FUKUSHIMAいのちの最前線
415/608

第4章患者救済に奔走した活動記録〈論文・研究発表〉FUKUSHIMA いのちの最前線409 福島県では現在東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の作業が行われており、当院はその二次被ばく医療機関に設定されている。加療が必要な放射線汚染患者が発生した際には、その治療に当たらなければならない。当院で緊急手術が必要な放射線汚染患者が発生した際のシミュレーションを行った内容と新たに出てきた問題点について報告する。30歳の福島第一原発作業員が重量物落下により左大腿解放骨折になりプレショックの状態で搬送されたとの設定で手術時のシミュレーションを行った。放射線汚染患者手術の際には手術室は養生(手術室の放射線汚染を防ぐためのマスキング)されており、麻酔器なども同様に養生する必要がある。手術室内にも汚染区域を設定し、医療スタッフも汚染区域内で作業するものは防護服を着用する必要がある。汚染区域内の物品は区域外には持ち出せず区域内に置いておかなければならない。シミュレーションは通常の手術と同様の人員で行ったが、実際には汚染区域と非汚染区域に人員が必要なため、通常の手術の2倍の人員が必要だった。また、ビニールで覆った麻酔器の操作は非常に困難で、常に2人以上の麻酔科医がついているか、麻酔器を使わない麻酔を考慮する必要があった。挿管する際には内部の汚染が不明の場合、口腔から距離をあけられるためエアウェイスコープは有用と考えられた。これら以外にも実際に手術を行うためには様々な問題が考えられた。 福島第一原発の事故は現在進行形であり長期の活動体制の維持が必要とされている。今回のようなシミュレーションを継続し、緊急被ばく医療体制を整備していかなければならない。麻酔第61巻臨時増刊号〈2012年6月7日発行〉(克誠堂出版)掲載福島県立医科大学附属病院麻酔科大橋 智,武藤 茉莉子,堀 学爾,佐藤 薫,飯田 裕司,村川 雅洋A simulation of an emergency surgery for a patient who is assumed to be polluted by radioactive substances当院で行った放射線汚染傷病者に対する緊急手術のシミュレーション

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です