FUKUSHIMAいのちの最前線
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第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線415【目的】マウスやラットの飼育には、微生物統御とSPF水準の飼育の観点から滅菌飼育器材を用いる必要がある。3月11日に発生した地震後には、水道・蒸気・ガスの供給が停止したために、オートクレーブ滅菌ができなかった。その対応策として、飼育器材は次亜塩素酸ナトリウムと70%アルコールを使用して消毒した。この体験を基に、ケージ洗浄機やオートクレーブが使用できない場合における、安全性と利便性の高い消毒法を工夫する目的で、細菌数を指標としてマウスケージの消毒について改めて検証した。【方法】マウス用プラスチックケージ(カードケージ、日本クレア社)20ケージを5ケージずつ4群に分けた。全ケージを食器用洗剤(ママローヤル)を使用して手洗い後、水道水ですすぎ洗いし、自然乾燥し、実験群ごとに次のような処置を行った。A群:手洗い洗浄のみ、B群:ジェットホグを用いて70%アルコールをケージ内に噴霧、C群:ケージをアサカラックス1000倍希釈液に浸漬、D群:C群の処置後自然乾燥後に70%アルコール噴霧。ケージはすべて殺菌灯のあたらない場所で自然乾燥させた後、ケージ内面底部に滅菌生理食塩水を10mL入れて拡散させ、その1mLを生菌数測定用ペトリフィルム培地(MEDIUM社)に接種して37℃孵卵器で培養し、48時間後のコロニー数を測定した。【結果】D群では1ケージのみにコロニー1個が検出されただけであった。A群では1ケージに104個出た以外には、コロニーが検出されなかった。B群の70%アルコール噴霧した場合は1ケージからコロニー数が283個検出され、C群のアサカラックスに浸漬した場合には3ケージからそれぞれ180個、13個、12個のコロニーが検出された。以上から、洗剤による洗浄効果が高く、マウスケージにはアサカラックス希釈液と70%アルコール噴霧の2剤併用が適当であることが確認できた。日本実験動物技術者協会第45回全国総会in盛岡 講演要旨集A-22掲載丹治 静保、遊佐 寿恵、片平 清昭福島県立医科大学医学部附属実験動物研究施設Antiseptic technique of the plastic cages for SPF animals during disasters東日本大震災に学ぶ─オートクレーブ使用不能の際のケージの消毒─

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