FUKUSHIMAいのちの最前線
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414【目的】平成23年3月の東日本大震災後、我々の実験動物施設では水・蒸気・空調が停止した。中でも上水は8日間供給が停止し、実験動物の飲用水を確保する重要性を痛切に感じた。飼料やその他の飼育器材についてはストックしていたが、飲用水についてはしていなかった。今回は地震発生直後に動物用飲用水としてマウス用100mL給水瓶1200本、ラット用400mL給水瓶430本と7Lポリ容器10個と20Lポリタンク1個に確保して、難を逃れた。震災を体験し今後は飲用水もストックし、定期的に交換することとした。約10日間の飲用水をストックすることを目安とするが、容量が大きいため交換が頻回であれば労力が大きくなる。そこで、残留塩素濃度を測定し、交換時期について検討したので報告する。【方法】残留塩素濃度が約3ppmの水を得ることができる限外濾過式給水装置および薬液(ピューラックス)添加装置(UFPK-3050/CPPK-0030、ミクニキカイ株式会社)を使用して水を採取した。ストック容器には白色不透明の人工腎臓透析液用のポリ容器(充満させると約7.5L)を活用することとした。残留塩素測定は残留塩素計(HI95734、HANNA)を用い、採取後1週間から5週間までの毎週として5群を設定し、1群あたり3個について測定した。15個の容器に採水し室温約25℃の実験準備処置室にストックした。【結果】給水装置から採取直後の残留塩素濃度は2.69~2.98ppm(平均2.79ppm)であった。1週間後には平均(以後、平均値で記載)2.38ppm、2週間後は2.14ppm、3週間後2.04ppm、4週間後1.89ppm、5週間後1.62ppmであった。このように経時的に濃度は低下したが、5週間後でも1.5ppm以上であった。残留塩素濃度は温度や遮光等条件により大きな影響を受けるが、4週間毎に交換すれば飲用水として使用可能であることが示唆された。当施設では、災害発生時の動物用飲用水として、限外濾過式給水装置および薬液添加装置を用いて4週間ごとに汲み換え、給与する際に残留塩素濃度を測定し、必要な場合にはピューラックス(塩素)を再添加して給与することとした。日本実験動物技術者協会第45回全国総会in盛岡 講演要旨集A-21掲載遊佐 寿恵1、丹治 静保1、長谷川 久美子2、塩谷 朋子2、片平 清昭1福島県立医科大学医学部附属実験動物研究施設1)、株式会社ジェー・エー・シー2)Ensuring drinking water for laboratory animals during disasters東日本大震災に学ぶ─災害時の動物飲用水の確保─

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