FUKUSHIMAいのちの最前線
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568A2であった。A2は通常の診療では言及しない小結節ないしコロイド嚢胞などの結節を伴わない嚢胞で、5㎜以下の多発嚢胞が9割以上を占める。5㎜以下の結節に関しても0.53%と少なく、嚢胞との鑑別が困難な、おおむね良性と思われる結節である。全例、専門医による再判定を実施しており、A2判定でも甲状腺の状態等から二次検査を必要とすると判断されるものはB判定としている。今回は1名認めた。小児甲状腺癌の特徴 甲状腺癌は固形癌のなかでも最も予後の良好な癌である。このうち一番多いのが乳頭癌であり、次いで濾胞癌である。両者を合わせ「分化癌」といい、甲状腺癌の93.4%を占める。10年生存率は95.6%と良好で、年齢が予後規定因子となっている。UICCの病期分類でも、45歳未満はStageⅠとⅡしかない。遠隔転移があるとⅡであり、それ以外はⅠとなる。すなわち、甲状腺分化癌は若年者にはさらに予後良好な癌といえる。極めて頻度は少ないが、「未分化癌」という生存期間が平均6ヵ月で固形癌のなかで最も予後不良な癌もあるが、50歳未満で発症することはまれとされている。このような事情から、甲状腺癌は若年者に関しては良好な予後を示す。 小児甲状腺癌の発生頻度は低く、100万人に1〜2名とされているが、リンパ節転移や肺転移を認めてから発見されるため、一見進行しているように見える。しかし、成人に比して予後は良好とされている。また甲状腺癌は11.3〜28.8%に剖検時に発見される潜在癌(ラテント癌)を認め、その大半が10㎜以下の微小癌である。微小癌の腫瘍増大は極めて遅く、数年変わらないものもある。したがって、成人でも5㎜以下の結節は細胞診の対象としておらず2)、本調査でも5㎜以下の結節は2年半後の再検査とした。その時期でも十分に早期発見できるレベルといえる。 現在の精度の高い甲状腺超音波検査で発見されたしこりのすべてを、侵襲が全くないとはいえない細胞診で診断するメリットは少ないといえる。むしろ超音波診断で精度が高い質的診断を行い、必要なものを限定して細胞診等の二次検査を施行すべきと思われる。今後の展望 今年5月から2014年3月末までは、福島市、郡山市など避難指定区域以外に住む18歳以下の福島県住民全員に実施する。12年4月からは2巡目の検査が開始される。20歳未満の場合は2年ごと、20歳以上では5年ごとの甲状腺検査を生涯にわたり継続する予定である。県外に移住および避難されている住民に対しては現在、拠点となる実施施設を認定契約する作業に入っており、順次実施が可能となる見込み表2 平成23年度甲状腺検査の結果概要(2012年3月末日現在)検査実施総数38,114人判定結果判定内容人数(人)割合(%)A判定(A1)結節や囊胞を認めなかったもの24,468人64.2%99.5%(A2)5.0㎜以下の結節や20.0㎜以下の囊胞を認めたもの13,460人35.3%B判定5.1㎜以上の結節や20.1㎜以上の囊胞を認めたもの186人0.5%C判定甲状腺の状態等から判断して,直ちに二次検査を要するもの0人0.0%〔判定結果の説明〕・A1,A2判定は次回(2014年度以降)の検査までに経過観察・B,C判定は二次検査(二次検査対象者に対しては、二次検査日時、場所を改めて通知して実施)※A2判定であっても,甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した方については,B判定としています(参考)判定結果人数(人)割合(%)計結節を認めたもの5.1㎜以上184人0.48%386人(1.0%)5.0㎜以下202人0.53%嚢胞を認めたもの20.1㎜以上1人0.003%13,380人(35.1%)20.0㎜以下13,379人35.10%※結節,囊胞両方の所見に該当しているケースも存在小児甲状腺検査の実情

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