FUKUSHIMAいのちの最前線
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第2章福島医大関係者行動記録〈手記とメッセージ〉FUKUSHIMA いのちの最前線85●『エコノミークラス症候群』から避難民を守る 未曾有の東日本大震災。被災を受けた方々、お亡くなりになった方々およびそのご家族に心からお悔やみ申し上げます。福島県立医科大学は、地震、津波の大災害に加えて、原発事故による放射能問題に全学で取り組んでいます。その中でも、緊急時の医療だけでなく、より高度な医療を被災地および避難している人たちに提供すべく、高度医療緊急支援チームを立ち上げました。 特に日本の震災においては、その後に下肢静脈血栓症とそれに伴う肺塞栓症の発生が増加して、致命的になってしまう、いわゆる『エコノミークラス症候群』の発生が増加します。われわれは高度医療緊急支援チームのなかの『エコノミークラス症候群』医療チームとして移動式エコー4台を投入し、避難所を中心に多くの被災者の皆さんをスクリーニングし、肺塞栓の元となる下肢静脈血栓症を早期に発見・治療すること、『第二の被災者』を発生させないことを目標に活動しています。 現在のところ、1000名を超す方々をスクリーニングしました。なんと10%程度の方々に下肢静脈血栓症を確認しました。この発生率はこれまでの震災における発生率から3〜5%高い数値になっています。今回のスクリーニングでも、肺塞栓につながるような大きな血栓を発見でき、早期に治療を開始することができたことは、本当に良かったと思っています。 避難所生活は、これからもまだまだ続きます。また、遠隔地から地元に戻って避難所生活に入る方も増加するでしょう。これからも継続して『エコノミークラス症候群』の予防指導、早期発見に取り組み、東日本大震災の『第二の被災者』を出さないようにしたいと思っています。『エコノミークラス症候群』を予防する三つの重要なこと1)車の中に泊まらない。長い時間同じ姿勢をしていると血栓ができやすい。4時間程度で血栓はできてしまう。2)歩く。頻繁に足首の運動をすること。3)水分を摂る。トイレに行くことは大変ですが、だからといって水分を摂らないのは最もいけません。特に女性は注意が必要。(福島県立医科大学高度医療緊急支援『エコノミークラス症候群』医療チーム チームリーダー)東日本大震災の『第二の被災者』を出させない!高瀬 信弥 Takase Shinya心臓血管外科学講座 講師 この度の大震災で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。 震災後より、細矢教授の指示の下、小児科学講座で各避難所の状況を把握し、物資不足の避難所にはミルクや紙おむつなどを運び、診察の要望があれば診察をして参りました。避難所では大震災の後にも関わらず、子どもたちが元気に遊んでいる光景をよくみかけました。しかしその反面、震災後より夜泣きをしたり、甘えるようになったりといった変化がみられた子もいるようで、震災は子どもたちの心にも傷を残しているようです。 そのため現在小児科では、震災直後のような物資・医療の支援から、こどもたちの心のケアに活動が移っております。私も微力ながら自分で出来得る限りのことを行っていきたいと思います。震災後の活動阿部 優作 Abe Yuusaku小児科学講座 大学院生 私の所属する地域・家庭医療学講座は、日頃から地域の病院や診療所でプライマリ・ケアを実践して参りました。今回の東日本大震災でも、私たちは地域住民の皆さまと共に被災し、その直後から各地の診療所や病院の機能復興に携わり、さらに避難所のケアを含めた地域活動を行っておりました。 当たり前の設備のない困難な環境の中で、診療を続けられたのは病院・診療所のスタッフの結集した力によるものだったと感じています。今後は、避難所・仮設住宅で形成される新しいコミュニティのケア、社会不安に対する心理的影響への対策など福島県の医療を担う一員として尽力したいと思っています。結集した力高澤 奈緒美 Takasawa Naomi地域・家庭医療学講座 助手

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