FUKUSHIMAいのちの最前線
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288東日本大震災:被災地の現場から──この拠点は、大学の附属施設という形で作られるのでしょうか。 そうです。放射線医学県民健康管理センターをはじめ、各種の拠点を作る計画です。──規模、予算額はどのくらいでしょうか。 健康管理の費用については、国の2011年度第2次補正予算では、約1000億円(30年間の基金)付きました。ただ、これだけでは恐らく足りません。また、第3次補正予算で、各種センターの整備費等が計上される予定です。 さらに、各種拠点ができた後も、円滑に運営するための資金確保が重要。一連のプロジェクトは、国策として実施するのですから、国にはきちんと予算の確保をお願いしたい。──「福島医大復興ビジョン」作成の段階で、国とは打ち合わせをされているのでしょうか。管轄はどこになりますか。 今は内閣府の中で取りまとめを行っており、毎日のように打ち合わせを行っています。また、民主党幹部にも説明しています。──関係者のコンセンサスは得られている。 はい。我々の計画は、復興基本方針にも盛り込まれています(注:2011年7月29日、政府の復興対策本部が決定した「復興基本方針」に、「原発力災害からの復興」として、福島県における安全対策・健康管理対策、医療産業の拠点整備などが盛り込まれる。同本部のホームページを参照)。──今後、重要になるのは具体化に向けた作業です。 そうです。軌道に乗ればいいのですが、それまで、特に最初の立ち上げの時期が大変です。働くスタッフの数から言っても、もう一つ新たな大学ができるくらいの規模になるでしょう。広島の放射線影響研究所には、ピーク時は1000人を超すスタッフがいたそうです。今は約600人。だからまず組織を管理する人材、「ヒトと予算」をきちんとマネジメントできる人材をヘッドハンティングしています。 さらにスタッフも相当数必要。「All Japan」でやっていかなければできません。さらに、国際的に広げ、連携していくことが重要。海外の研究者は、福島に非常に関心を持っています。こうした方々が自由にアクセスでき、利用できる拠点にしていきます。これらが結果的に本学、あるいは日本が世界から求められる役割なのではないでしょうか。 その第一弾として、9月11、12日に放射線の健康影響に関する国際会議を福島で開催します。海外から、この分野の研究者を約30人お呼びし、国内の研究者も参加します。これは啓発活動ではなく、純粋に医学的な、サイエンスの議論を行う場なので、当然参加者は限定します。山下先生に指揮を執ってもらい、スポンサーは笹川財団です。1年後には、今度は国がこうした会議を開催する意向だと聞いています。──各種拠点はいつ頃、完成予定でしょうか。 先ほども言いましたが、健康管理調査自体はスタートしており、その拠点も作っていきます。最初の施設ができるまでの2、3年、すべての拠点が完成するのは5年くらいかもしれません。でも、できるところからやっていく必要があります。二つの放射線医学講座を新設、魅力ある大学へ──医学教育の中でも、放射線関連の分野は強化していく。 はい、放射線の臨床と基礎、つまり放射線健康管理学、放射線生命科学、これら二つの講座を作ることが既に決まっています。間もなく教授選考も始まり、決まり次第、講座をスタートさせます。なるべく若い人を選びたいと考えています。二人の教授は、両副学長、山下先生と神谷先生と一緒に取り組んでいくことになり、我々はそれをバックアップします。──さらに大学の立場で言えば、医学生、初期・後期研修医が集まるかという懸念もあるかと思います。「福島医大復興ビジョン」の実現で、いい人材が集まることを期待されている。 魅力ある大学を作り、志のある人間が集まってくることを期待しています。「去る者は追わず」です。──もうすぐ来年の初期研修医のマッチングも始まります。 いろいろ説明はしますが、なかなか厳しいと思います。しかし、それは仕方がないでしょう。最終的にはご自身の人生の選択ですから、その選択がどんな結果をもたらすかは、自分の責任で引き受けることです。そこで志が問われるのです。 今年の入学式は1カ月遅れで実施しました。文科省からは事務次官が来て直接祝辞を述べてくださった。何人か入学辞退者もいたのですが、入学式はい去る者は追わず、志ある人材を期待

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