FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線429 全国の多くの動物施設では、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災の事例を参考にして震災対策マニュアルを作成している場合が多い。これにくわえ福島医大では、近年の比較的大きい地震として、三陸南地震(2003年5月26日18時24分、M7.0、仙台市青葉区震度5弱、福島市震度4)と8・16宮城地震(2005年8月16日11時46分、M7.2、福島市震度5弱)の体験から震災対策を行ってきた。1階洗浄滅菌室の近くに、HEPAフィルターを設備した広い手術室を配置した設計であったことから、ケージ類の消毒作業と保管に便利であった。ラックや交換用ケージを保管している台車(写真15)やラックは、揺れにあわせて移動するように、キャスター付きを採用していた(写真16)。クリーンラックをL字型に配置していたことも、相互に揺れの支えとなり転倒防止に役立った(写真17)。これまでの震災対策や日常の作業が功を奏したものと考えている(表5)。 今回の経験から、さらに以下の事項を地震対策として追加した。①動物用飲用水(限外濾過水)や弱酸性水の備蓄の徹底(写真18、19)。②固形飼料や消耗器材類の在庫管理の徹底。③ケージ落下防止の工夫(写真20)。④ステンレス蓋がはずれにくく、落下しにくいカードケージ使用の徹底(やむをえず小ケージを使用する場合には、クリーンラック内での使用を推奨)。⑤作業用ヘルメットの常備(マニュアルに記述していたが、常備されていなかった)。 巨大地震と津波にくわえて、追い打ちをかけるように発生した原発事故、そしてガソリン不足は、福島県民にとって悲嘆に暮れる日々をもたらした。被災者への救援物資はじめ、生活用品すべての物流の停止状態は、年配の人々には戦時下を想起させたであろう。被災者にとっては未曾有の天変地異であったと思う。このような複合災害は、地震列島の日本各地で発生しても不思議ではないと考えられている。 動物施設には地震に強い適正規模があると考えている。適正規模とは、要員数やその能力に見合った、建築規模や飼育収容数、器材類の備蓄量等である。大規模な施設にはそれなりの要員数とチームワークが必要なのである。新たに建設する場合や大規模な改修の際には、電気室や空調機、洗浄装置や滅菌装置等重要設備の各階への分散配置によるリスク低減にも配慮する必要があろう。いざというときは臨機応変の対応と連携がリスクを低減写真18、19 動物用飲用水(限外濾過水)や弱酸性水の備蓄の徹底。人工透析液用容器(7.56L;附属病院の廃棄物)を活用した限外濾過水および弱酸性水の保管。台車の活用は利便性の他に耐震性もある。写真20 荷造りロープ(3㎜径)と輪ゴム(6㎜幅)を利用した、作業性のよいケージ落下防止の工夫。その後、フックは、ステンレスフックが入手できたので変更した。

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