FUKUSHIMAいのちの最前線
566/608

5605.実現不能なゼロリスク追求 ゼロリスクを求めたところに「幸福」はない。だとしたら変えられるのは自分自身のリスクに対する考え方かもしれない。ゼロリスク追求をどこかで止め、ある程度のリスクを受け入れ、リスクと共存しながら生きる道を探る、放射線リスクに対する考え方をそんなふうに変換できれば、より幸福な人生を送れるのではないだろうか。6.風評被害の考察 多くの人は福島に協力的で寛大である。だが福島の現状の放射線量を科学的に検討し個人の天秤にかけたうえで、許容できないのなら我々にはどうしようもない。特に根拠もなく雰囲気で福島に負のレッテルを貼るなら、それは差別以外の何物でもない。少なくとも我々はそうはありたくない。7.放射線防護の原則「ALARA」 放射線リスクとの付き合い方の原則を国際放射線防護委員会ではアララ ALARA:As Low As Rea-sonably Achievableと呼ぶ。人生に支障を来さぬ範囲で「合理的に達成できる限り低く」外部・内部被曝量をそれぞれ減らすというものだ。アララと共に、飲酒、喫煙、運動不足、肥満、塩分過多など、より影響の大きな発癌要因を改善することで、福島においても合理的に発癌リスクは減らせる。 「福島で暮らすことで自分は子供に害を与えているのではないか」と自責の念を感じている母の話を友人から聞き、とても気の毒に感じた。事情はあろうが、線量を「正しく評価」し「リスクの物差し」にあてはめ「価値判断の天秤」にかけて「決断した」ことだ。「あなたの選択は正しい。アララの原則に従い不要な放射線量を減らすと共に、他の発癌要因を減らすことで子供をちゃんと守ることができる」とお母さんに伝えたい。8.自分の問題として考える 震災前に原子力ヘの意識が薄かった反省を持つ福島の医師の一人として、どうすれば福島に住む人を健康で幸せにできるかを毎日考えている。心に不安を抱える人がいる一方で、放射線影響にまったく無頓着な人も見かける。放射線の問題を自分自身のことと捉え、地域の勉強会の中で生活域の空間線量率分布、身近な食品中の放射能量、フィルムバッジ解析や県民健康調査の結果など学び、アララの原則に従い不要な被曝を無理なく減らすことができれば、そして地域からリスクコミュニケーターと呼ばれるリーダーが育てば、福島は美しい清い健やかな人生をうんと楽しめる土地になる。福島は私の大切な第二の故郷である。食品の放射性物質の基準値が厳しくなります 食品に含まれる放射性物質の新基準値が、2012年4月から適用されます。その内容は、放射性セシウムによる年間被ばくの許容上限を1ミリシーベルトに引き下げ、『乳児』『1〜6歳』『7〜12歳』『13〜18歳』『19歳以上』の年齢区分で許容上限値を計算し、最も厳しい値を適用する。『13〜18歳』『19歳以上』は男女の食品摂取量に差があることから、男女別の数値も出すというものです。 一般食品は暫定規制値の5分の1、飲料水は20分の1とし、新たに加わる『乳児用食品』『牛乳』は子供が被ばくの影響を受けやすいことに配慮し『一般食品』の半分としています。また今回は放射性ヨウ素やウランは食品から検出がみられないとして、基準値を設けていません。厚生労働省が定める食品に含まれる放射性セシウムの新しい基準値野菜類500ベクレル穀類500ベクレル肉・魚他500ベクレル飲料水200ベクレル牛乳乳製品200ベクレル一般食品100ベクレル飲料水10ベクレル牛乳50ベクレル乳児用食品50ベクレル(1㎏当たりの放射性セシウム)年間5ミリシーベルト暫定規制値年間1ミリシーベルト新基準値子どもへの配慮厳しくに15厳しくに120福島で幸福に生きる

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です