FUKUSHIMAいのちの最前線
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第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線243ていただきます。 未解決問題を図22に出させていただきました。これは一般住民に対する放射線事故対策の未解決問題です。1つは再発災時の緊急対応について,再飛散時の対応,それからヨウ素使用の時期と場所,飛散情報や屋内退避,避難指示の伝達方法,この提示がありません。 それから今回の事故から受ける影響を,特に一般住民に限っていえば,慢性の低線量で広範囲の被ばくだという大前提のもとに申し上げると,慢性の外部被ばく低減の対策としてサンプリング点の増加,線量マップの作成と住民への説明で,特に説明の力はどういうプランかがまったく提示されていません。それから除染方法に関しては,日本の英知を集結して何とか開発していただきたいと思います。それと慢性の内部被ばくの低減に関しては,たとえば食肉を例に挙げれば,肉牛の出荷に関しては農水省ですが,そのサンプリングについては厚労省ということで,いわゆる縦割りでなかなか進まなかった可能性があります。この縦割りを超えて協調していただかないと,また同じことが起きてきます。 それからキノコの他にも,野菜の流通コントロールに関して,これは政府ではなくて自治体のような小さな単位でやる必要があるかもしれません。 それと被ばくの不安低減に関してですが,リスクコミュニケーションについて専門家の皆さんの統一のない議論が,社会不安の一因となっているということを認識していただきたいと思います。 被ばく線量評価とその説明に関しては,外部被ばくは放医研が調査してくださっておりますし,今後の外部被ばくについては市町村で,福島では学童にガラスバッジを配っています。ところがそのガラスバッジの評価の統一に関して,誰がいつどこでどのようにどんな基準でやればいいかということが決まっていません。これは解決しなければならないことです。 また今後の内部被ばくに関しては,ホールボディカウンタの利用法と結果説明法の統一が求められます。 そしてわれわれができることは図中の下線を引いたところだと思うのですが,当院のリスクコミュニケーションに関して申し上げれば,小規模で市町村職員や病院の職員対象のものを今やっております。そしてこだわっていることはワンボイスで,声を揃えるということにこだわっています。これはこれまでのリスクコミュニケーションが,専門家による見解の違いが住民の精神的不安をかえって増大させているという事実を踏まえて,ワンボイスにこだわっているわけです。現状では,フクシマに住むメリット,デメリットを天秤にかけて判断することが難しくなっているわけです。 図23は,同僚の宮崎先生からいただいたのですが,今後の内部被ばく評価に関しては,ホールボディカウンタを,今後は慢性摂取の評価に用いるのがいいんじゃないかと思っていますが,公とのすり合わせができていません。 図24は僕の友人の娘さんですが,夏休みの宿題が放射線です。放射線に恐怖があるからこのようなテーマを選んだのかもしれませんが,将来への希望を感じます。将来的には生命への興味からもこうい図22 周辺地域住民の放射線事故対策未解決事項

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