FUKUSHIMAいのちの最前線
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324危機対応の要諦:備えとリーダーシップが「地獄への道は、善意で舗装されている」と言っていますが、非常時の議論において真実です。発言者は皆、心から良かれと考え、さまざまな意見を提示しますが、人、時間、資金のリソースが限られた非常時に、すべてを聞き入れるわけにはいかない。あえて言うなら、コンセンサスなど不要、過激に聞こえるかもしれませんが、民主主義は不適当。少なくとも被災後2週間は、そうせざるをえなかった。波風が立つのを恐れていてはとうていできない決断の連続でした。福原 菊地先生は、なぜそんな対応ができたのですか。菊地 自分でも、よくわかりません。無我夢中でしたから。思い当たるのは、ずっと大学にいたのではなく、さまざま組織でさまざまな仕事をしたからでしょうか。組織で仕事をしたと言っても守ってくれる組織ではなかったので「ひとりで生きて、決断する」が当たり前だったのも大きかったように感じます。福原 非常時には、人、時間、物資、お金など多くのファクターがあり、強い意思で決定する者がいなければ崩壊、いたとしても決定のタイミングを誤ると、まったく違うアウトカムになるのだと痛感しました。 私は菊地先生と10年来のおつき合いをさせていただいています。にもかかわらず、震災後、我々に何ができるかと考えている間に時間がたってしまい心苦しいばかりです。 遅まきながら今年の1月から福島の地で、県民の医療の最後の砦である県立医科大学に踏みとどまられた若手医師に向け臨床研究のデザインの基礎を学んでいただく「臨床研究てらこ屋」を手弁当で行わせていただいております。少しでも元気になっていただければいいのですが……。菊地 福島県に踏みとどまってくださった彼らが臨床研究を学ぶのは、飛躍のチャンスになるでしょう。よろしくお願いいたします。福原 先生には福島の復興の大仕事が待っています。お体には気をつけてください。

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