FUKUSHIMAいのちの最前線
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第5章次世代へ伝えるFUKUSHIMA いのちの最前線563により被災した住民に対して還元すべきである。同時に,得られた情報から最大限に学ぶという行政側の責任も認識されることが重要である。 ⑷ 日本は最先端の緊急放射線災害医療システムを有しているにもかかわらず,今回の福島第一原発事故は,そのシステムが依存していた地域インフラが,津波,地震と人為的な要因に伴う複合災害により崩壊した結果発災した。したがって,十分なコミュニケーションと満足のいく医療サービスが,必ずしも十分には提供されなかった。今回の教訓は検証され,問題点の解決が図られる必要がある。 ⑸ 医療専門家と科学者は,放射線影響の可能性とその有無についての理解促進に努め,現在の情報をできるだけわかりやすく国民に理解してもらうよう心がけるべきである。そのための線量評価,リスク評価と意思決定には透明性が求められ,同時に,科学的エビデンスとその解釈については,一般の人々に対してわかりやすい言葉で提供される必要がある。 ⑹ すべての医療サービスの中に,社会的,心理的な支援が組み込まれる必要がある。 ⑺ 放射線関連事項に関する幅広い経験を生かしたICRP,WHO,IAEA,UNSCEARなどの諸機関による長期にわたる国際的な支援が重要である。さらに国際機関の間でも相互の協力関係が強化されるべきである。 ⑻ 日本政府と国際機関は,長期的な協力関係を効果的に継続するためにこの災害から学んだことをいかに最大限活用できるかという課題を解決すべきである。1つの方法は,政府と地方自治体,他の利害関係者,関係する地域出身の市民代表者,そして国際機関などから成る福島第一原発事故に関するタスクフォースの組織化に着手することである。全文ならびに詳細は,日本財団ホームページのニュース(2011.11.10 世界の有識者を集め「放射線と健康」を議論 福島の国際専門家会議で8つの提言)をご覧いただきたい(http://www.nippon-foundation.or.jp/org/news/2011111001.html)。2.福島県民の健康見守り事業 復興事業のシンボルとして,「県民健康管理調査」が,国からの基金を活用し県の委託事業として本学で開始された。2011年5月のゼロからのスタートであったが,関係各位の努力により9月に本学内に放射線医学県民健康管理センターが正式に立ち上がり,「基本調査」と4つの「詳細調査」が推進されている(図2)。 1)基本調査図2 県民健康管理県民健康管理(全県民対象)フォロー相談・支援治 療健康状態の把握被ばく線量の把握(県民個々の基礎データ)こころの健康度・生活習慣に関する調査(避難区域等の住民へ質問紙調査)妊産婦に関する調査(22年8月1日~23年7月31日の母子健康手帳申請者へ質問紙調査)詳細調査基本調査甲状腺検査(18歳以下の全県民に順次実施)対象者:平成4年4月2日から平成23年4月1日までに生まれた県内居住者(県外避難者含む)内 容:甲状腺超音波検査※3年程度で対象者全員の現状を把握し、その後、 定期的に検査対象者:平成23年3月11日時点での県内居住者方 法:自記式質問票内 容:3月11日以降の行動記録 (被ばく線量の推計評価)データベース構築データベース■県民の長期にわたる健康管理 と治療に活用■健康管理をとおして得られた 知見を次世代に活用健康管理ファイル(仮称)☆健康調査や検査の結果を個々人 が記録・保管☆放射線に関する知識の普及健康診査(既存の健診を活用)対象者:避難区域等の住民及び基本調査の結果必要と認められた方内 容:一般健診項目+白血球分画対象者:全県民内 容:一般健診項目既存健診の対象外の県民への健診実施・ホールボディカウンター・個人線量計職場での健診や市町村が行う住民健診、がん検診等を定期的に受診することが、疾病の早期発見・早期治療につながる。東日本大震災後の歩みと未来への取り組み

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