FUKUSHIMAいのちの最前線
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350東日本大震災特別報告(福島発)―悲劇から奇跡へ1原発の危機的状況について告知を受けたわれわれは,被告知者特有の精神状態を呈した。一方で,被ばく傷病者は継続して発生し,翌16日には被ばく医療の拠点化後最初の原発事故患者が自衛隊ヘリで搬送された。3月18日になり,放射線医療の専門家である長崎大学・山下俊一教授(現福島医科大学副学長)をアドバイザーに迎え,「傾聴」と「適切な被ばく医療の知識」を核とした危機介入により,崩壊寸前であったわれわれの士気は回復し,文字通り再生した。「胆を据えて」オールジャパン体制で緊急被ばく医療の立ち上げを行う素地ができあがった。 また,緊急被ばく医療班を「危機介入者」と位置付け,「一定の危険を伴う業務」であることを周知させた。さらに,緊急被ばく医療班の目標を「原発事故の早期収束」とし,そのために「原発作業員の健康管理に寄与する」,「原発作業員の健康安全安心を支える」と定めた。目標達成のために「共通の敵」たる原発の現状を知り,備えるべき対象を「原発作業員」のほか,「公務危機介入者」,「一般住民」に分類して業務の整理を行うこととした。2.緊急被ばく医療の実際 13人の被ばく傷病者を収容し,うち内部被ばく疑いの傷病者3人を放射線医学総合研究所に転送した。当時,自衛隊が常駐して「除染」業務を担当し,学外支援チームとともに「緊急被ばく医療」を展開した。傷病者の「生理学的重症度」と「被ばく・汚染度」を比較し「外傷診療」「汚染検査と除染」の優先順位を決めて診療した。3.公務危機介入者への支援 消防組織は地方公共団体の組合により形成されている。福島県沿岸部の相馬・双葉消防は,公務で救急救助に当たる危機介入者であるが,同時に地震・被ばく医療にかかわる主な機関原発1F免震棟・5/6ER(産業医・労災医・ほか)J-ヴィレッジ救急医学会,東電磐城共立福島労災福島医大(水戸医療センター)放医研広島大学患者搬送車現場救護所緊急搬送拠点初期被ばく医療機関二次被ばく医療機関汚染あり重症外傷三次被ばく医療機関高度汚染急性放射性障害汚染なし自衛隊ヘリによる患者搬送①自衛隊ヘリによる患者搬送②

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