FUKUSHIMAいのちの最前線
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422 あまりにも激しい揺れに、施設内に居合わせた者すべてが驚きょうがく愕した。 2011年3月11日午後2時46分頃、三陸沖を震源とするマグニチュード(M)9.0の巨大地震が発生した。地震エネルギーは1995年1月の阪神淡路大震災(M7.3)の約1000倍という世界でも希な巨大地震となった。宮城県北部で震度7、福島県内では震度6強を観測し、各所に被害をもたらした。福島県立医科大学(以下福島医大と略)のある福島市内では震度5強であった(図1;気象庁HP、図2)。 筆者(施設長)は、事務室から施設内一斉放送で入室者およびスタッフ全員に安全な場所への避難を呼びかけた。続けて、学内の一斉非常放送でも同様の放送があった。人的被害がないことを確認後、事務室のテレビを視聴しながら、災害マニュアルに沿って対応した(表1)。 福島医大は、JR福島駅から南へ約10㎞、国道4号線のそばにある。動物施設は鉄筋コンクリート構造4階建(延面積2,601㎡)で1988年3月に竣工した。1~3階(各階約648㎡)を飼育室や実験室として供用している。4階部分は機械室で、換気装置のフィルターユニットや蒸気ヘッダー等が設置してある。これらの動物施設の南側に連結するかたちで、約700㎡の建屋(鉄筋コンクリート構造4階建)の増築工事が行われ、3月16日に完成予定であった。この増築部分も被害を受けたため補修工事を余儀なくされ、大学への引き渡しが6月30日と大幅に延期された(写真1)。スタッフの連携で乗り越えた地震・放射能汚染の二重被害停止・避難・点検災害マニュアルどおりに対応体験者が伝える実験動物施設の震災対策(アドスリー)「第3章 福島県立医科大学のばあい」掲載福島県立医科大学医学部附属実験動物研究施設長 片平 清昭写真1 JST事業によって増築した動物施設(右側建物の1階・3階部分)と渡り廊下(手前)、左側は従来の動物施設。図1 2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の震源域(気象庁HPより)表1 3.11地震直後からの対応事項①施設内一斉放送・学内非常放送による避難指示②高圧蒸気滅菌装置・低温ガス滅菌装置の停止および確認③被害状況の確認(建物、設備、飼育装置、その他)④ケージ落下による逃走マウスの捕獲処分⑤空調機・換気装置の状態確認(飼育室監視装置の表示)⑥動物用飲用水の確保(17:00~21:00)マウス用:100mL給水瓶(滅菌済)への水道水の充水ラット・モルモット・ウサギ用:400mL給水瓶(滅菌済)への水道水の充水⑦保管物品類在庫量の確認固形飼料、床敷、滅菌済ケージ数、ディスポ手袋、消毒剤、その他⑧翌日からの作業計画策定職員・委託職員の出勤体制、作業項目、その他(水道断水により、附属病院をのぞき給水停止。学部教職員は原則自宅待機)

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