FUKUSHIMAいのちの最前線
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276で面倒かもしれませんが、対面調査をするにはあまりにばく大な費用と時間が掛かります。今後、皆さんが病院にかかった際、県民調査書を提出していれば、それによって正しい処方が受けられるでしょう。提出がなければ前のデータがないということで「新患」として扱われる懸念があります。──「覚えていません」という回答でも記録ですものね。菊地 ただ、誤解しないでいただきたいのは、調査書の提出が優先的に診てもらえる条件ではないということです。いわゆる“被爆者健康手帳”のように生涯保障がなされるとか、医療費が安くなる、無料になるということではありません。「子ども達の未来のために提出しろ」というような上から目線でもなく、「疫学的な研究材料として欲しい」ということでもありません。県民への呼びかけ方は本当に難しいのですが、県民の皆さんに自分自身のためなのだということをわかってほしいのです。明日のために現在の基本的な調査が大事なのです。このベースラインがなければすべての比較ができず、対策のしようがないとも言えるのです。福島県立医大がすべき事は3つ──これからの事を、お聞きします。福島医大がこれからやろうとしている、力を入れて行こうとしている事は何ですか?菊地 それは3つあります。ひとつは福島県民200万人の健康状態を、30年〜50年追いかける仕組みを作ることです。次に、18歳未満の子どもたちの甲状腺について一生涯診ていくことです。3つ目は、メンタルヘルスケア、ストレス、怒りが及ぼす影響について追究していくことです。菊地 臣一公立大学法人福島県立医科大学理事長兼学長きくち・しんいち●1971年福島県立医科大学卒業・同大学附属病院整形外科入局、1977年カナダ・トロント大学ウェールズリィ病院留学、1980年日赤医療センター整形外科副部長、1986年福島県立田島病院院長、1990年同大学整形外科教授、2002年同大学医学部附属病院副院長、2004年同大学医学部長、2006年公立大学法人同大学副理事長兼附属病院長、2007年日本脊椎脊髄病学会理事長、2008年現職

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