FUKUSHIMAいのちの最前線
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400麻酔科とチーム医療孔後で再手術の患者であった。1号室の患者は,今回の手術で腹部の血管の再建を行い,日を改めてステントグラフトをする予定であったため,手術途中でも中止可能であった。10号室の患者は,食道閉鎖症術後の吻合部狭窄でそこに食べた肉が詰まったというものであったが,完全閉塞ではなく経過観察可能であった。12号室は,十二指腸穿孔で手術をした患者で,その後の感染に対して洗浄ドレナージを行う予定であった。まだ開腹したばかりで,癒着により手術時間も長時間が予想され,前回のドレーンがまだ効果があるとのことであったため,中止した。そこで15時30分ごろ,それぞれの手術は中断できるところで終了するように指示を出し,表2のように決定した。エレベータが停止したため,手術部から退出できても,ほとんどの患者は階の異なる病棟に戻れない状況にあった。そこで,同じ階にある集中治療室(intensive care unit:ICU)へ患者を移すことを決め,ICU副部長に連絡し,了解を得た。各手術室から手術部の出口までは,通常手術用ベッドで移動するが,今回は各部屋の入り口に用意したストレッチャーで,ICUへ移動した(図7)。全身麻酔で管理していた患者も,麻酔を覚醒後に移動した。ICUには当日5名の患者が入室していたが,手術部からの患者は,もともと入室予定であった1症例を除き,ストレッチャーのままでICUに滞在した。そして,表2に示したように,16時42分までに全患者の手術部からの退出が完了した。 夜間は震災被害の患者が搬送されることを想定し,5部屋の手術室を準備し,それに対応できるだけの麻酔科医5(通常当直医は2)名,手術部の看護スタッフ6(通常当直は2)名,CE(通常当直なし)2名が待機した。 翌日からは震災により上水道が止まったため,最低限の緊急手術のみの対応となった(表3)。3月22日に上水道が復旧し,4部屋で定時手術を再開した。そして,4月4日からようやく通常体制で定時手術を再開した。 手術室災害対策マニュアルの作成状況や災害時避3 今回の経験からの提言図6 ドア開放の写真図5 震災直後の手術室図4 麻酔器とモニター後方から見た様子図7 患者の退出の様子

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