FUKUSHIMAいのちの最前線
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412 東日本太平洋沖地震(2011.3.11.14:46頃発生,M9.0)の際に、福島県立医科大学(本学)においても激しい揺れに見舞われた(震度5強)。地震直後、本学では電気を除き、ライフラインが停止した。断水の他にガス、蒸気、冷水が停止。飼育室の空調も運転不能となった。附属病院の機能維持を最優先させ、学部研究棟や附属研究施設等では節電と節水が徹底され、トイレも使用不能となった。高圧蒸気滅菌装置やケージ洗浄装置等も使用不能であった。翌12日にはマウスやラットの飼育室のアンモニア濃度が上昇し、通常の飼育管理作業も困難となったことから、換気装置のみを手動で運転した。折しも寒気到来によって夜間時には外気温が零度まで低下し、降雪もあった。このような状況下では低体温の他に、マウスやラットのSPF水準維持の破綻が懸念された。そこで、滅菌済み巣材(綿やキムタオル等)を全ケージに投入して巣づくりを促した。断水は8日にわたり、蒸気および給湯の停止は12日間続いた。すべての飼育室における空調機の復帰には20日を要した。発表者の施設では監視装置(SAVIC-2000)によって飼育室全室の温度、湿度および室圧が1時間ごとに記録され、24時間ごとの日報として自動的に印字される。今回は、地震発生前から空調復帰までの約1月の監視データを紹介する。2ケ月後および3ケ月後の微生物モニタリング検査の結果、所定の14項目すべてにおいて問題点は検出されなかった。さらに、免疫不全のSCIDマウス5匹について盲腸内容物を調べたがブドウ球菌は検出されなかった。震度5強の地震にもかかわらず、人的被害もなく、建屋や設備の被害が比較的軽微であったのは、不幸中の幸いといえよう。『天災は忘れた頃にやってくる』(寺田寅彦)、『備えあれば憂いなし』、等の格言を実体験した思いである。日頃から対策を講じておく必要性を改めて痛感した。日本実験動物技術者協会第45回全国総会in盛岡 講演要旨集A-19掲載片平 清昭1,若井 淳1,遊佐 寿恵1,関口 美穂2福島県立医科大学医学部附属実験動物研究施設1)、福島県立医科大学医学部整形外科学講座2)Following the Tohoku Region Pacific Coast Earthquake, monitoring animal room conditions in Fukushima Medical University東日本太平洋沖地震発生後の空調停止による飼育室内環境の変化

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