FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線425しなければならない状況であった。動物施設では19時25分に、屋上に設置されている給水塔への給水が停止された(表3)。ただ、上水道の断水で施設への給水が停止されたものの、屋上の給水塔(上水用30トン、中水用16トン)の残留水で2日間程度、水の使用が可能であった。 当施設ではノックアウトマウスが急増した2000年頃から、自動給水装置はラットやウサギの飼育に限定し、マウスにはすべて100mLの給水瓶を使用して残留塩素濃度を3ppmに調整した限外濾過水を飲用させてきた(原則週2回交換、写真12)。給水停止の1時間ほど前に停止を知らせる予告放送があったので、施設のスタッフ全員で、直ちに、動物の飲用水としてすべての給水瓶に水道水を充填した。 水道水は、100mL給水瓶(マウス用)1200本、400mL給水瓶(ラット用)430本のほかに、7Lのポリ容器10個と20Lポリ容器1個に確保した。さらに、ケージ洗浄用として、プラスチックコンテナ容器(70L)等に水道水を貯水した。この結果、動物を処分することもせずに8日にわたる断水期間中の飼育が可能であった。 ガス、蒸気、冷水の供給は停止したが、停電はまぬがれた。ただ、熱源停止によって飼育室の空調機も運転不能となった(表3)。くわえて附属病院の維持を優先させる必要から、学部棟や研究棟における給水制限と節電が徹底されたため、施設内のトイレが使用禁止となり、エレベーターも2基のうち1基が停止せざるを得なかった(表3)。 断水は8日間にも及び、蒸気と給湯の停止は12日間続いた。また、すべての飼育室における空調機の復帰には20日を要した(表3)。 施設内ではケージ洗浄装置や高圧蒸気滅菌装置等も使用できず、使用後のケージは後述する消毒の工夫で対応した。翌12日には、マウスやラットの一部の飼育室でアンモニア濃度が20ppm以上に上昇し、通常の飼育管理作業も困難となったことから、換気手動で換気装置を運転飼育室の環境保全に全力投球写真12 限外濾過装置からのマウス用飲用水(残留塩素濃度3ppm)の充塡。ドアのストッパーとしても利用する弱酸性水を入れたポリ容器。いろいろな所に水を分散備蓄することにした。表3 学内におけるライフラインの状況①水道の断水(3/11~3/18 17:00、8日間)給水塔の貯水残量で自動給水装置(ラット・モルモット・ウサギ)が数日間使用できた②都市ガスの停止③蒸気の停止(3/11~3/23 8:30、12日問)④給湯の停止(3/11~3/23 8:30、12日間)⑤空調の停止(3/11~3/31 11:00、20日間)写真13 マウスケージへ滅菌済巣材(綿・キムタオル類)の使用。

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