FUKUSHIMAいのちの最前線
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881)福島県内避難所状況5月11日現在、1次避難者142カ所8085名、2次避難者491カ所16413名、合計24498名。福島県浜通り各市町村からの避難者が大部分を占める。2)チームエコ活動状況3月28日から活動を開始。4月4日からは単独チームとして活動。5月11日まで、のべ22日活動。避難所を巡回して、避難者の中でも比較的ハイリスクと考えられる方々を中心にスクリーニングを行う。(ハイリスクとは、足のむくんでいる人、寝たきり、座っている時間の長い人、けがをした人、車に泊まったことのある人、以前に同様の病気になったことのある人、癌のある人、妊娠中、分娩間もない人、下肢静脈瘤のある人、手術直後の人、など)問診の後、携帯型超音波装置にて膝下静脈内血栓の検出(好発部位)。血栓が大きい場合や広範囲に及ぶ場合、および新鮮血栓で肺塞栓の可能性が高いと判断されれば、要医療として中核病院への紹介・入院を促す。血栓のない場合でも、予防指導を行った上で、さらに静脈径が太い場合には、弾性ストッキングの配布・装着を行う。5月11日現在、のべスクリーング数2238名(1次避難者の内28%)を行い、血栓陽性者219名(内8名は緊急入院による点滴処置を行いました)、血栓陽性率9.8%。ストッキング配布数874組、配布率39%。3)ヨルダン王国医療チーム活動報告ヨルダン王国医療チームは、血管外科医2名、看護師兼超音波検査技師2名(内女性1名)で4月25日からチーム・エコに合流。同日より活動を開始し8日の活動。来日以来訪問した避難所数は20カ所、対象避難者数4821名のうち、スクリーニング数736名(全スクリーニング数の33%、対象避難者数の15.3%)、血栓検出率10.6%、ストッキング配布数327組(全配布数のうち44.4%)。感想:ヨルダン王国からの医療活動に際しては、ヨルダンの医療レベルや、今回のエコノミークラス症候群に対する超音波検査技術のレベルが不明であること。また、英語でのコミュニケーションが可能とはいえ、通訳を介した避難者の方々との意思疎通がスムーズにゆくかどうかなど、不安材料は多くありました。そのため、アラビア語-日本語の通訳者を要請しましたが、準備に時間がなく英語-日本語の通訳になるとの結論でした。また、食生活の違い、宗教上の問題など考えると枚挙にいとまがありません。しかし、彼らはいち早く日本に駆けつけ、日本のために働きたいとの強い思いを持っていると聞き、本当にありがたく、できるだけスムーズに仕事が進むように当院としても準備をしてきました。決定から、到着まで3日ほどしかありませんでしたが、携帯型の超音波検査装置も直前購入の上持参してきました。4月25日のチーム合流の後、すぐさま打ち合わせを行いました。たぶん、放射線量には気を使うであろうと思っていたので、現在の原子力発電所の状態、放射能の分布、危険地帯(20㎞以内)には入らないこと、福島市および巡回先の環境放射線量などを説明して、活動するには『比較的安全』ということを理解していただきましたが、彼らは、たとえ比較的高い放射線量でも我々チームがゆくのであれば、ついて行くとの言葉に、彼らの『日本を助けたい』という強い思いを再確認しましたし、我々としても非常に心強く感じた瞬間でした。果たして、彼らの知識、技量レベルは高いものでした。また、段取りについても直ぐに理解され、初めて会ったその日の午後には早速活動を開始できるほどでした。ヨルダンチーム合流後、活動日数は全体の3分の1にもかかわらず、血栓検出率は増加し、ストッキング配布率もそれ以上に増加。結果から見てもチーム全体の活動量が増加しました。最終的には、避難者が致死的な肺塞栓になる前に予防指導、処置が可能であったと判断でき、非常に有益であったと考えます。また、彼らの活動は単に医学的な効果にとどまり福島県立医科大学 高度医療緊急支援チーム、エコノミークラス症候群医療チーム(チームエコ)およびヨルダン王国医療団活動状況2011年7月6日国際医療支援

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