28 Jun 2016 12:54:47 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.7.2 筒井 健一郎(東北大学) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a03/246/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a03/246/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:42:41 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=246 「情動・注意の制御に関わる大脳皮質間神経回路の適応動態」

経頭蓋磁気刺激(TMS)は、頭蓋上に置いたコイルに電流を流してコイル周囲に急激な磁場の変化を起こすことによって、間接的に脳内に微弱な電流を流す手法である。刺激パルスの頻度によって、神経活動を促進・抑制の双方向に操作することが出来る。われわれのグループでは、TMSを世界に先駆けて霊長類の認知機能の研究に適用し、研究をすすめており、これまでに、前頭連合野への抑制操作によって、破壊実験に相当する程度の、重篤な短期記憶の障害を誘発できることを検証している。TMSの方法論的な利点は、完全に非侵襲的な]]> 「情動・注意の制御に関わる大脳皮質間神経回路の適応動態」

経頭蓋磁気刺激(TMS)は、頭蓋上に置いたコイルに電流を流してコイル周囲に急激な磁場の変化を起こすことによって、間接的に脳内に微弱な電流を流す手法である。刺激パルスの頻度によって、神経活動を促進・抑制の双方向に操作することが出来る。われわれのグループでは、TMSを世界に先駆けて霊長類の認知機能の研究に適用し、研究をすすめており、これまでに、前頭連合野への抑制操作によって、破壊実験に相当する程度の、重篤な短期記憶の障害を誘発できることを検証している。TMSの方法論的な利点は、完全に非侵襲的な脳活動の操作法であり、同一個体で刺激場所を変えながら繰り返し実験が行えること、また、神経活動の促進・抑制を自在に行えることである。本課題では、このTMSを方法論的な柱として、その利点を活かしながら研究を展開する。まず、TMSによって前頭葉の局所的な脳活動を操作することによって、全脳の神経ネットワーク動態に変化を引き起こし、注意や情動のサル障害モデルをつくる。障害の性質や程度は、適切な行動課題をデザインし、多角的に評価する。そして、正常時、異常時、および、機能の回復期の広範囲な脳活動を、皮質表面電位(Electro Corticogram, ECoG)や、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)などによって計測する。ECoG 計測は伊佐グループより、脳機能イメージングは尾上グループより、全面的な支援・協力をいただきながら進める。取得したデータは、コンピュータによる大規模解析を行って、注意や情動機能の計算論的モデルの構築を目指す(小池グループからの支援・協力)。構築されたモデルの検証、およびさらなるモデルの作り込みのため、5年間の研究期間の後半には、分子生物学的手法を用いて経路選択的阻害を行う(小林グループからの支援・協力)。また、大規模神経回路の動態と局所的な神経現象との関係を明らかにするために、前頭連合野の局所回路の解析も行う(礒村・藤山グループとの連携)。この研究により、前頭連合野を中心とした、注意や情動を司る大規模ネットワークの動態の解明、および、その異常に基づくさまざまな神経・精神疾患の発症機序の理解が進むことが期待される。

 
最近の主要論文
1. Tsutsui KI, Grabenhorst F, Kobayashi S, Schultz W (2016) A dynamic code for object valuation in prefrontal cortex neurons. Nature Communications, in print
2. Tsutsui KI, Hosokawa T, Yamada M, Iijima T (2016) Representation of Functional Category in the Monkey Prefrontal Cortex and Its Rule-Dependent Use for Behavioral Selection. Journal of Neuroscience 36: 3038-3048.
3. Oyama K, Tateyama Y, Hernádi I, Tobler PN, Iijima T, Tsutsui KI (2015) Discrete coding of stimulus value, reward expectation, and reward prediction error in the dorsal striatum. Journal of Neurophysiology 114, 2600-2615.

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相澤 秀紀(広島大学) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a03/244/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a03/244/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:42:03 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=244 「ストレス対処行動におけるモノアミン制御経路の障害と回復」

拘束や恐怖等のストレス環境におかれた動物は回避や無動といった受動的行動もしくは攻撃・探索などの能動的行動のいずれかを二者択一的に選択することが知られています。例えば、本来マウスは他のマウスに対して積極的に近づき探索行動(能動的行動)をとることが知られています。しかし、大型のマウスから以前に攻撃を受けた敗北ストレス経験を経るとマウスは探索行動から回避行動(受動的行動)へと行動パターンを変化させ、大型マウスへはめったに近づかず行動量も減少してしまいます。このようなストレス下における

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「ストレス対処行動におけるモノアミン制御経路の障害と回復」

拘束や恐怖等のストレス環境におかれた動物は回避や無動といった受動的行動もしくは攻撃・探索などの能動的行動のいずれかを二者択一的に選択することが知られています。例えば、本来マウスは他のマウスに対して積極的に近づき探索行動(能動的行動)をとることが知られています。しかし、大型のマウスから以前に攻撃を受けた敗北ストレス経験を経るとマウスは探索行動から回避行動(受動的行動)へと行動パターンを変化させ、大型マウスへはめったに近づかず行動量も減少してしまいます。このようなストレス下における行動パターンのシフトは動物の環境適応に必須ですが、その神経基盤は未だ不明なままです。

これまでの研究から脳幹部に存在するドーパミンやセロトニンなどのモノアミン産生細胞の活動パターンがストレス対処行動のパターンと相関することが示唆されています。最近、我々のチームはモノアミン産生細胞の活動制御を担う手綱核という脳部位に注目し、その神経活動を人為的に増加させた動物が慢性ストレス下における過剰な受動的なストレス回避行動を示す事を見出しました。これらの結果は、モノアミン産生細胞の活動制御がストレス対処行動における神経回路シフトに関与する事を示唆しています。

このような事実を背景に、本研究ではストレス対処行動がシフトする際の神経回路網動態及びその障害からの回復機構解明を目指します。具体的にはストレス対処行動においてモノアミン産生細胞の活動制御にあたる脳領域を神経経路特異的な遺伝子操作を用いて同定し、それらのストレス対処行動における活動動態を大規模神経活動測定により解き明かします。また、ストレス体験を経て変化する神経回路動態に対して光遺伝学及び化学遺伝学プローブと行動解析を組み合わせ、ストレス障害からの回復過程に関与する神経機構の解明に迫ります。

 
最近の主要論文
1. Cui W, Mizukami H, Yanagisawa M, Aida T, Nomura M, Isomura Y, Takayanagi R, Ozawa K, Tanaka K, Aizawa H. Glial dysfunction in the mouse habenula causes depressive-like behaviors and sleep disturbance. J Neurosci 34:16273–16285. 2014
2. Aizawa, H., Yanagihara, S., Kobayashi, M., Niisato, K., Takekawa, T., Harukuni, R., McHugh, TJ., Fukai, F., Isomura, Y., Okamoto, H. The synchronous activity of lateral habenular neurons is essential for regulating hippocampal theta oscillation. J Neurosci 33:8909-8921. 2013
3. Aizawa H, Kobayashi M, Tanaka S, Fukai T, Okamoto H. Molecular characterization of the subnuclei in rat habenula. J Comp Neurol. 520:4051-4066. 2012

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伊佐 正(京都大学/生理学研究所) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a03/242/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a03/242/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:41:25 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=242 「脳・脊髄損傷後の機能回復過程における神経回路の動的変容」

環境の変化に適応するための脳の大規模回路での機能再編機構に興味があります。このような大規模な再編が顕著に起きる最も典型的な事例は脳や脊髄損傷後の機能回復過程です。ひとつは、マカクザルでの頚髄レベルでの皮質脊髄路の損傷です。この場合、訓練によって数週間で手指の巧緻運動が顕著に回復しますが、その際に回復初期から回復安定期にかけて大規模な神経回路の再編が脊髄だけでなく、大脳皮質の運動関連領野、さらには側坐核などの辺縁系と運動関連領野を巡る回路でも起こります。また、一次視覚野損傷後、

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「脳・脊髄損傷後の機能回復過程における神経回路の動的変容」

環境の変化に適応するための脳の大規模回路での機能再編機構に興味があります。このような大規模な再編が顕著に起きる最も典型的な事例は脳や脊髄損傷後の機能回復過程です。ひとつは、マカクザルでの頚髄レベルでの皮質脊髄路の損傷です。この場合、訓練によって数週間で手指の巧緻運動が顕著に回復しますが、その際に回復初期から回復安定期にかけて大規模な神経回路の再編が脊髄だけでなく、大脳皮質の運動関連領野、さらには側坐核などの辺縁系と運動関連領野を巡る回路でも起こります。また、一次視覚野損傷後、視覚的意識が障害されるにもかかわらず、盲になった視野の対象に対して上肢を伸ばす、視線を向けるといった行動が可能であるという「盲視」という興味深い問題についても、サルを用いて研究してきました。この場合は外側膝状体から一次視覚野に至る経路に代います。このような現象をこれまではPETなどの脳機能イメージングとムシモルなどを用いた可逆的機能阻害法を組み合わせて因果律を実証するかたちで進めてきました。今回の新学術研究「適応回路シフト」ではこれまでのパラダイムをさらに一層進めて、全脳型皮質脳波(ECoG)電極とMRIを組み合わせたような大規模神経活動記録とそれによって得られるビッグデータを解析して因果性を抽出して仮説を立てることと、脳科学研究戦略推進プログラムで小林和人先生、渡邉大先生と共同で開発したウィルスベクター2重感染法による経路選択的伝達阻害法を組み合わせることで、これらの大規模な神経回路の機能シフトが起きる「メカニズム」に迫りたいと考えています。特に、ウィルスベクターを用いた特定回路の機能操作法は今後重要な鍵となると考えており、現在も日進月歩で技術改変を行っており、最近では従来の破傷風毒素の発現による神経伝達阻害だけでなく、チャネルロドプシンをウィルスベクターのみを用いて経路選択的に発現させ、経路選択的光遺伝学的活性化にも成功しました。このようにして、本班での研究により、これまで「群盲象を撫でる」と言われても仕方のなかったような脳科学に大きなパラダイムシフトを引き起こしたいと考えています。

 
最近の主要論文
1. Sawada M, Kato K, Kunieda T, Mikuni N, Miyamoto S, Onoe H, Isa T, Nishimura Y (2015) Function of nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science, 350: 98-101.
2. Kinoshita M, Matsui R, Kato S, Hasegawa T, Kasahara H, Isa K, Watakabe A, Yamamori T, Nishimura Y, Alstermark B., Watanabe D, Kobayashi K, Isa T (2012) Genetic dissection of the circuit for hand dexterity in primates. Nature, 487: 235-238.
3. Nishimura Y, Onoe T, Morichika Y, Perfiliev S, Tsukada H, Isa T (2007) Time-dependent central compensatory mechanism of finger dexterity after spinal-cord injury. Science, 318: 1150-1155.

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藤山 文乃(同志社大学) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a02/240/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a02/240/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:40:42 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=240 「運動学習の獲得と実現に関わる神経回路の構造基盤と機能変化」

運動学習においては、試行錯誤しながらそのスキルを獲得する初期の時期(獲得期)と、習熟した後にそのスキルのさらなる上達のための時期(熟練期)が存在する。最近この運動学習の過程には、線条体の異なる領域間での機能シフトが関与するという報告がある (Yin et al., 2009)。 この線条体領域は大脳皮質の異なる領野を反映したものであるが、大脳皮質—基底核—視床ループを規定している要因には、他に大脳皮質の層構造、線条体のストリオソーム/マトリックス構造、視床の亜核、およびこの三要素の相互関係などが報告されており、

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「運動学習の獲得と実現に関わる神経回路の構造基盤と機能変化」

運動学習においては、試行錯誤しながらそのスキルを獲得する初期の時期(獲得期)と、習熟した後にそのスキルのさらなる上達のための時期(熟練期)が存在する。最近この運動学習の過程には、線条体の異なる領域間での機能シフトが関与するという報告がある (Yin et al., 2009)。 この線条体領域は大脳皮質の異なる領野を反映したものであるが、大脳皮質—基底核—視床ループを規定している要因には、他に大脳皮質の層構造、線条体のストリオソーム/マトリックス構造、視床の亜核、およびこの三要素の相互関係などが報告されており、この複雑な回路網の中で“真の機能領域”を見抜く必要がある。研究代表者はこれまで単一神経標識など遺伝子工学を取り入れた形態学的手法を用いて、大脳皮質—基底核—視床ループが、点対点もしくは部位毎の整然とした中継によるわけではないことや、従来の直接路・間接路スキーム(DeLong仮説)との矛盾を指摘してきた。

本研究班は連携研究者(苅部)と連携して、形態学と電気生理学的手法を組み合わせ、新しい大脳皮質—基底核—視床回路を解明し、その機能性を検証する。また、連携研究者(高橋)は、Brain-Machine Interface (BMI)を用いた齧歯類の脳におけるセルアセンブリの可塑的変化の研究を行ってきている。ここで蓄積されたノウハウを活かして、運動学習中の各時期におけるラットのマルチニューロン記録の比較と、脳深部刺激法(Deep Brain Stimulation: DBS)や光遺伝学操作によるこの神経回路への影響を動的に解析する。

また、この回路を細胞種特異的に操作するためには、各ニューロンの生化学的な特性や、投射先の軸索終末が放出する神経伝達物質と受容体の関係をシナプスレベルで解読する必要がある。研究分担者(窪田)は、三次元電子顕微鏡解析法を確立しつつあり (Kubota, 2014; DeFelipe et al., 2013)、複雑な神経回路において、情報の送り手と受け手を同定しつつ、神経回路の中でどのような情報伝達が行われているかを網羅的に調べる予定である。

 
最近の主要論文
1. Unzai T , Kuramoto E, Kaneko T, Fujiyama F. Quantitative Analyses of the Projection of individual Neurons from the Midline Thalamic Nuclei to the Striosome and Matrix Compartments of the Rat Striatum. Cerebral Cortex, 2016
2. Fujiyama F, Nakano T, Matsuda W, Furuta T, Udagawa J, Kaneko T. A Single-Neuron Tracing Study of Arkypallidal and Prototypic Neurons in Healthy Rats. Brain Structure and Function, 2016
3. Fujiyama F, Karube F, Takahashi S. Morphological elucidation of basal ganglia circuits contributing reward prediction. Frontiers in Neuroscience, 2015.

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礒村 宜和(玉川大学) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a02/238/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a02/238/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:40:02 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=238 「オペラント学習による行動獲得と転換を実現する神経回路制御」

動物は、目的に応じた適切な行動をオペラント学習により獲得し、その行動を繰り返しているとやがて習慣化します。この行動適応の過程には、大脳皮質-基底核回路の並列ループ間での機能シフトが関与すると推察されていますが、その機能シフトの詳細な仕組みについてはほとんど理解が進んでいません。これまで私たちは、頭部を固定したラットに前肢を使った行動課題を効率良くオペラント学習させる行動実験系を確立し、大脳皮質(運動野)や大脳基底核(線条体)の神経細胞の機能的活動の特性を、マルチニューロン記録法など

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「オペラント学習による行動獲得と転換を実現する神経回路制御」

動物は、目的に応じた適切な行動をオペラント学習により獲得し、その行動を繰り返しているとやがて習慣化します。この行動適応の過程には、大脳皮質-基底核回路の並列ループ間での機能シフトが関与すると推察されていますが、その機能シフトの詳細な仕組みについてはほとんど理解が進んでいません。これまで私たちは、頭部を固定したラットに前肢を使った行動課題を効率良くオペラント学習させる行動実験系を確立し、大脳皮質(運動野)や大脳基底核(線条体)の神経細胞の機能的活動の特性を、マルチニューロン記録法などの電気生理学的な計測技術を使って解明する研究を推進してきました。

そこで本研究では、ラットのオペラント学習の進行に伴う、辺縁系ループ(情動や動機づけに関与)、前頭前野系ループ(目標指向行動の形成)、運動系ループ(習慣化への転換)間の機能シフト動態を、独自の行動実験系に多領域マルチニューロン記録と光遺伝学技術を組み合わせて因果的に解明し、理論モデルの構築を通じて神経回路の機能シフトの本質を考証することを目指します。

具体的には、まずラットに前肢を使う行動課題(Stop-Signal応答課題など)をオペラント学習させて、目標指向行動の形成、習慣化への転換、衝動性の調節の過程を観測できる行動実験系を確立します。このような行動適応を担う機能シフトに関わる神経活動を、大脳皮質-基底核回路の並列ループからの多領域マルチニューロン記録によって解析し、各領域における神経細胞の機能的活動の特性を調べるとともに、領域間やループ間の機能的情報の伝達量や方向性を統計的解析で推定します。また、A01小林班から供与されるオプトジェネティクス技術を活用し、オペラント学習の試行中に特定回路の信号伝達を光刺激/光抑制することにより、オペラント学習の進行に伴う行動適応を担っている大脳皮質や基底核の機能的シフトの責任回路を特定することにも挑戦したいと考えています。このような実験で得られた知見をもとに、酒井裕教授(玉川大学・研究分担者)の協力を得て機能シフトの計算論的な役割を導出し、その理論的予測をさらに実験的に検証することによって、実験と理論の両面から行動適応に関わる神経回路の機能シフトを統一的に理解することを期待して本研究に取り組んでいます。

 
最近の主要論文
1. Saiki, A. et al. (2014) Different modulation of common motor information in rat primary and secondary motor cortices. PLoS ONE 9: e98662.
2. Isomura, Y. et al. (2013) Reward-modulated motor information in identified striatum neurons. J. Neurosci. 33: 10209-10220.
3. Kimura, R. et al. (2012) Reinforcing operandum: rapid and reliable learning of skilled forelimb movements by head-fixed rodents. J. Neurophysiol. 108: 1781-1792.

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渡邉 大(京都大学) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a02/236/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a02/236/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:39:22 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=236 「社会学習による音声スキルの獲得と固定化を媒介する神経回路制御」

スズメ亜目に属する鳥類(ソングバード)は、ヒトの言語学習のプロセスと同様、模倣により複雑な音声(囀り)を後天的に獲得します。生後発達期に社会学習を通じて音声を確立すると、獲得した音声を生涯維持することができます。その一方で、原則的には、新たな囀りのレパートリーを学習することができなくなります。このように複雑なスキルを模倣により獲得し、終生その能力を維持するためには、関与する神経回路の情報処理や可塑的特性に何らかの切り替えが生じると予想されます。しかしながら、音声スキルの獲得から固定化へいたる

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「社会学習による音声スキルの獲得と固定化を媒介する神経回路制御」

スズメ亜目に属する鳥類(ソングバード)は、ヒトの言語学習のプロセスと同様、模倣により複雑な音声(囀り)を後天的に獲得します。生後発達期に社会学習を通じて音声を確立すると、獲得した音声を生涯維持することができます。その一方で、原則的には、新たな囀りのレパートリーを学習することができなくなります。このように複雑なスキルを模倣により獲得し、終生その能力を維持するためには、関与する神経回路の情報処理や可塑的特性に何らかの切り替えが生じると予想されます。しかしながら、音声スキルの獲得から固定化へいたる神経回路の機能的遷移メカニズムについてほとんど理解されていません。そこで本研究では、音声スキルの発達に伴う神経情報表現、可塑性シグナル分子動態の変化に注目して音声制御系回路における機能的遷移を明らかにします。具体的には、ソングバードの囀りを妨げないような小型軽量の電気生理学的デバイスを用いた神経活動計測に加え、自由行動下の生体イメージングによる細胞内シグナリング動態(細胞内Ca2+濃度、FRETバイオセンサーによるPKAおよびMAPKなどキナーゼ活性)の計測を行います。さらにA01 小林班が開発する光遺伝学・化学遺伝学的手法による神経回路操作技術を導入することで、音声制御系回路における神経情報・可塑性の遷移と音声スキルの獲得・維持の因果関係を明らかにします。ソングバードの音声制御系回路が哺乳類の大脳-基底核-視床ループと類似の回路構築を特徴とすることから、言語を始めとする様々なスキルの獲得と維持の基盤となる神経回路機構の解明が期待できます。さらに磯村班、藤山班と連携し、哺乳類モデル動物における大脳-基底核-視床ループの解析に本アプローチを展開します。これにより種間で保存されている大脳-基底核-視床ループ神経回路の発達と遷移のメカニズム、オペラント学習と社会学習での神経回路動作の共通点や相違点を探索します。

 
最近の主要論文
1. Abe, K., Matsui, S., and Watanabe, D. (2015) Transgenic songbirds with suppressed or enhanced activity of CREB transcription factor. Proc Natl Acad Sci U S A. 112: 7599-7604.
2. Hasegawa, T., Fujimoto, H., Tashiro, K., Nonomura, M., Tsuchiya, A., and Watanabe, D. (2015) A wireless neural recording system with a precision motorized microdrive for freely behaving animals. Sci. Rep. 5: 7853.
3. Fujimoto, H., Hasegawa, T., and Watanabe, D. (2011) Neural coding of syntactic structure in learned vocalizations in the songbird. J Neurosci. 31: 10023–10033.

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小池 康晴(東京工業大学) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a01/234/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a01/234/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:26:45 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=234 「行動と脳の神経活動を結ぶ計算モデル技術」

行動適応を担う神経回路の機能シフト機構を理解するためには、実際の神経活動と行動の間にある複雑な神経回路の構造や環境・身体のダイナミクスを考慮に入れた因果関係を解析できる技術が必須である。筋骨格系モデルは身体運動の基盤であり、神経活動と行動を繋ぐものである。筋骨格系モデルを基にしたデータ解析により、原因と結果を身体のダイナミクスを介して解析することにより、環境との相互作用を含む行動と脳の大規模な神経回路との動的な関係を計算論的モデルを基に定量的に解析する事を目的としている。本研究では、

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「行動と脳の神経活動を結ぶ計算モデル技術」

行動適応を担う神経回路の機能シフト機構を理解するためには、実際の神経活動と行動の間にある複雑な神経回路の構造や環境・身体のダイナミクスを考慮に入れた因果関係を解析できる技術が必須である。筋骨格系モデルは身体運動の基盤であり、神経活動と行動を繋ぐものである。筋骨格系モデルを基にしたデータ解析により、原因と結果を身体のダイナミクスを介して解析することにより、環境との相互作用を含む行動と脳の大規模な神経回路との動的な関係を計算論的モデルを基に定量的に解析する事を目的としている。本研究では、筋骨格系の数理モデル解析技術を、学習や発達の過程での回路の遷移や損傷・障害からの回復の際の回路再編に関与する神経機構を明らかにする研究に応用する。運動指令の情報表現、発現機構、運動計画、運動学習などは全て、運動関連領野だけで無く、体性感覚のフィードバックや環境からの入力情報により計算される。したがって、神経回路の遷移や再編を伴う問題を解決するためには、特定の神経回路を操作して、その影響を脳全体として同時に計測し、解析することが重要になる。脳活動の時空間的解析および筋骨格系モデルを基にした身体性を考慮に入れた因果関係の解析は、グレンジャー因果性の解析などの数値解析に物理的な意味を持たせることになる。筋肉、脊髄など、運動を発生・修飾する器官の情報を用いて大量のデータを解析することで、これまで見いだせなかった内因的な隠れた関係を明らかにする。

本研究では、数理モデルを用いた解析技術を、学習や発達の過程での回路の遷移や損傷・障害からの回復の際の回路再編に関与する神経機構を明らかにする研究に応用する。

行動適応を担う神経回路の機能シフト機構を理解するためには、実際の神経活動と行動の間にある複雑な神経回路の構造や環境・身体のダイナミクスを考慮に入れた因果関係を解析できる技術が必須である。筋骨格系モデルは身体運動の基盤であり、神経活動と行動を繋ぐものである。筋骨格系モデルを基にしたデータ解析により、原因と結果を身体のダイナミクスを介して解析することにより、環境との相互作用を含む行動と脳の大規模な神経回路との動的な関係を計算論的モデルを基に定量的に解析する事を目的としている。

 
最近の主要論文
1. Natsue Yoshimura, Koji Jimura, DaSalla Charles S., Duk Shin, Hiroyuki Kambara, Takashi Hanakawa, Yasuharu Koike. Dissociable neural representations of wrist motor coordinate frames in human motor cortices, NeuroImage, Vol. 97, pp. 53-61, Apr. 2014.
2. Hiroyuki Kambara, Duk Shin, Yasuharu Koike. A computational model for optimal muscle activity considering muscle viscoelasticity in wrist movements, Journal of Neurophysiology, Vol. 109, No. 8, pp. 2145-2160, Apr. 2013.
3. Natsue Yoshimura, Charles S. DaSalla, Takashi Hanakawa, Masa-aki Sato, Yasuharu Koike. Reconstruction of flexor and extensor muscle activities from electroencephalography cortical currents, Neuroimage, Elsevier, Vol. 59, No. 2, pp. 1324-1337, Jan. 2012.

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尾上 浩隆(理化学研究所) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a01/232/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a01/232/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:26:03 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=232 「神経回路活動を計測する非侵襲的イメージング技術」

私達のグループでは、陽電子断層撮像法(PET)および、磁気共鳴画像(MRI)による非侵襲イメージング法を用いて、生体内で起こる複雑な生命機能・細胞機能の動的イメージングや、神経系特有のネットワーク構造、活動様式から機能発現に至る時空間的過程を明らかにする手法を創出し、遺伝子改変モデルマウスや非ヒト霊長類であるマカクサルにおける生体における恒常性維持に関わる臓器間、細胞間ネットワークの高度な機能構造の構築と相互連関に関する動的イメージング解析法を確立し、機能構築の変遷がもたらす病的過程についての理解や診断・]]> 「神経回路活動を計測する非侵襲的イメージング技術」

私達のグループでは、陽電子断層撮像法(PET)および、磁気共鳴画像(MRI)による非侵襲イメージング法を用いて、生体内で起こる複雑な生命機能・細胞機能の動的イメージングや、神経系特有のネットワーク構造、活動様式から機能発現に至る時空間的過程を明らかにする手法を創出し、遺伝子改変モデルマウスや非ヒト霊長類であるマカクサルにおける生体における恒常性維持に関わる臓器間、細胞間ネットワークの高度な機能構造の構築と相互連関に関する動的イメージング解析法を確立し、機能構築の変遷がもたらす病的過程についての理解や診断・治療法の実現を目指しています。すでに、脊髄損傷後のサルの運動機能回復に伴う神経回路の動的変遷、マカクサル専用のMRIコイルを用いた拡散強調画像法による神経変性に伴う神経線維連絡の動的変遷、7テスラの高磁場MRIと超高感度コイルシステム導入による、マウス脳における60μmの等方性分解能の達成などの実績があります。本新学術課題では、遺伝子組み換え技術やウィルスベクターの局所投与などにより神経回路を選択的に遮断された齧歯類モデルや、外科的、物理的手法により創出された脊髄損傷、脳梗塞などのサルの神経損傷モデルにおける機能的ネットワークの変化を、MRI、PETのイメージング技術と他の技術との融合により時空間的に評価する手法を確立していきます。これらのイメージング技術基盤は、ヒトへの応用に直結しており、脳・脊髄損傷や精神・神経疾患など、ヒト患者への早期応用が期待される技術です。

 
最近の主要論文
1. Sawada M, Kato K, Kunieda T, Mikuni N, Miyamoto S, Onoe H, Isa T, Nishimura Y. Function of the nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science. 2015 Oct 2;350(6256):98-101. doi:10.1126/science.aab3825. Epub 2015 Oct 1.
2. Hayashi T, Shimazawa M, Watabe H, Ose T, Inokuchi Y, Ito Y, Yamanaka H, Urayama S, Watanabe Y, Hara H, Onoe H. Kinetics of neurodegeneration based on a risk-related biomarker in animal model of glaucoma. Mol Neurodegener. 2013 Jan 18;8:4. doi: 10.1186/1750-1326-8-4.
3. Takata N, Yoshida K, Komaki Y, Xu M, Sakai Y, Hikishima K, Mimura M, Okano H, Tanaka KF. Optogenetic activation of CA1 pyramidal neurons at the dorsal and ventral hippocampus evokes distinct brain-wide responses revealed by mouse fMRI. PLoS One. 2015 Mar 20;10(3):e0121417. doi:10.1371/journal.pone.0121417.eCollection 2015.

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小林 和人(福島県立医科大学)(代表) https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a01/229/ https://sips-jp.com/demo/acs/planned/a01/229/#respond Thu, 30 Apr 2015 05:17:13 +0000 http://www.fmu.ac.jp/acs/?p=229 「経路選択的な神経回路の操作・制御技術」

小林班では、遺伝子操作を利用して神経回路を操作・改変する新規技術の開発を進めています。特に、高頻度逆行性遺伝子導入ベクターを応用した経路選択的な回路制御技術は、選択的プロモーターが特定されていない細胞種においても機能操作が可能であるため、脳科学分野の研究に広く資する可能性が期待されています。また、高頻度逆行性遺伝子導入ベクターと細胞体領域から導入されるベクター系を組み合わせた二重遺伝子導入技術を用いることによって、さまざまな神経回路の機能改変に応用することができます。]]> 「経路選択的な神経回路の操作・制御技術」

小林班では、遺伝子操作を利用して神経回路を操作・改変する新規技術の開発を進めています。特に、高頻度逆行性遺伝子導入ベクターを応用した経路選択的な回路制御技術は、選択的プロモーターが特定されていない細胞種においても機能操作が可能であるため、脳科学分野の研究に広く資する可能性が期待されています。また、高頻度逆行性遺伝子導入ベクターと細胞体領域から導入されるベクター系を組み合わせた二重遺伝子導入技術を用いることによって、さまざまな神経回路の機能改変に応用することができます。本研究では、我々の遺伝子改変技術をさらに発展させ、神経回路の経路選択的な機能制御を行うための新しい技術の開発に取り組んでいきます。これらの新たな技術開発に加えて、すでに確立されている特定神経路の細胞除去、伝達遮断、光・化学遺伝学による活動制御のためのウィルスベクターについては、他の計画班や公募班へ供給し、共同研究や連携の促進を図っていきます。

また、我々の班では、オペラント学習のプロセスに伴って回路が機能シフトをおこす神経機構について、大脳皮質―基底核ループを介するメカニズムの解明に迫ります。すでにオペラント学習プロセスの進行に伴って必要な線条体のサブ領域が遷移することを見出しています。また、げっ歯類では視床の束傍核および中心外側核という神経核から線条体への入力がありますが、これらの2種類の経路の役割は学習のプロセスによって変化することから、機能シフトは線条体の領域だけで起きているのではなく、ネットワーク全体として変化していることが示唆されます。学習過程で推移する神経活動の動態変化を詳しく調べるためには、脳全体で起きている変化を解析する必要があり、われわれは、尾上班と連携して、脳機能イメージング技術を応用した解析を進めていきます。実際の神経活動の変化を特徴付けるためには、礒村班と連携し、脳内神経活動の記録を行います。このようにして、回路の動態変化に関わる脳領域を見つけ出し、ウィルスベクターを利用した機能操作法を用いて特定の神経領域あるいは神経路に介入することにより、回路機能の動態変化への影響を解析します。そして、視床線条体路ばかりでなく、大脳皮質―基底核ループを形成する他の神経ネットワーク(たとえば、線条体投射路、皮質線条体路など)がどのように機能シフトを起こすかについても取り組み、学習に伴う回路機能シフトの全容に迫りたいと考えています。

 
最近の主要論文
1. Kato, S., Kobayashi, K., and Kobayashi, K. (2013) Dissecting circuit mechanisms by genetic manipulation of specific neural pathways. Rev. Neurosci. 24: 1-8.
2. Okada, K., Nishizawa, K., Fukabori, R., Kai, N., Shiota, A., Ueda, S., Tsutsui, Y., Sakata, S., Matsushita, N., and Kobayashi, K. (2014) Enhanced flexibility of place discrimination learning by targeting of striatal cholinergic interneurons. Nat. Commun. 5: 3778.
3. Kobayashi, K., Kato, S., Inoue, K., Takada, M., and Kobayashi, K. (2016) Altering entry site preference of lentiviral vectors into neuronal cells by pseudotyping with envelope glycoproteins. Methods Mol. Biol. 1382: 175-186.

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